
体験場所:北海道K市の踏切
私は普段から、よく開かずの踏切を利用しています。
徒歩での通勤経路の途中にあるため避けることができない場所で、特に朝の時間帯は長時間閉まっていることが多く、そこで待たされるのが当たり前になっていました。
踏切が開くまでの間、スマホを見て時間を潰すのが習慣になっており、その朝もいつも通りスマホを見ながら遮断機が上がるのを待っていました。
ただ、その日は少し寝不足でした。前日の夜になかなか寝付けず、ようやく眠れたのは随分深い時間になってから。なので朝もスッキリ起きられず、ぼんやりしたまま準備をして家を出ました。そんな状態だったためか、いつも長い踏切待ちの時間が、余計に長く感じていました。
スマホを開いてSNSを見たり、ニュースを流し読みしたりして待っていましたが、ふと時計を見るとすでに5分が経過していました。さすがにそろそろ開くだろうと思っていたところ、踏切の警報音が止まりました。
私はいつも通り、特に周りにに注意を払うこともなく、目はスマホに向けたまま踏切を渡り始めました。
すると、踏切の中央付近に差し掛かった辺りで、ふと違和感を覚えました。
元々あまりひと気のない場所ではありましたが、通期時間帯ですし、それにさすがに長い踏切待ちの時間もあって、普段なら同じタイミングで渡る人もいるはずです。それなのに、その朝は踏切を渡っているのは自分一人だけ。
不思議には思いましたが、珍しいこともあるもんだという程度のことで、私はスマホから目を上げることもないまま踏切を渡り続けました。
しかし、やはり周囲の空気がいつもと違う。やけに静かに感じます。
私は嫌な予感がして、咄嗟に後ろを振り返りました。
すると――今さっき自分が入って来たはずの踏切に遮断機が下りていました。
私は驚きのあまり思わず足が止まりました。
確かに警報音は止んでいるのに、踏切は開いていない…
それなら私はどうやってこの踏切の中に立ち入ったのだろう?
私は遮断機が下りたままの踏切の中に立ち尽くしてしまいました。
その瞬間でした。
唐突に警報音が耳に突き刺さるほどの大音量で響きました。
「え?どうして気付かなかったんだ?」
「警報音は止んでないし遮断機も上がってない!」
「それならどうして私は踏切を渡っているんだ?」
さっきまで聞こえなかった警報音が、今は頭を締め付けるように鳴り響いています。
色々なことが頭を駆け巡る間に動悸が激しくなり、「とにかく急いで踏切の外に出ないと」そう思って踏切の端まで走り、体を低くして遮断機の下を転がるようにして外へ出ました。
心臓が爆発しそうな鼓動を刻み、呼吸も乱れ、スマホを握る手に汗が滲みます。立ち上がる気力もなく、座り込んだ目の前を列車がすごい勢いで走り抜けていきました。
その時、不意に舌打ちが聞こえました。
驚いてすぐに顔を上げましたが、周囲には誰もいません。
自分の他には遠くを歩く人影がちらほら見えるくらい。
車のエンジン音すら聞こえません。
誰かいたのか、それとも気のせいだったのか、動揺している私には判断が付きませんでした。
列車が走り去った後、辺りは相変わらず静かで人の気配もありません。
もしあの時、遮断機が下りていることに気付かず、スマホを見たまま踏切を渡り続けていたら、いったい私はどうなっていたのだろう。そう考えると、背筋が冷たくなりました。
とにかくこの場から早く離れようと、足の震えを押さえて立ち上がり、スマホをポケットにしまい、私は踏切から逃げるように歩き出しました。
あの経験以来、私は踏切では必ず周囲に気を付けるようになりました。スマホなんて以ての外です。
あの日のことを思い出すと、警報音が止んだからといって、踏切が開いたと決めつけるのは危険だと痛感しています。ほんの数秒の油断が取り返しのつかない事態を招くかもしれません。
今でもあの体験が何だったのかは分かりませんが、あの舌打ちの音は今でも耳に残っています。

他にも「北海道の怖い話」が投稿されています。
→ 北海道で体験した怖い話(実話)

コメント