【心霊スポット】京都府|首塚大明神の怖い話「兄の霊感」実話怪談・短編

【心霊スポット】京都府|首塚大明神の怖い話「兄の霊感」実話怪談・短編
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投稿者:ブースカ さん(30代/女性/主婦)
心霊スポット:京都府京都市「首塚大明神」

私の兄は霊が見える。
当時高校生だった私は自称霊が見えると言う兄を信じていなかった。

例えばレンタルビデオで、『呪いのビデオ』という一般投稿による心霊映像集を借りて見ていると、兄は「あー。これはここの霊よりこっちの霊の方がやばいねんけどな」なんて言いながら何もないところを指差す。
そう言ってどや顔になる兄の言葉がいちいち鬱陶しくて、「私はふーん。」と全く気の無い返事を返していた。

【心霊スポット】京都府|首塚大明神の怖い話「兄の霊感」実話怪談・短編-画像1
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ただ、その兄の霊感を信じざる負えない出来事が起きた。

その日は同級生の女友達と一緒に、男の先輩二人と深夜に心霊スポット巡りに行くことになっていた。
男の人と一緒だと知られることが嫌で、親には友達の家に泊まってくると嘘をついた。

夜中になると先輩の車に乗って『出る』と噂される、京都の地元スポットを走り回った。
清滝トンネルや鈴虫寺、渡月橋近くにある公衆電話など、地元の心霊スポットを色々巡っていると、「次は首塚大明神に行ってみよう」と先輩が言い出した。

首塚は京都でも屈指の心霊スポットで、以前から兄が「あそこはな、絶対にふざけて行ったらあかん」と言っていたことを思い出し、私は少し躊躇した。ただ、みんな乗り気のようだし、水を差すのもためらわれ、何も言わずに付いて行くことにした。

目的地の近くまで来ると、国道から曲がって細い道に入った。途端に辺りの雰囲気はガラリと変わり、プレハブ小屋や落書きされた廃墟のような建物がポツポツと点在していた。そのまま奥に進むほど道は一層細くなり、私は少し不安になってきた。

首塚の少し手前で車を停め、そこから歩いて目的地に向かった。

少し歩くと、木々の暗がりにボゥっと首塚大明神の鳥居が現れた。
その異様な雰囲気に気圧され、私たちは4人とも急に黙り込んでしまった。

すると突然「…ん?なんだあれ?」と言って先輩が鳥居の上の方を指差した。
促されるまま先輩が指す方を見ると、鳥居の一番上のバーの上に、幾つかの石が積まれているのが目に入った。

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「誰があんなとこに石乗せたんやろ?」
「あれ、なんか願掛けって聞いたことあるで?投げて乗ったら願いが叶うとか」

そう言って、もう1人の先輩が鳥居に向かって石を投げ始めた。
すると先輩の投げた石は絶妙な弧を描き鳥居の上に飛んたかと思うと、他の積まれていた石に当たってそれを崩してしまった。

その瞬間、鳥居の奥から私達に向かって風が吹いた。

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たったそれだけ。一筋の風が吹いただけのことだったが、私は何かやばいことをしてしまったのではないかと直感した。

「・・・帰りません?」

私がそう言うと、先輩達も何かを感じたのか、それ以上先には行かず、そのまま帰ることになった。

帰りの道中、車の中は妙に辛気臭く、みんな口数が少なかった。
すると急に私の携帯が鳴り、口から心臓が飛び出そうなほど驚いた。

着信を見ると兄からだった。
家で何かあったのかと心配して電話に出ると、

「お前、今どこおんねん?」

と、すごく不機嫌そうな声で兄が聞いて来た。

親には友達の家に泊まってくると嘘をついてきたので、

「え?〇〇の家だけど?」

と言うと、

「もうえぇ。全部分かっとるから、どこやねん?」

と、今度は兄の声が明らかに怒りを含んでいたので驚いた。

「・・・首塚の、帰り。」

と、少しバツ悪く答えると、

「お前何した?全部言え。あと今から俺行くから、ローソン通り過ぎてなかったらローソンの駐車場におれ。」

兄は捲し立てるように語気を強めてそう言った。

私は観念して、首塚に行ったこと、鳥居の前まで行ったこと、鳥居の上に願掛けで石を投げたこと、積まれた石を崩したこと、一つ一つ口ごもりながら説明して電話を切った。

電話を切ると、兄に指定されたコンビニに向かった。
男の先輩たちといるところを兄に見られたくなかったので、私は友達と2人だけでコンビニに降ろしてもらい、先輩たちには先に帰ってもらった。

それからすぐに兄の車がやって来ると、中から明らかに怒っている兄が顔を出し「乗れや」と言った。

「お前ら2人か?4人おらんかったか?」

兄が開口一番、そう聞いてきたことにまず驚いた。

「まあいい。もう一回行くで」

と、兄はコンビニの駐車場を出ると首塚方面に車を走らせた。

「今から謝りに行く。それで許してくれるかは分からん。けど、お前は妹やし、もう1人、お前はまぁ妹の友達やから一緒に行ってやるけど、あとの2人は知らん。謝りに行けとだけ伝えとけ」

そう言いながら、兄は苦虫を噛み潰したような顔で運転を続けた。

再び首塚の手前で車を停め、そこから歩いて鳥居を目指していると、兄がこんなことを言った。

「お前さ、願掛けや言うて石投げたんやろ?考えてみ、寝てる時にな、家に石投げられたらどう思う?そんなこと?って思うかもしらん。でもな、アチラさんからしたらもうウンザリちゃうか?お前ら、とりあえず心から謝ってきや」

そんな風に穏やかに諭してくる兄だったが、鳥居が見えてくると、

「これはあかん。」

と一言いって、直ぐに鳥居の前で手を合わせた。
私と友達も兄に倣って手を合わせ「本当にすみませんでした。」と心の中で唱えた。

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チラッと兄の顔を見ると、その表情は真剣で、いつものチャラチャラした感じは一切なかった。
私たちは最後に丁寧に頭を下げ、来た道を戻った。

家に着いてから兄に「なんで首塚に行ったか分かったん?」と聞いた。
兄が言うには、なんでも兄には守護霊が憑いているらしく、その霊がその日、兄のことをもの凄い形相で睨んでいたらしい。
普段は自分のことを守ってくれている守護霊がもの凄く怒っている。けれども自分には身に覚えがないし、そこでピンときたそうだ。
今、家を空けている妹が何か仕出かしたのだと。

普段なら信じられないような話だったが、その日、首塚を訪ねた私は確かにまずい事をしたと直感していた。先輩二人の存在も兄は何故か知っていたし、私はその日、初めて兄の話に信憑性を感じたのだ。

その後すぐに先輩たちにも連絡して謝りに行くように伝えた。先輩たちはその夜にもう一度首塚を訪れるのは怖かったらしく、でも翌日の昼にはちゃんと謝りに行ったそうだ。

別に幽霊を見たわけでもなく、何か不幸な出来事があったわけでもい。つまり、ゾッとする程の体験をしたわけではないけれど、ただそれは、兄が気付いてくれたからだと思う。
もし兄が気付かなければ、私達は一体どうなっていたのだろうと、今でもふと考える。

私の兄は霊が見える。
この出来事があって以来、私は兄の霊感を信じるようになった。

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