心霊スポット:静岡県富士市の廃マンション
静岡県富士市の東名富士ICを下り、国道139号線を上がったところの左手に、1階部分がベニヤ板で覆われたマンションがあります。
ユニゾン富士。
地元では心霊スポットとして有名な廃墟マンションです。
外から見ると、窓ガラスが割れている部屋もあれば、カーテンが付けられたまま未だに生活感が残った部屋もあり、随分と雑に放置されているのが分かります。
私はこの土地の出身なのですが、物心ついた頃から既にマンションはこの状態でした。
大人になった今でも解体されずにそのまま残っているので、20年以上は手つかずのまま放置されていることになります。
実はネットで調べるとすぐに出てくるのですが、過去にそのマンションでは殺人事件があったそうです。
1984年に起きた暴力団絡みの事件で、被害者は女性。
以来、女性の霊の目撃情報が相次ぎ、住民は皆出て行ってしまったそうなのです。
その後、あくまで月並みな噂話ですが、そのマンションを解体しようとする度に災いが起こり、結局そのまま放置されている状態だと言います。
実際、数年前には管理会社の看板が掲げられていたのを私も目にしていますが、いつからかそれも撤去されてしまい、やはり何かしらの事情があって止む無く解体が出来ないのは事実なのかもしれません。
周囲には飲食店や専門学校があり比較的人通りや車通りは多い場所ですが、その廃マンションだけが古びたまま周囲から浮いてしまっているわけです。
今から数年ほど前の話です。
その頃、私はわけあって少しまとまったお金が必要になり、キャバクラ店で勤務をしていました。
ある頃から、そこにA様というお客様がいらっしゃるようになり、かなりの頻度で通ってくださっていました。
なんでもA様は他県から転勤で最近引っ越してきたとのことで、噂のマンションの近くにお住まいだと言っていました。
A様とは色々と会話させて頂きましたが、特にそのマンションのお話をされることが多かったと思おいます。
「あの前を通るたびに嫌な感じがする。」
「あそこからは冷たい気配がする。」
最初のうちはその程度のことをおっしゃるくらいでしたが、
「あそこには白い服の女がいる。」
「割れた窓ガラスの部屋の中に立っている。」
と、しだいに具体的な目撃談などもお話をされるようになっていきました。
ですが、私たちも正直(会話のネタで言っているだけだろう)と思い、さほど気にすることもありませんでした。
そんなある日のことでした。
「すごい写真撮れちゃった。」
と、A様から私宛にメールが届きました。
さほど気にしていないとは言いましたが、流石に私も一人でその写真を見る勇気はなかったため、次回お店に来た時に見せて頂けるようにお返事をしました。
その頃にはA様は毎週末お店に来られていたので、次に来店された時の話題にと、私も思っていたのです。
ですが、それからA様が来店されることはありませんでした。
それどころか、私からのメールに対する返事も頂けないまま、A様はそのまま音信不通となってしまったのです。
それからしばらく経った頃のことです。
私がお店を辞める直前のことでした。
以前、A様がお店に連れてこられたことのある会社の後輩という方が来店されたんです。
その方に、気になっていたA様のことについてお聞きすると、
「Aさんは、ある日突然会社を辞めていった。」
と仰るのです。
転勤でこの土地に来られた方なので、会社を辞めたなら地元に帰ったのだろうと思いましたが、それでも、あれだけ足しげく通って下さったお客様が、最後にお店に顔も出さずに帰られるだろうかと思い、もう少し詳しい話を伺ってみると、
「僕も詳しい話は知らないが、ある時、1週間程欠勤したことがあって、その後、精神科の診断書を持って会社に来て、体調不良のため辞めさせて頂きます、とだけ残し、翌日には実家へ帰ってしまったそうだ。」
と、その後輩の方も困り顔で話されていました。
その話を聞いた時、私はすぐにあのマンションのことが頭に浮かび背筋がゾッとしました。
その欠勤した1週間というのが、「面白い写真がとれた…」と、A様からのメールを頂いた頃なんです。
それからはなんとなく、私はあのマンションがある道を避けて生活しています。
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