【怖い話|実話】短編「赤いチラシ」不思議怪談(大阪府)

【怖い話|実話】短編「赤いチラシ」不思議怪談(大阪府)
投稿者:MMM さん(20歳/男性/フリーター)
体験場所:大阪府大阪市T町

これは私の母から聞いた話です。

母は地元の大学を卒業後、そこそこの大企業に就職することができたそうです。

勤務地は地元からかなり離れたところでしたが、母は地元があまり好きではなかったそうなので、むしろ一人暮らしする口実が出来て喜んだのだとか。

そんなこんなで引っ越しを済ませ、ようやく仕事にも慣れ始めてきた頃のことでした。

その日は休日で、母は部屋でだらだらとテレビを見て過ごしていたそうです。

その時、玄関のほうから『ガシャン!』という音がしました。

少しビクッとしましたが、すぐに郵便物が入れられた音だと気付きました。

「乱暴な郵便屋さんだなあ…」と思いながらも郵便物を取りに行くと、それは一枚のチラシでした。

全体的にデザインが赤黒かったそのチラシは、どこか鉄臭くて、どうしても血を連想させます。

少し気味が悪かったのですが、母はその内容にすぐに目を奪われました。

「このチラシはあなたにだけお配りしています!このチラシを見た方は全品無料にしてさしあげます!」

名前も聞いたことが無いスーパーマーケットのチラシですが、どうやら近所にあるようでした。

さすがに怪しいとは思いましたが、スーパーがわざわざチラシを配ってまで嘘をつく意図が分かりません。

考えた末に母は、とりあえず一度行ってみてから判断しようと思ったそうです。

すぐにチラシをカバンに突っこんで部屋を出ました。

そのスーパーは家から歩いて十分のところにありました。

見た目は少し寂れてはいますが、普通のスーパーに見えたそうです。

しかし、中に人影は見えません。

怪しいチラシのせいもあって、なかなか中に入る勇気が出ませんでしたが、横目で店の前を何度か通り過ぎた後、迷った末に遂に店のドアをくぐったのだそうです。

中に入ると、遠くのほうで「いらっしゃいませー」と聞こえました。

しかし、どこのスーパーでも流れているようなBGMは全くなかったそうです。

それどころか、店内は物音一つせず、あまりにも静かすぎました。

不気味に思いつつも、商品を見て歩きます。

棚には、どこにでもありそうな普通の商品が陳列されています。

これが全て無料になるなら多少不気味でもいいと思えました。

母はカゴいっぱいに商品を入れ、レジに向かいました。

そういえば、商品を選んでいる間に、少しずつ店内が活気付いて賑やかになっている気がしました。

遠くのほうで人の話し声が聞こえるし、微かにBGMのような高音域の音が流れている気がします。

レジにはもちろん店員がいました。

ホッとして、母はレジに向かって歩きました。

その時、レジの店員がクルッと振り返り母の方を向きました。

母と店員は目が合いました。

店員の顔はやけに青白く、生気が感じられません。

その薄気味悪さに母が少し怯んでいると、それまで生気のなかった店員の顔にみるみる驚きの表情が浮かび上がり、

「帰れ――――――――――!!!」

突然店員は母に向かってそう叫びました。

あまりに唐突で、驚いた母は思わず飛び上がってしまったそうです。

ですが、母はチラシを見てやって来ただけです。

「帰れ」なんて言われる筋合いはありません。

そう思った母は、無礼な店員にチラシを見せて説明してやろうと思い、カバンの中を探りました。

すると、手を突っ込んだカバンの中が、少し濡れていました。

何事かとカバンから引き抜いた手を見ると、べったりと赤い血のようなものが付いていました。

「えっ、なにこれ……」

赤に染まった自分の手をポカーンと眺めている間も、

「帰れ――――――――――!!!」

レジの店員はのべつ幕なし叫び続けています。

色々な事が訳が分からずに、母は混乱したままそこに立ち尽くしていると、スーッと辺りが暗くなるのに気が付きました。

ハッと我に返り周囲を見ると、母を取り囲むように黒い人影のようなものが蠢いていました。

「帰ってくれえええええええええ!!!!」

その声が聞こえた途端、辺りの温度が急激に冷え込み、母は命の危機を感じたのだそうです。

このままでは死ぬ、その明確な危険視号が頭の中ではっきりと見えた瞬間、母は一気に駆け出しました。

後に母は、「よくあそこで腰が抜けなかったもんだ」と、自画自賛して振り返っていました。

無我夢中で走り続けた母は、気付けば家に帰り着いていました。

手にべったりとついた血はもう乾いていて、ガサガサになっていました。

カバンの中はやっぱり血だらけで、中に入れていたはずの赤黒いチラシはどこにもありませんでした。

後にもう一度そのスーパーに行ってみたのですが、そこにあったのは、どこにでもあるような活気ある普通のスーパーでした。

外見こそ変わりませんが、あんなにも怪しく静かな店は、どこにもなかったそうです。

因みに、未だにその店はあるそうです。

ですが、母はもう二度と近付きたくないと話していました。

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