【怖い話|実話】短編「読書好きの誰か」不思議怪談(大阪府)

【怖い話|実話】短編「読書好きの誰か」不思議怪談(大阪府)
投稿者:大沢しをり さん(57歳/女性/日本語講師)
体験場所:大阪府大阪市中央区 堺筋線北浜駅

もう20年近く昔の話です。

2006年12月、時刻は午後4時頃だったと思います。
当時大阪で働いていた私は、早朝からの仕事を終え、地下鉄堺筋線北浜駅のホームで帰宅しようと天下茶屋方面行きの電車を待っていました。

オフィス街の駅なので、この時間帯はまだ人がまばらです。前後に並んでいる人はいません。私はぽつんといつもの乗車位置に立ち、読みかけの本を取り出しました。

子どもの頃から読書好きだったからか、読むスピードは速いほうです。この時は短編集の文庫本を持ってきていました。しおりを挟んだページを開き、読み終えて次のページをめくろうとした時、それは起こりました。

正面に立つ誰かが、本のページを上から手で押さえ付けている感覚。ぐぐぐ…っと手の平の本が突然重くなり、たわんでいた本がじわじわと水平に矯正され、それを支える私の左手も小さく震えます。

「えっ、何これ…」

驚いて顔を上げ、目の前を見ましたが、誰もいません。辺りにも手の届くような範囲に人の姿はありません。それなのに、私の手の平に開かれた本が誰かに押さえ付けられている。

ただ、その誰かが本をのぞき込んでいる…そんな感覚もありました。
「まだページをめくるな」と、そう主張しているような。

もしかして、この本を読みたいのかな?
そう思ったら急に可笑しさがこみ上げてきました。

しょうがないなあ。
いいよ、一緒に読もう。

そのまま少し待ちました。すると難なくページをめくれました。でも、自分が読み終えたタイミングでめくろうとすると、再びぐぐっと重くなります。

ちょっと読むのが遅いのかな?ああそうか、上下逆さまに読んでるから普通より時間がかかるんだ。そんなことを考えて、ゆっくりゆっくりめくってあげることにしました。

確か8ページほど読んだところで(3回めくった格好ですね)その短編物語が終わり、するとタイミングよく電車がホームに滑り込んできました。満足してもらえたのでしょうか、スッと本も軽くなりました。

オフィスの最寄り駅なので、明日も私はこのホームに立ちます。「またね」と黙って言葉を掛けてから、電車に乗り込みました。「続きを読みたいかもしれないから、またこの本を持ってきた方がいいかな?」なんてことを思いました…。

後日、この体験を打ち明けたごく少数の友人たちからは、「こわっ」「ヤバいってそれ」「お祓いに行ったほうがいいよ」などと散々に言われたのですが、私は逆に驚いて、「いやどこが怖いのこれ?」と聞き返してしまったくらいで、むしろ再会できたらなと、実はかなり楽しみだったのです。「本が好きならきっと気が合う」、そう感じたからかもしれません。

ですが、翌日も、その翌日も翌週も、ホームで本を開いてみましたが、残念ながら彼?彼女?との再会は叶いませんでした。

今でもときどき思い出しては想像してしまいます。今日もどこかで誰かの本をのぞき込み、逆さから読んでいるのでしょうか。押さえつけてでもじっくり読みたいほど、気に入った本に出合えているでしょうか(見ようによっては迷惑行為だけど…)。

そんな面倒な読み方をしなくても、私のところに来てくれたなら、ちゃんと正しい向きで開いて読ませてあげるのに…。
読書好きな誰かさんとの、ちょっと可笑しくて不思議な思い出です。

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