【心霊スポット】宮崎県|関之尾滝の怖い話「線香の匂い」実話怪談・短編

投稿者:きなこもち さん(20代/女性/農業/佐賀県在住)
心霊スポット:宮崎県都城市 関之尾滝

あれは5年ほど前の夏休みの事でした。
親戚の葬儀で宮崎県を訪れていた私は、久々に会う従兄弟たちと夜遅くまでお酒を飲み、カードゲーム等をして盛り上がっていました。

知っているゲームをひとしきり終え退屈し始めた頃、不謹慎にも従兄弟が「真夏だし肝試しにでも行こうぜ!」と言い出しました。

心霊やホラー系が大好きな私はもちろん賛成。若くてノリのいい叔父が、お酒を飲んでいなかったので車を出してくれることになり、『宮崎 心霊スポット』と検索した結果出てきた、都城市にある関之尾滝を目指して3人で出発しました。

関之尾滝
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滝までは約40分の道のりでした。
真夜中の田舎、他に走っている車もいない真っ暗な山道。

「滝に向かうガードレールのところで女性の幽霊が出る」というネット情報もあり、ガードレールを通り過ぎる度に私と従兄弟は窓に張り付いて見ていましたが、特に何も出てくることはありませんでした。

叔父がちょっと飛ばしたのか、30分ほどでスムーズに売店側の第一駐車場へ到着。
以前、昼間に観光に訪れた時には車がぎっしり停まっていて、沢山の人で賑わっていた場所も、夜は人っ子一人いません。

車を降りようとドアを開けた時、私は何とも言えない嫌な雰囲気を感じましたが、ここにきて怖気付いたと思われるのも恥ずかしく、まだ酔いが残っていたこともあって、気のせいだと言い聞かせながら車を降りました。

街灯もほとんどない暗い道を、携帯の小さなライトを頼りに進んでいきます。

駐車場から階段を降りるとすぐトイレがあり、車の中でもしこたま飲んでいた従兄弟が「待って、おしっこ行きたい」と言い出したので、「えぇ、子供かよ…」と言いながら、私と叔父はトイレの前で待っていました。

「公衆トイレにも霊が出る」、ネットにそんな話もあったので、ちょっと怖がらせてやろうと入り口から個室に向かって「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」と、呪怨の伽椰子の声真似をしたりして従兄弟をからかっていたのですが、その時ふと、叔父の吸っている煙草の臭いが変なことに気付きました。

タバコの匂い
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「さっきと違う煙草ですか?」
と聞いてみると、
「俺はパーラメントライト一筋だ!」
と言う叔父。

そこで従兄弟がトイレから出てきて再び歩き始めたのですが、滝の手前の小さな神社を過ぎる頃、(あっ!あれは線香の臭いだ)と急にひらめき、私は一人納得しました。

どうどうと滝の音が近づいてきて、夏だというのに半袖では肌寒いくらいです。

狭い階段を下りて、滝の正面の吊り橋に辿り着くと、そこにはぞっとするような闇が広がっていました。
昼間の荘厳な滝とは全く違う、いかにも恐ろしげな空間。

この辺りで全員が既に怖気付いていたのですが、折角来たのだからと橋の真ん中で滝をバックに写真を撮り、また一列に並んで歩き始めました。

橋も終わりに近付いた頃、最後尾にいた悪戯好きの叔父が急に大きくジャンプして橋を揺らし始めました。

「酔っぱらってるからマジで落ちるって!」

と、慌てる従兄弟に後ろから服を掴まれ、

「共倒れする!」

と振り向いた私の目に、橋のまだ渡り始めのところに、人影がいるのが見えました。

橋の渡り始めのところに人影
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「おじちゃんストップ!他にも人いるから!」
と私は焦って言いました。
ですが叔父が振り向いた時には、そこに人影はありませんでした。

「何だよ、怖がらせるなよ~」と2人には言われましたが、確かに私には小さな白っぽい人影が見えたはずなのです。

(もしかして落ちたんじゃ…)と心配になりましたが、よく考えればライトで照らしてほんの数メートル先が見えるかどうかの状況で、橋の半分以上離れている場所の人間が見える訳がありません。
私はなんだか気味が悪くなり、さっさと橋を渡り終え、さりげなく従兄弟と叔父の真ん中に入り込みました。

山道の階段を登り、また少し降りると、甌穴群(おうけつぐん)という丸い石が沢山並んでいる場所に出ます。

甌穴群
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私が写真を撮っていると、暗闇だというのに石を渡って川の真ん中へ歩いて行く従兄弟。

「おーい、その辺で帰って来いよー」

と叔父が声を掛けますが、従兄弟はどんどん滝の方へと進んでいきます。

(何か変だ!?)と思って、私と叔父は石を踏み外して濡れながら従兄弟を追いかけ、滝に落ちる寸前でシャツを掴んで引き留めることが出来ました。

シャツを掴む
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どうしたのか聞いても、ぶつぶつと何か言いながらどこか遠くを見ている従兄弟。
叔父が従兄弟を背負い、私が2台の携帯で道を照らしながら急いで車へと戻りました。

車の中で叔父にビンタされた従兄弟はすぐ正気に戻りましたが、橋を渡り終えた後からの事はよく覚えていないとのことでした。

帰宅後、特に他に起こることはありませんでしたが、迷いなく滝に向かって進んでいった従兄弟の背中が、私は今でも忘れられません。

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