体験場所:兵庫県神戸市S公園
大学生の頃、友人のA子とB子と3人で神戸市にあるS公園に行った時の話です。
まだ5月だったにも関わらず、その日はまるで真夏のような炎天下でした。
電車を降りて公園に向かう途中、私たち3人は好きな音楽やアニメの話で大盛り上がりしていました。
それなのに、公園に着いた途端10分もしない内に、A子が「しんどい…」と言って塞ぎこんでしまったのです。
そのまま木陰で休んでいるA子を見ていると、さっきまでの元気が嘘のように青ざめています。
でも、せっかっく電車を使ってまで来た公園だったので、A子には悪いけど私とB子はお弁当を食べたり辺りを散策したりして楽しんでいました。
時々、なかなか回復しないA子を心配して飲み物を持って行ったり、そうやって公園での時間を過ごしていたんです。
17時になり「そろそろ帰ろうか?」と、B子と一緒にA子の元に戻った時でした。
ずっと同じ木陰で休んでいたはずのA子の姿がそこにありませんでした。
私たちは慌てて辺りをキョロキョロと見回すと、向こうに見える遊具の上に、さっきまで青い顔していたはずのA子がボーっと立っているのが見えました。
「A子!危ないから降りて!」
私とB子はそう叫んでA子を促すのですが、A子は聞こえているのかいないのか、虚ろな表情を浮かべたまま一向に遊具から降りてこようとしません。
そんなやり取りを数分ほど繰り返した後、全く降りて来る気配のないA子がいよいよ心配になり、私もA子のところに上ろうと遊具に手を掛けた時でした。
「キャー!!」っとB子がもの凄い悲鳴を上げたのです。
驚いて私は直ぐにB子の方を振り返ると、「A子が落ちた!!」と言ってB子が騒いでいます。
直ぐに遊具の周りを確認しましたが、A子はおろか、他に誰の姿もありません。
B子の勘違いかと思い咄嗟に遊具の上を見上げましたが、確かにさっきまでそこにいたはずのA子の姿がないんです。
さっきまで遊具の上でボーっとしていたはずのA子が、突然の落下と同時に姿を消してしまったのです。
直ぐにA子のケータイに電話しましたが繋がりません。
私たちは慌てて、とにかく公園中をくまなく探して回りましたが、結局A子の姿を見つけることが出来ませんでした。
20時になった頃、もう一度A子のケータイに電話してみましたが、やはり繋がらず、「きっと先に帰ったのかもね…」無理矢理そう思うことにして、とりあえず私たちも帰路に就いたのです。
家に帰ると遅くなったことを親に叱られ、その後で私はもう一度A子に電話をしました。
すると、あっけなくA子が電話に出たのです。
私は安堵すると同時にA子に対する怒りも沸いてきて、捲し立てるように今日のことを問い詰めると、
「ちょっちょっ、え…?…何言ってるの?私は18時頃までずっとあの木陰で二人を待っていたんだよ」
なんてことを言うので、私は17時頃に木陰に戻ったら、公園の遊具の上にA子が立っていたこと。その後で遊具からA子が落ちたのをB子が見たことを話しましたが、
「え?何言ってるの・・・?私、二人が戻らないから、探してもどこにもいないし、何度もケータイに電話かけても繋がらないし…。私を置いて帰っちゃったんだと思って、私も、18時半頃かな、一人で帰ったんだよ・・・」
「え?嘘・・・連絡なんて・・・」
私は慌てて自分のケータイの履歴を確認しましたが、やっぱり着信なんてありませんでした。
ですが、後日大学で、B子と一緒にA子のケータイを確認させてもらうと、確かにあの時の発信履歴が何十件も残っていたのです。
その時、初めてA子からこんな話を聞かされました。
「私ね、昔から初めての場所に行くと、体調が悪くなることが多くてね。そんな土地って、だいたい何か悪い霊的なものがいたりするみたいで…。実際にハッキリと霊の姿を見たことはないんだけどね…。折角3人で初めての公園に来たのに、水を差すのも悪いと思って…でも、やっぱりあの時、気分が悪くなった時に早く引き返せば良かったね。ごめんね。」
と、A子は困った表情をして笑っていました。
正直、私もB子も半信半疑でその話を聞いていましたが、でも、だとしても、あの日あそこで不可思議な体験をしてしまったのって、私たちの方だったのでは…
結局、あの日見た遊具の上に立っていたA子の姿、そのA子が落ちてしまったたという話も、何が何なのか分からないままです。
後で知った話ですが、草木が多い場所って、住宅街とかに比べて神隠しなどの不可解な現象が起こりやすいそうです。
もしかしたら私たちが体験した現象も、自然が豊かなS公園だからこそ起こった神隠し的なものなのかもしれないと、私はそんな風に考えています。
その後、私やA子やB子の身に、何か嫌なことが起こったわけでもなく、元気に過ごせているのは不幸中の幸い?ですが…
ただ、そんな体験をして以来、未だに草木が生い茂っている場所を見ると、遊具の上でボーっと立っていたA子の姿がフッとフラッシュバックして、思わずたじろいでしまいます。
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