
体験場所:兵庫県加古川市のマンション
これは私が小学5年生だった頃に体験したお話です。
当時、家の近所に同級生の友人Aが住んでいました。
学校が終わると、一緒に下校したり、遊んだりする仲でした。
Aが住んでいたのは10階建てマンションの3階でした。
昼間は明るく、とても雰囲気の良いマンションなのですが、夜になるとその姿が変貌することを、私は初めて知ることになったのです。
その日は、母がPTAで必要な資料をAのお母さんに渡し忘れてしまったということで、夜に慌てて届けに行くことになり、私もAに会いたくて一緒についていきました。
マンションに到着し、エレベータに乗り込むと、Aが住む3階のボタンを押しました。
扉が閉まり、エレベーターが上昇を始めます。
2階を過ぎ、次が3階だと思っていると、エレベーターはなぜか3階を通り過ぎ、そのまま上昇を続けました。
エレベーターには私と母の2人だけしか乗っていませんし、ボタンも3階以外は押していません。それなのにエレベーターは4階、5階と上昇を続けます。
一体どこまで昇り続けるのか、そんな不安から、私は母の背中に抱き着き、母も不安げな表情で回数表示を見ていたのを覚えています。
すると、「チンッ」と音がして、エレベーターが止まったのは、7階でした。
エレベーターの扉が開きますが、特に誰か乗り込んでくる気配もありません。
中から身を乗り出して辺りを見渡しましたが、誰の姿もありません。視線の先には、静まり返った長い共用廊下が伸びているだけ。
あまりに怖くて、「閉」ボタンを連打し、扉が閉まった後もずっと「3階」ボタンを連打。それでようやくエレベーターは3階で止まってくれたのです。
そのことを母がAのお母さんに話すと、Aのお母さんは笑いながらこう言います。
「このマンション、そういうのよくあるのよ。エレベーターが壊れてるんじゃないかしら」
その間、Aは黙り込んだまま下を向いていて、私と目を合わせようともしませんでした。
そのAの態度が気になって、私は後日、あのエレベーターについて少し強引にAを問い詰めました。
すると、Aはため息を一つ吐き、こんな話を始めたのです。
それは2年前、私たちがまだ小学3年生だった時のこと。
その日、塾を終えたAはマンションに帰ってきて、駐輪場へ向かっていたそうです。
すると、マンションの上から突然女の人が落ちてきたそうなのです。
その人は恐らく即他界。
近所の人が慌てて救急要請をして、その人は運ばれていったそうです。
その姿を、今も鮮明に覚えているとAは話しました。
ちなみに、その女の人には当時小学6年生のお子さんがいたそうです。
離婚や借金問題など、色々と悩みを抱えていたとのことです。
その女の人が住んでいたのが、7階の一室だったそうです。
私と母の乗ったエレベーターが止まった7階です。
その後、私はもう一度だけ、夜に母とAのマンションを訪れることがあったのですが、3階のボタンを押したエレベーターは、やはり7階まで上昇を続けました。
「毎回こんなことが起こるなら、もう夜にAの家に行くのはよそうか?」
母が不安と諦めの混ざった複雑な表情で、そう言っていたのが今でも印象的です。
私は思うのです。
その飛び降りた女性は寂しかったのではないでしょうか。
私たちには見えませんでしたが、おそらく7階に到着したエレベーターには、1人の女性が乗ってきていたのだと思います。7階から3階までの短い間ですが、その間だけでも誰かと一緒にいたい。
そんな思いで女性は7階から人を呼ぶのでしょう。
Aが引っ越し、疎遠になった今では、行くこともなくなったマンションですが、当時のことは今でも鮮明に覚えています。

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