【心霊スポット】福岡県|昭和池の怖い話「ガードレール」実話怪談・短編

投稿者:クマ吉 さん(41歳/男性/自営業/福岡県在住)
心霊スポット:福岡県北九州市小倉南区「昭和池」ダム
【心霊スポット】福岡県|昭和池の怖い話「ガードレール」実話怪談・短編

今から20年程前の話になります。

当時、学生だった私は運転免許を取得したばかりで、車を運転したい盛りの頃でした。

それから直ぐの夏休みのことです。
仲の良い地元中学の同級生(A子、B介、C太)と4人で集まった際、今から私の運転でドライにへ行こうという事になったんです。

ドライブと言っても、時間はすでに夜でしたし、私はまだ免許取り立てだったので遠出は避けようと話した結果、地元にある小さなダム『昭和池』に肝試しに行かないか?となりました。

ですが、ノリノリだったB介とC太とは対照的に、唯一の女性だったA子は「行きたくない!」とゴネていました。

嫌がるA子に「皆が一緒だし、車で通るだけだから大丈夫だよ」と言って安心させたのですが、半分は少しビビっている自分自身に言い聞かせる意味もあった気がします。

と言うのも、これから訪れようとしてる昭和池は、以前から「幽霊が出る」という噂が絶えない場所で、私たちにとっては心霊スポットとして名が通っていました。

ダムが出来る前の戦時中の頃には感染病隔離施設があったらしく、当時多くの方がそこで命を落とされたという噂を聞いていた私たちには、その怖さに信憑性がありました。

それでも何とかA子の了解も得て、私たちはようやくその昭和池に向かうことになったんです。

ですが、目的地はあくまで地元のダムですので、そこは余りにも近く、10分程度の運転でダムの駐車場まで到着してしまいました。

呆気ないもんだな~と思いながら周囲を見渡すと、流石に夜は人気が全く無く、真っ暗という訳では有りませんが街灯の灯りがポツポツと点いている程度で、やはり不気味な雰囲気が漂っています。

それでも特別何か起こる事も無く、目的も達成したのでそろそろ帰ろうとした時でした。

「もっと奥まで行きたい!」

と、B介が悪ノリして言い出したのです。

「絶対イヤ!帰りたい!」

もちろんA子はそう言って今にも泣き出しそうな状態でしたが、私も含め周りはその様子を見て楽しんでいたのも事実です。

結局、嫌がるA子を無理に付き合わせ、私たちはダムのもう少し奥の方まで行ってみることになったのです。

そこからは運転はB介に代わり私は助手席に、A子とC太は後部座席に座る形でダム沿いの道をゆっくりと進んで行きました。

ダム沿いの道は車が離合出来ない(すれ違えない)ほど道幅が狭く、もしも対向車が来た場合にはバックで下がる必要があり、免許取り立ての自分には自信が無かったので運転慣れしたB介に替わってもらったのです。

とは言え、B介も慎重に走り始め、恐る恐るゆっくりと車を前に進めていきました。

すると、100mくらい進んだところから道幅が少し広くなり、B介がアクセルを踏み込みスピードを上げた瞬間でした。

後部座席から悲鳴が聞こえたんです。

A子の声でした。

皆その悲鳴に驚いて振り向き、B介は車を止めました。

「どうした?」

震えているA子にそう聞くと、

「あそこのカーブのところのガードレールの向こうに、女の人が見える…」

と言ってA子は前方のガードレールを指差すのですが、私たちには車のライトで照らされたガードレールしか見えません。

「冗談はよせよ」

と言いながらもう一度A子の方を振り返ったのですが、今までに見た事もないくらい彼女は恐怖で震えています。

A子の勘違いにしても、このまま彼女を怖がらせておくのも可哀そうなので、仕方なく私とB介で車を降りてガードレールの確認に向かったのです。

並んで30m程歩き、ガードレールの目前まで近づいた時、私とB介は愕然としました。

そこにガードレールが無いんです。

何かを見間違えていたわけではありません。
何時の間にか、さっきまで見えていたはずのガードレールだけが、忽然とそこから消えていたのです

訳が分かりませんでした。
それまで私とB介はそのガードレールを目指して歩いていたはずなのに、それがないのですから。

しかも、さっきまで見えていたガードレールが案内する先を見て、私たちは再び凍り付きました。

仮にあのまま運転を続けガードレール通りに曲がっていたら、私たちは、車ごとダムに一直線でした。

足元から全身に鳥肌が立ち上がるのが分かり、私たちは慌てて車へ戻り逃げる様にその場から立ち去りました。

あの体験は一体何だったのか、今でも謎のままです。

A子が見たという女性は私たちには見えませんでしたが、ガードレールは全員が見ていました。

ガードレールは私たちを死に誘うため、A子が見た女性は私たちを助けるために、別々に現れたものだったのでしょうか…

いずれにせよA子が見たと言う女性、ある意味ではそれを見てくれたA子に、私たちは救われたんです。

あれから20年も経ちましたが、今でも夜道を走る際は、目の前のガードレールが本物かどうか、不安な日々を過ごしています。

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