【怖い話|実話】短編「幽霊の行先」心霊怪談(兵庫県)

投稿者:NTM さん(19歳/女性/学生)
体験場所:兵庫県神戸市

私の中学校時代の友人A子の話です。

彼女は俗に言う「パリピ」グループの一人で、いつも明るい人でした。真逆の性格の私とA子は、色々あって仲良くなったのですが…

ある日の事、二人でいつものようにご飯を食べていた時、彼女は覚悟を決めたように話し出しました。

その内容は、『A子は視える人』、だということでした。

視える人
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A子は幽霊なんて信じないタイプの人だと思っていたので、急にこんなことを言われて、私は色々な意味で戸惑いました。

「どうせ他の人に言っても冗談だとからかわれそうで相談できなかったんだ。でも〇〇(私)なら真剣に聞いてくれると思って…」

と、何かを相談したいらしいA子。その様子はとても悩んでいるようで、私は仕方なくそのままA子の話を聞くことにしました。

彼女の家は両親と5歳上の兄の四人暮らしでした。
視えるのはA子と母親。父親は視えない人で、男女の遺伝とかも関係するのか、お兄さんも視えないそうなのです。

そのため、兄は怖いもの知らずといった感じで、平気で友人と心霊スポットに行ったりするらしく、A子はそれがとても嫌だったそうです。というのも、兄は視えない割には憑かれやすい人らしく、心霊スポットに行く度に何かしら連れ帰ってくると言うのです。

1ヶ月ほど前のこと。
A子の兄は近所で有名なある心霊スポットに行ってきたらしく、その時も一人連れて帰ってきたそうなのです。
それは、背の高い黒い影のような女の人で、兄の後ろにピッタリとくっついていたと…

兄に着いてきた黒い影
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兄は視えない人なので、当然それを気に留めることはない。A子も母親もただ視えるというだけで、それを祓うような力はないため、仕方なく放っておくことにしました。

今までもそうして放っておくと、兄に憑いてきた何かは、兄の周りにいる誰かのところへ移るらしく、何時の間にか消えてくれたそうなのです。

ですが、今回憑いて来た女は、一週間経っても一向に消える気配がありません。
それどころか、最初は兄の真後ろにピッタリとくっついていた女が、段々と兄から離れ、単独で家のどこかにぽつりと佇むようになり、気付くと廊下やお風呂場にジーッといたりすることが増えたそうです。

特に何をするわけでもないものの、視える彼女と母親にとっては、家の中で不意に女を見かける度にギョッとして、嫌な気持ちになるそうです。

さらに数日がまんしましたが、やはり女は消えてくれません。相変わらず、ふとした時に家のどこかに佇んでいるのを見かけます。
ただ、少し違ってきたのは、以前よりも女は、A子のことをジッと見つめていることが増えたそうです。

特にA子が洗面台で髪を乾かしている時に多いらしく、後ろの廊下から、首をひねってジッとA子を見つめているのが、鏡ごしに視えるそうなのです。

鏡越しに見える霊
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A子もそろそろ限界で、兄に「なんとかしなさいよ!」と怒るものの、視えない兄にはどうすることもできません。

そのまま放置すること1ヶ月。
A子もこの状況に限界を感じたらしく、私に相談したそうなのです。

とはいえ、私には霊感などありませんし、そもそも正直そういった話は信じもしないため、ただ彼女の話を「ふーん」と聞くしかできませんでした。

それから更に一週間後、またA子とお昼ご飯を食べていた時のことです。

彼女は前回とは違い、以前の明るいA子でした。楽しそうにご飯を食べ終えたA子は、食後のジュースを飲みながら嬉しそうに女の話を始めました。

前に私に話してから一週間の間も、やはり女は相変わらず家のどこかに佇んでいたらしく、たまに首を捻ってA子を見つめるそうなのです。
ただ、もともと幽霊を視ることの多いA子ですから、流石にだんだんと慣れてきたらしく、もう女がいても気にならくなってきたと。

そんな時…不意に女がいなくなったそうです。

「やっとお兄ちゃんの友達のところに移ったんだと思うよ。いつもそうだから。」

と、食後のジュースを飲みながら、スッキリした顔でA子は言いました。

「よかったじゃん」

幽霊の真偽はどうであれ、まあA子がスッキリしたのならと、私も安心しました。

その日、家に帰ると、A子から電話が掛かってきました。
普段ほとんど友達と電話することのない私は、スマホを耳に当てたまま、変に緊張してしまいました。

すると慌てた様子のA子が、

「今晩泊めてほしい」

と頼んできました。

なにぶん人見知りな私ですから、友人を家に泊めることなど滅多にありません。ですが、尋常ではなく困った様子のA子の頼みを無下にもできず、「おいで」と返事をしてから、急いで部屋の片付けを始めました。

しばらくして家のチャイムが鳴って、私はA子を家に迎え入れました。
A子の服装はさっきご飯を食べた時と同じまま、スマホと財布だけを持っていて、信じられないぐらい息が上がっていました。

とりあえず部屋に入れ、飲み物を手渡すと、A子は一気にそれを飲み干し、ゆっくりと話し始めました。

さっき私と分かれた直後、両親から帰りが遅くなるという連絡が来て、次いで兄からも遊んでから帰るから遅くなるとの連絡があったそうなのです。
まあいいやと、A子はそのまま誰もいない家に帰ったのですが、玄関を開けようとした時、何か嫌な感じがしたそうです。

恐る恐る玄関の扉を開けた彼女は、家の中の廊下を見た瞬間、慌ててドアを閉めて私に電話したそうです。

家の中の暗い廊下の先に、消えたはずのあの女が、あらぬ方向に首を曲げてA子を見つめていたそうです…

消えたはずの女の霊
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翌日、A子は家に帰りました。
その後どうなったのかは知りません。それ以降、A子からその話をしてくることはありませんでしたし、私から聞くこともありませんでした。

ですが、ちょっと引っかかる事があります。
「兄に憑いてきた何かは、そのうち兄の周りの誰かのところへ行く」
A子はそう話していました。

だとしたら、その女の霊が今どこにいるのか考えた時、

A子の兄 → A子
A子 → 私

ということもあるかもしれないのでは?

というか、A子が私にこの話をしなくなった理由って・・・

そんなことを考えた私は、それから少し怯えながら中学生活を過ごしました。

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