体験場所:千葉県M市
それは私が高校生の頃の冬の時期だったと思います。
友人4人でボーリングに行った帰りの出来事です。
夜の11時頃でしょうか。
いつもつるんで遊んでいた私たち4人は、その日もボーリング帰りにバイク2台にタンデムして、前後に並んで走行していました。
私は前方を走るバイクの後ろに乗っていました。
目的地である友人宅まであと2キロくらいに差し掛かった辺りで、大通りから小道に曲がり、そのまま街灯の少ない田んぼ道に入って行きました。
ひと気のない夜中の田んぼ道はとても静かで、バイクに乗りながら会話していた私たちの声が、どこまでも響くように感じていました。
そんな時でした。
その先にポツンと光る街灯の下に、道のど真ん中に立っている男性を発見したんです。
私は直ぐに運転している友人に「前見て!人がいる!」と知らせました。
友人も気付いていたのでしょう。
少し減速してゆっくりと男性の前を通り過ぎようとしました。
すると突然、その男性は持っていた1mくらいの棒のようなものを振りかぶったかと思うと、そのまま私たちに向けて振り下ろしてきたのです。
「え!?ちょちょちょ!!!」
とっさに友人はハンドルを切り男性を避けるように交わしました。
その時、私はハッキリと男性の姿を見たんです。
旧日本軍の様な帽子を被り、緑色の軍服を着た男。
その振りかざした棒らしき物は狩猟で使用するような長い銃で、その取手部分の方を先にして振りかざしていたのです。
先頭を走行していた私たちは、その一撃を交わした後、すぐに後方の友人バイクに目をやりました。
そこに軍服姿の男は居ませんでした。
「え!?」っと驚いたまま、私たちは後方を走る友人達のバイクを見続けました。
すると、その友人たちのバイクも何かを避けるようにして慌ててハンドルを切ったのが分かりました。
「あそこに…何かいるのか…?」
通り過ぎた後には男は見えませんでしたが、後方を走る友人バイクも私たちと同じ場所で何かを交わしたのは確かです。
とにかく私たちはアクセルをふかし、急いでその場を離れました。
友人の家に到着した後も先程の体験が信じられず、私たちはすっかり震え上がっていました。
後方を走っていた友人たちも、やはり男性に襲いかかられたと言っていました。
しかもそれが、軍服を着た男だったことを二人ともしっかりと見たと言います。
一体あれは何だったのか?
考えて分かるような類のものではないことは私たち全員が理解していました。
すると、一人の友人がこんな事を言い出したのです。
「さっき走っていた田んぼってさ、脇の方に戦時中に使われていた防空壕が幾つかあるの、知ってる?そのほとんどが今では農器具とかの保管場所になってるんだけどな…一つだけ、なんにも使われていない防空壕があって、なんでか分からないんだけど、そこには常にお供え物とかが置かれててさ…それが俺たちがさっき襲われた場所、丁度あの辺りなんだ…」
私たちは息が止まったように、暫く黙り込んでしまいました。
私たちが見たものはその防空壕にまつわる、旧日本軍の亡霊だったのでしょうか?
だとしても、なぜ私たちが…
その日はもう帰宅など誰も出来ず、友人宅にそのまま泊っていきました。
その翌朝のことでした。
別の友人から私の携帯に連絡がありました。
「昨日の夜中に事故死あったの知ってる?」
興奮しながらそう話す友人の言葉に、何だか嫌な予感がしたのですが、詳しい話を聞くと案の定、事故があったのは私たちが昨日、軍服姿の男に襲われた場所でした。
見通しのいい田んぼ道のはずなのに、昨夜、道沿いの街灯が付いた電柱に、一台の車が突っ込んだのだそうです。
その街灯というのが、昨日私たちが軍服姿の男を見たその場所だったのです。
車が突っ込んだ後の地面には、何かを避けようとした様なブレーキ痕があったそうです。
警察では、深夜のことだから居眠り運転ということで処理されたようなのですが…
私たちは、絶対にそうではないと今でも確信しています。
もし私たちもあの時、男が振りかざした一撃を交わせなかったら、そしてもし死んでしまっていたら、高校生の行き過ぎた悪ふざけとでもして処理されたのでしょうか…
思い出す度にゾッとする体験です。
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