【怖い話|実話】短編「雨が呼ぶもの」心霊怪談(静岡県)

【怖い話|実話】短編「雨が呼ぶもの」心霊怪談(静岡県)
投稿者:丸々 さん(32歳/女性/派遣社員)
体験場所:静岡県富士宮市

これは私が中学2年生の時に体験した話です。

その日は土曜日でしたが、部活があったので学校に行きました。
朝は晴れていたはずの空にいつの間にか雲がかかり、シトシトと雨が降り始めたかと思うと、部活の間に徐々にその雨脚は強まり、帰る頃には横殴りの雨になっていました。

傘を持ってきていなかった私は、学校の玄関から土砂降りの外を眺め、困り果てていました。
あいにくその日は両親共に仕事で、兄弟もみんな出かけてしまっていたため、迎えには誰も来てくれません。
私は仕方なく家まで走って帰ることにしました。

全速力で帰ったつもりでしたが、痛いくらい大きな雨粒に打たれながら、家に着く頃には全身ずぶ濡れでした。
靴も服もびちょびちょな上、まだ夏の気配が残る時期でしたが、雨のせいかその日はいつもより肌寒く、面倒くさがりの私でも温かいシャワーを早く浴びたいと思いながら、玄関ドアを開けた時でした。

家の中の雰囲気がいつもと違うんです。
上手く言えないのですが、暗く淀んだ空気が漂っているような。

「中に入りたくない…」
本能的にそう思うのですが、外は土砂降りの雨です。
ずぶ濡れの体のまま外で家族の帰りを待つのはあまりに無謀ですし、家に入るのが怖かったなんてことを帰ってきた兄弟に言ったら馬鹿にされるのが目に見えています。それに一刻も早く体を温めたい。
そう思って、私は意を決して家の中に上がりました。

中に入ると、やっぱりいつもの雰囲気とは違い、暗くどんよりとした空気が身体にまとわりついてくるような不快感があります。霊感や幽霊なんてものは信じていませんでしたが、頭のどこかで”何かがいる”と感じてしまうのです。

早く体を温めて家を出ようと、急ぎ足でお風呂場に向かいました。
脱衣所に入った瞬間、即座に私は洗面台の鏡から目を背けました。
洗面台の鏡からすごい視線を感じたからです。

「見てはいけない…絶対にだめだ。」と、冷や汗をかきながら、服を脱ぎ風呂場へ入ると、浴槽の縁に誰かの手が置いてありました。

『うわぁ!!』と思わず大声を出してしましたしたが、もう一度見ると手なんかありません。

(今のは何?きっと疲れてるんだ気のせい気のせい)と、自分に言い聞かせ、目をつぶって大急ぎで髪と体を洗い、そのまましばらくシャワーで体を温めました。

温まってくると少し落ち着くことができましたが、頭の中ではとにかく最短で家を出ることしか考えていませんでした。
シャワーヘッドから注ぐお湯から身を引いて、私はゆっくりと目を開けて辺りを見渡しましたが、いつも通りのお風呂場です。浴槽の手もありません

ほっとして風呂場を出ようとした時、脱衣所との仕切りのすりガラスに、手形が一つ。

悲鳴を上げる余裕もなく、心臓が飛び上がるほど驚きながら、私は反射的にシャワーのお湯をそれに浴びせ掛けました。

「いるなら出てこいよ!」

混乱した私は半泣き状態で、気付くとそう大声で叫んでいました。

家には誰もいないですし、返事や反応がないのも当然のこと。
ですが、シーンと静まり返った風呂場が逆に不気味に思え、私は急いで脱衣所に上がりタオルを取って体を拭きました。

ですが、一連の現象に動揺していて、脱衣所の洗面台の存在を忘れていた私は、いつもの流れで櫛を取ろうと洗面台の鏡を向いてしまいました。
(やばい!?)と思った時にもう遅く、直ぐに目を閉じようとしましたが、見えてしまった鏡には、自分が映っているだけで何も変わったところはありません。

(やっぱり私の気にしすぎなんだ…)と思い、体を拭き、もう一度鏡を見ると、ずぶ濡れの女の人が鏡越しにこちらを見ていました。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」

大声を出して全裸のまま脱衣所から走り出し、玄関前で大急ぎで服を着て傘を持って外に飛び出しました

家族が帰ってくるまでの間、私は外でぶらぶら過ごし、両親が戻っていることを確認してから再び帰宅しました。
家の中はいつも通りの雰囲気に戻っていました。お風呂場も確認しましたが、女の人の姿なんてどこにもありません。

先の出来事を両親に話すと、父は大笑い。
「俺は幼少期からここで暮らしているが、幽霊なんか見たことがない」
そう言って、腹を抱えて笑っていました。

しかし、私の話を聞いていた母の顔色は、みるみると変わっていきました。

「ちょっと、こっち来て」
そう言って、母の寝室に連れて行かれた私は、一枚の写真を見せられました。

写真に写るその女性は、私が鏡で見た人と似ていました。

「この人は私の友達なんだけど、今日が、彼女の命日なの…。実は、彼女は自殺して、最後は水に入って亡くなったの…」

そう言って、複雑な表情をする母の顔が、今も忘れられません。

後にも先にもこんな出来事はこの日だけでしたが、鳥肌が止まらない一日でした。

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