PR

【怖い話|実話】短編「犬の距離感」不思議怪談(大阪府)

【怖い話|実話】短編「犬の距離感」不思議怪談(大阪府)
投稿者:かたひ さん(40代/男性/自営業)
体験場所:大阪府枚方市

小学生の頃の話なんだけど、今でも時々思い出す妙な出来事があった。

当時、僕は家から学校まで徒歩20分くらいの距離を通っていた。

季節はたしか秋で、日が短くなり始めた頃。
その日の学校帰り、いつも通りランドセルを背負って校門を出た。空気が少し冷たくて、夕方の陽の光がオレンジ色に傾いていたのを覚えている。

友達とは途中で別れ、一人で住宅街の細い道を歩いていた。家まで一本道なのだけど、ところどころに脇道があって、気分でルートを変えることもできた。

その日も適当な脇道にそれ、最初の角を曲がった辺りで、「カツ、カツ」と後ろから小さな足音が聞こえた。人の足音にしては軽いしリズムも不規則で、気になって振り返ってみたら、中型くらいの雑種っぽい犬が立っていた。毛は薄い茶色で、首輪は付いていなかった。野良犬なのか、どこかの家から抜け出してきたのかは分からないけど、それがこちらをジッと見ていた。

その時は「犬がいるな」くらいにしか思わず、特に気にせずまた前を向いて歩き始めた。

でも、しばらくするとまた後ろから足音が聞こえてきた。
振り返ると、さっきの犬がさっきと同じ距離にいた。吠えるわけでもなく、走ってくるわけでもなく、ただ一定の距離を保ちながら後を付いてくる感じだった。

「どうして付いてくるんだろ…」

子どもながらに少し不安になって、道を一本ずらしてみた。普段は通らない細い路地に入ってみたんだけど、曲がった先でまた足音がして、振り返るとやっぱり同じ犬が同じ距離にいる。まるで僕のペースに合わすみたいに、一定の距離を保って付いてくる。

試しに歩く速度を変えてみた。少し早歩きしてみたり、逆にゆっくり歩いてみたり。それでも犬は、まるでこちらの歩きをトレースするみたいに、やっぱり同じ距離で付いてくる。

「ちょっと怖いな…」

そう思って今度は走ってみた。ランドセルが揺れて、息が切れるくらいのスピードで走った。角を曲がって振り返ると、犬はまた同じ距離にいた。走って追いかけてきたというより、振り返るとそこにいる、という感じだった。

途中で電柱の影に隠れたり、他人の家の塀の裏に身を潜めたりもした。隠れて数秒後、そっと顔を出すと、犬は道の真ん中に立ってこちらを見ていた。まるで「見つけたよ」と言われているようで、背中がゾワッとした。

距離にして1キロ以上、時間にすると30分以上は続いたと思う。その間、犬は一度も吠えず、近付きもせず、ただ黙って一定の距離を保って付いてくるだけ。その静かさが逆に怖かった。

僕の家がもうすぐそこに迫った頃、急に空が暗くなって、ポツポツと雨が降り始めた。
すると犬がピクッと耳を動かしたのが見えた。次の瞬間、犬はくるっと向きを変え、来た道の方へ向かって走っていった。まるで雨に濡れたら死んでしまうような、迷いのない動きだった。

僕はそのまま家に急いだ。
玄関を入ってからも、しばらく心臓がドキドキしていたのを覚えている。

家族に話すと、「野良犬がついてくることはあるよ」と言われた。でも、僕の中にはそれだけでは腑に落ちない点が幾つも残っている。

僕が歩こうが走ろうが、その速度に関係なく、一定の距離を保って付いてくるのもそうだし、隠れても必ず見つけられた。それに吠えも威嚇もせず、ただ黙って付いてくるのも変だし、雨が降りだした瞬間まるで興味を失ったように躊躇せず走り去るのもおかしい気がする。

どれも絶対に有り得ないことではないけど、その全部が少しずつ違和感があって、子どもだった僕には気味悪く思えた。

その後、同じ道を何度も通ったが、その犬を見かけることは二度となかった。近所の人に聞いても「そんな犬は知らない」と言われた。あの日だけ、突然現れて、突然いなくなった。

今思えば、怖いというより「なんだったんだろう?」という不思議に思う気持ちの方が強い。
ただの野良犬だったのかもしれないし、子どもだった僕が必要以上に不安を感じただけなのかもしれない。でも、あの一定を保つ距離感もそうだし、吠えも威嚇も、アクションの全くない静けさは今でもはっきり不気味な感覚として残っている。

あの日の犬が何を考えていたのか、なぜあれほどしつこく付いてきて、なぜ雨が降ったとたん走り去ったのか。その理由は今でも分からないままだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました