【怖い話|実話】短編「死神の袋」心霊怪談(山梨県)

【怖い話|実話】短編「死神の袋」心霊怪談(山梨県)
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投稿者:空野 さん(29歳/女性/無職)
体験場所:山梨県内の某介護施設

今から5年くらい前、私が山梨県にある某介護施設で働いていた時のことです。

介護業界では施設を転々としている職員も多く、私の職場にやって来た彼もその一人でした。

彼には幼いころ霊感があったらしく、何度も心霊体験をしたそうなのですが、私が残業で一緒の時に限ってその頃の体験を話して語り、私を怖がらせていました。

その中で、今も幾つか覚えている話があるのですが、特に印象に残ったのは彼が別の施設で働いていた時の話でした。
彼も大人になってからは霊感が消えたらしく、なのでこれは彼自身が『視た』話ではないのですが…

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その施設で彼が夜勤に当たっていた夜のこと。
見回りでSさんという入所者のおばあちゃんの部屋を訪ねたそうなのですが、いつもは早寝のSさんが珍しく起きていたそうなのです。

「眠れないの?」と尋ねると、Sさんは不安そうな顔をして「とても怖い夢を見たの」と言ったそうです。
「どんな夢?」と聞くと、Sさんは彼を振り返りこう言いました。

「黒い人が来たの」

詳しく聞くと、突然部屋の中に全身が黒い人が現われたかと思うと、それがSさんの腕を引いてどこかに連れて行こうとするそうなのです。
でも、その黒い人の動きが突然ピタッと止まったかと思うと、「部屋を間違えた」と言って、Sさんの腕を離して部屋を出て行ったそうなのです。

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「とても怖かった…」

そう言って小刻みに唇を震わせるSさんは、とても怯えている様子だったので、少しの間彼は付き添ってあげたのだそうです。

それから数日が経ったある日、入所していた別の女性Eさんという方が亡くなったそうなのですが…

Eさんは亡くなる数日前に、現在の部屋に移って来たばかりだったそうなのです。
そしてEさんが移ってくる前にその部屋を使っていたのが、実はSさんだったそうです。

そして彼は言いました。

Sさんが見た『黒い人』というのは、恐らく死神だったのだろう。
そして死神のターゲットとなったのが『特定の部屋』の住人。
つまり、前にSさんが使っていた部屋で、後にEさんが移ってきた部屋。

もしも部屋の変更が行われていなければ、亡くなっていたのはSさんだったのかもしれない。
死神もそのつもりだったから、間違えて最初に前住人のSさんのところに現われてしまったのかもしれないね、と彼は話していました。

私は「死神も間違えることあるんだー」などと言って笑っていましたが…

どうしてこの話が印象的だったのかと言うと、実は私も、同じようなことを別のおばあちゃんから直接聞いたことがあったからです。

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介護施設というのは、とうぜん高齢の入所者の方が多く、中には残念ながら入所中に亡くなられる方も大勢おられます。

私が出会ったMさんという入所者さんも、やはりご高齢のおばあちゃんでした
強気で元気な憎まれ口を叩く人で、それがどこか可愛らしく憎めない方でした。

Mさんが入所されて数カ月が経った頃でした。
一緒にトイレに入って介助をしている時、Mさんがこんなことを話されたのです。

夜寝ていると、袋を持った黒い人が現われて「ここに入れ」と言ってきた。
袋に入ったら死んでしまうと思い、「嫌だ!」と言ったら、黒い人はいなくなった。

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この話は他の職員もMさんから聞いたことがあり、最近食が細く活気がなくなってきたMさんを心配し「まさかね・・・」などと職員間で噂になり、それからは特に気を付けてMさんの様子を見るようにしていたのです。

それから数日が経ったある日、ホールでボーっと座っていたMさんに声を掛けると、Mさんは困ったように眉をハの字に曲げこう言いました。

「黒い人が二人に増えたの…」

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以前話していた黒い人がまた現われ、今度は2人がかりで「この袋に入れ!」と言うのだそうです。
それでもMさんは「嫌だ!」と突っぱねたそうなのですが…

私も他の職員も、その時ばかりは「ああぁぁぁ」と息をこぼしてしまうような、薄気味悪いものを感じ取ったのです。

「それでも私は袋に入らなかった!」

と、気丈に話されているMさんを見ていると、それは夢の話などではなく、本当に起きたことのように聞こえました。

それから間もなくでした。
Mさんが亡くなってしまったのは。

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黒い人の数が増えたと話された後、本当に唐突に、あっけなく亡くなってしまったのです。

もしかしたら、あれから『黒い人』の数は更に増え続けていたのでしょうか?
だとしたら最後にMさんは、一体何人の黒い人に囲まれたのか・・・

真相は分かりませんが、あれだけ強気だったMさんを、最後には袋の中へ入れてしまった『黒い人』とは、やっぱり死神なのでしょうか・・・

もしかしたら、黒い人を見てしまった時が、人生の最後の時になるのかもしれませんね。

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