【怖い話|実話】短編「雨上がりの小川」不思議怪談(神奈川県)

【怖い話|実話】短編「雨上がりの小川」不思議怪談(神奈川県)
投稿者:ゆうじーん さん(30代/女性/会社員)
体験場所:神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎南

今からおよそ4年前、私は神奈川県横浜市のT区に住んでいました。
ちょうどコロナ禍の真っただ中で、在宅勤務が奨励されていた時期のことです。

当時、まだ未満児だった子どもを自宅保育しながら仕事をこなすという、なかなか慌ただしい日々を送っていました。仕事と育児の両立は想像以上に大変で、特に子どもの散歩や外遊びの時間を確保するのが難題でした。日中は業務や会議に追われ、気付けばもう外は夕方。それでも雨さえ降っていなければ出来るだけ子どもと一緒に外に出るようにしていました。

その不思議な体験をしたのは、梅雨の長雨が続くある夕方でした。
数日ぶりにようやく雨が上がったので、私は子どもの手を引いて、家から10分ほど歩いたところにある小川沿いの散歩道へと向かいました。

普段は犬を散歩させる人や、ウォーキングをする高齢者の方々の姿など見られる場所なのですが、その日は珍しく誰一人として擦れ違うことがありませんでした。雨上がりだし、そんなものか、と思っていました。

小川沿いには木々が生い茂り、雨上がりということも手伝って、空気はぬるく湿っていました。曇天の下、薄暗い散歩道にはどこか陰鬱な印象もありましたが、「まあ梅雨だし、こんなものだろう」と、あまり気に留めることもありませんでした。

そのまま川沿いを歩いた先に、下をトンネルのようにくぐり抜けるアーチ状の橋が架かっています。いつものように私は子どもと手をつないだまま、その橋の下をくぐりました。

その瞬間でした。
急に腰のあたりに重い鈍痛が走ったのです。

「え?なんだろう…」
とっさに足を止め、腰に手を当て、揉んでみたりしました。

何かを無理に持ち上げたり、急に身体をひねったわけでもありません。それなのに急に、ずん、と腰が沈み込むような痛みに襲われ、まるで体の芯が重くなったみたいに思わず前かがみになってしまいました。それは若い時にかかった腎盂腎炎を思い出す、ずーんと重く鈍い痛みでした。

なんだかおかしい…と思うと同時に、私は直感的に感じました。

「早くこの場所から離れなければいけない」

子どもは何も異変を感じていない様子で、手をつないだままキョトンとした表情を浮かべていました。私は力を振り絞って子どもを抱き上げ、「ごめん、ママ、ちょっと腰が痛いから、もう帰ろうね」となだめて、小走りでその場所を離れました。

すると驚いたことに、小川沿いの道から大通りへと出た瞬間、あれほど痛かった腰がスッと楽になったのです。
風通しのいい広い道で、人や車の往来がある場所に戻っただけ。それだけで、まるで何かから解放されたように身体が軽くなる感覚がありました。

「やっぱり、あの場所がいけなかったのかな…」

そう思いながら、無事に自宅に戻った私は、その日の残りタスクをいつも通りこなしました。夕飯を作り、子どもとお風呂に入り、普段通りの時間を過ごしていたのですが、夜中になって突然、再び体調が急変しました。
今度は激しい腹痛と嘔吐、それに発熱もありました。急な体調変化だったので、もしかしたら食中毒を疑ったのですが、同じものを食べた夫や子どもには何の症状も出ませんでした。

この体調不良は丸一日続きました。

橋の下で急に襲われた腰の鈍痛といい、その後の激しい体調不良といい、その両方が偶然同日に発生したとは今も到底思えません。それに「早くここを離れなければ」なんて直感が働いたという経験も初めてのことで、その全てが同じ何かに起因しているとしか思えません。

その後しばらくして私たち家族は横浜市から離れましたが、あの体験から引っ越すまでの間、一度もその散歩道に近付くことはありませんでしたし、未だに雨上がりの川沿いには出来る限り近付かないようにしています。

その後、例の小川沿いの道について色々と調べてみましたが、横浜の地元紙や、ネット上の都市伝説や過去の事件などを確認してみても、それらしい噂や曰くなどの情報は一切見つかりませんでした。

今ではあの出来事の原因は、長雨が連れてきた『何か』だったのかな?と思っています。

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