【怖い話】実話怪談|長編「振り向かない寮監」東京都の不思議な恐怖体験談

投稿者:カントギーガーグ さん(40代/女性/主婦/山梨県在住)
体験場所:東京都 市部

私が高校生の頃、一時的に通っていた東京都某市のミッション系の学校で、私は寄宿舎に入っていた時期があります。

そこは、私が通う女子校の高校生と、系列の短大生が入る寄宿舎で、その多くは短大生でした。

ミッション系学園の寄宿舎
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高校生は、私のように一時的に帰国して高校に通う生徒や、北海道などの地方から将来的に東京の大学を目指す生徒などごく数人で、入れ替わりも激しいものでした。

ミッション系の学園そのものが厳しい規律に基づいた運営であり、生活のすべてを指導するという考え方の寄宿舎は、それより更に厳しいルールがあり、決して居心地のよいものではありません。

しかし、規則正しく美しく生活する中にも多少の抜け道はあり、特に短大生に比べて娯楽の少ない私たち高校生は、下らない抜け道を見つけては、それを心から楽しんでいました。
なにしろ、箸が転がっても楽しいお年頃でしたから。

そんな抜け道の一つが、夜、よその部屋へ行って、数人でああでもないこうでもないとゲームブックをやり込むことでした。

そのゲームブックは、ある上級生が置いていったものらしいのですが、なぜかそんなことが私達にとってはこの上もなく楽しかったのです。

私は同室の友人Aと二人でこっそり部屋を出て、別の友人の部屋を訪ねるのですが、夜の廊下は暗く、消火器の赤いランプだけが頼りでした。

たまに月夜の晩には、階段の踊場の窓から明るい光が差し込むこともあり、そんな夜は月明かりを心強く感じたものです。

ある夜のことです。

私とAはいつも通り友人の部屋を訪ね、みんなでゲームブックで遊んでいました。

そこそこの時間になった頃、これもご禁制のお菓子を平らげて解散となり、お菓子の袋は私が自室でこっそり処理という手はずとなりました。

自室への帰り道も注意が必要です。
寮監の先生の見回り後に部屋を出たので、他の事情で廊下を歩く寮監に運悪く鉢合わせなければ大丈夫。

ただし、今夜はお菓子の袋の残骸を隠し持っているのが、いつもより多少リスキーといったところです。

もし見つかった場合、反省文やら保護者への連絡やら、労作活動などのペナルティはあれど、正直この移動のスリルすらも本当はちょっと楽しかったのです。

私はAの後に続いてその部屋を出ました。

私達は小走りで自室の前まで移動すると、突然(あっ)と、気がついたようにAは自室の手前にある下り階段のほうへ首を伸ばしました。
そして、部屋のドアを開けようとする私の手を止めて、しっと唇に指を立てました。

どうやら寮監が下り階段の踊場にいたようで、階下へ降りるまで音を立てるなということらしいのです。

Aは息を殺して、再び階段の下を覗き込みます。

すると、(あれ?)というようにこちらを振り向くと、今度は音を立てないようAはゆっくりと自室のドアを開けて中に入りました。

部屋に入り緊張から解放された私は、そのままの勢いでベッドに入り込もうとしましたが、見ると、Aはドアの内側に立ったままです。

と思ったのも束の間、Aは再びドアを開け出て行ってしまいました。

あっけにとられてポカーンとしている私のところへ、Aはすぐに戻ってきて、今度は私も来るように手招きをします。

何事かと付いて行くと、彼女は壁に隠れながら階段の下の踊場を見るよう、指を差しました。

踊場は月明かりで明るく、その真ん中には寮監の先生が窓の方を向いて立っていました。

窓の外を眺める寮監
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私は慌てて(戻らなくちゃ)と一瞬思いましたが、すぐにその必要がなさそうだと気が付きました。

寮監はこちらに背を向けたまま、どこかぼーっとして、様子がおかしいのです。

寝ぼけているのか?
少し身体が揺れているようにも見えます。

ゆらゆらとする寮監の後ろ姿に、何だか気味の悪さを覚え始めた頃、Aは大胆にも階段の上から寮監の真後ろに立ちました。

「え、え…ちょっ…」

さすがに寮監も気付くだろうと思って私はビクッとしたのですが、それでも寮監は後ろ姿のまま、月を見て揺れ続けているんです。

妙な違和感は感じたものの、私も大胆になり、Aの隣へ行くと、一緒に手をつないで今度は階段を降りてみることに。

そして遂に寮監の真後ろに立ちましたが、寮監は絶対に振り向きません。

ゆらり、ゆらりと揺れながら、ただ月を見ていました。

すぐ後ろに私たちがいるのに・・・

絶対に振り向かない寮監
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その後ろ姿は、なんとなくひんやりしているというか、魂の抜けたような、良くない言い方かもしれませんが、小学生の頃初めて出席した葬儀で見た、棺の中の亡骸のような冷たさがありました。

その冷たさに気が付いたとたん私達は怖くなって、足音をたてるのも構わずに、Aの手を強く握って二人で走って部屋へ逃げ帰りました。

翌朝、朝食の準備で食堂へ降りると、短大生の人たちと普通に挨拶を交わす寮監の姿がありました。

私たちはいつもと変わらぬ寮監の態度が逆に怖くて怖くて、寮監の顔を見ないように朝食をすませ、そのまま登校しました。

それからしばらくは、出来る限り寮監と関わらないように、必要なことはシスターに話すようにしていました。

そんなふうに、私たちがあまりに露骨に寮監を避けるものだから、ある短大生が心配して、私たちにその理由を聞いてくれました。

ですが、一体あれが何だったのか私達も分からず、それを人に話すことも怖くてためらったのですが、何かの間違いであって欲しいという気持ちもあり、結局、全部正直に話したんです。

するとその短大生は、不思議そうな顔をしてこう言うんです。

「それは絶対にあなたたち二人の見間違いだよ。寮監があの夜、そんなところにいるわけがないんだから。」
と…

「そんなわけない!私たち本当に見たんです!」

信じてもらえないことに失望しながらも、私達は更にその短大生に訴えたんです。
すると、

「でもね、その日の前日に寮監の家族が倒れられて、その夜、寮監は実家へ戻っていたんだよ?」

そう答えたその短大生は続けて、あの夜、寄宿舎にいたのは別の先生だったと言うんです。

翌朝、寮監が寄宿舎に居るのを見て、(随分早く戻ってきたんだな。)と、短大生の人たちは逆に不思議がっていたのだとか。

この短大生の話を聞いた後、Aはある答えに行きつきました。

「あの夜、私たちが見たものは、『寮監の生き霊』だったのかも。」

目を見開いてそう話すAは微かに震えているようでした。

確かに、あの冷たく、ゆらゆらと揺れたまま、絶対に振り向くことがない後ろ姿は、生身の人間のそれではなかったと私も思います。

寮監の生霊?
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寮監も学生の頃から、その寄宿舎の出身だったと聞いています。

家族が倒れても、その翌々日の早朝には戻って来る程、あの寄宿舎に強い思入れがあったのでしょうか?
その思入れが生き霊となったのでしょうか?

あの時、もしも無理にでも、寮監を振り向かせようとしていたらどうなっていたのでしょうか…?

私はその後すぐに転校し、寄宿舎を出ました。
今では寄宿舎は廃止され、留学生の寮になったと聞いています。

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