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【怖い話|実話】短編「子宝地蔵」不思議怪談(長野県)

【怖い話|実話】短編「子宝地蔵」不思議怪談(長野県)
投稿者:たんたん さん(30代/女性/主婦)
体験場所:長野県S郡

私の生まれ育った地域には、昔から「子宝にご利益がある」と言われている不思議なお地蔵様がいらっしゃいます。

そのお地蔵様は少し変わっていて、願い事をする際に、自分たちが実際に身につけていた服、しかも新品ではなく着古した服を着せて祈りを捧げるという風習がありました。そうすると、三年以内に子どもを授かると言い伝えられていたのです。

幼い頃の私は、お地蔵様のお参りに来る人たちは必ず夫婦そろって訪ねてくることに気付いていました。子宝という意味もよく分からず、「どうして一人では来ないのだろう?」なんて不思議に思っていたことを懐かしく思い出します。お参りがすんだ後のお地蔵様は、いつもきれいに服を着せ替えられ、どこか穏やかな表情をしていたのが今も印象に残っています。

ある日の夕方でした。
友人と遊んだ帰りにそのお地蔵様の前を通りかかると、見知らぬ夫婦が激しく言い争っていました。
話を聞くともなく聞こえてきたのは、「何度もお参りしているのに全然授からないじゃないか」「全然効き目がない」と、かなり荒立った様子でした。私は子どもながらに、ここでそんな言葉を言ってはいけない気がして、怖くなりました。

次の瞬間、信じられないことが起きました。

男性が怒りに任せてお地蔵様を蹴飛ばしたのです。
その拍子に、お地蔵様の頭が「パキン」と、乾いた音を立てて割れてしまいました。

一瞬で辺りが静まり返った気がしました。
夫婦はみるみる顔色を変えて、逃げるようにその場から立ち去りました。
私は足がすくみ、そこからしばらく動けくなかったことを今でもはっきり覚えています。

翌日、その夫婦が何もない平坦な道路で大きくカーブを外れて事故を起こし、重傷を負ったという話が小さな町に広がりました。
事故は地元新聞にも掲載され、「原因不明」と報じられていましたが、地元の人たちは皆、あの頭の割れたお地蔵様のことを思い起こしていました。
中には偶然だと言う人もいましたが、私はあの瞬間を見てしまった以上、ただの偶然とは思えませんでした。

そんなことがあって、町では改めてご祈祷やご供養が丁寧に行われ、お地蔵様は新しく作り直されました。
今もお地蔵様はその場所で、訪れる人を静かに見守ってくださっています。そんなお地蔵様の姿を見ると、怒りや欲ばかりぶつけるのではなく、敬意と感謝をもって向き合うべき存在なのだと、今なら分かります。

その後、大人になった私自身、遠方へ嫁ぐことが決まった際、夫と一緒にお地蔵様を訪ねました。
昔からの習わし通り、私たちが着ていた服と帽子をそっと着せ、「新しい土地でも見守ってください」と手を合わせました。正直、半信半疑な気持ちも少しだけありましたが、不思議と心が落ち着いたのを覚えています。

それから二年後、私たちは無事に子どもを授かりました。
もちろん医学的には、なるべくしてなったことなのかもしれませんが、あの幼ない頃の出来事や記憶を思い返すと、それだけでは片付けられない何かがあると思えてなりません。

今でも帰省の度、あのお地蔵様の前に立つと、静かな優しさに包まれるような気持ちになります。
私にとってあの出来事は、確かに現実に起きた、不思議で少し怖い体験です。

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