【怖い話|実話】短編「一家団欒」不思議怪談(兵庫県)

【怖い話】実話怪談|短編「一家団欒」不思議体験談(兵庫県)
投稿者:さおチャイ さん(33歳/女性/会社員)
体験場所:兵庫県姫路市の〇〇霊園と実家

20年ほど前のこと。

私が12,3歳の頃、母方の祖母と二人で、祖母の先祖のお墓参りに行ったことがありました。

祖母は三人の姉がいる四姉妹の末っ子でしたが、二人の姉は戦時中に亡くなったということだけは聞いていました。

お墓に手を合わせ、亡くなった二人の祖母の姉、そして祖母のご両親のことを思いながら、(私の祖母は長生きさせて下さい)と、私は真剣にお願いしました。

墓参りを終えたその夜のことです。

眠っていた私はその寝苦しさに目を覚ますと、喉に何かが詰まっているような苦しみを覚えました。

思わず喉に手を伸ばそうとするのですが、体が全く動きません。

何もできないまま身悶えていると、しばらくして、次第に喉の痛みは和らいでいきました。

今のは一体何だったのか、ハーハーと涙目になりながら呼吸を整えている内に、先程までの息苦しさに疲れたのだと思います。いつの間にか私は再び寝入っていました。

朝になって、私はゆっくりと目を覚ましました。

昨夜の苦しい体験の後、再び眠りに就いた私は、どういうわけか、とても穏やかな夢を見ていました。

それは、優しくて温かい、少し懐かしくも感じる奇妙な夢でした。

穏やかな気持ちで目を覚ました私は、朝食の用意をしていた母に、その夢の内容を話しました。

それは、見たことのない家族の一家団らんの様子でした。

丸い座卓を囲むように、左側には母親がいて、右側には父親がいます。
その間には恐らく姉妹なのでしょう、4人の女の子が並んで座り、家族6人で楽しそうにカードゲームをして遊んでいました。

家族の服装や家の中の様子を見る限り、それは現代と言うよりは、昭和や大正時代の様な、古い印象を受けるものでした。

何を話しているのかは聞こえないのですが、その家族はよく笑って、とても幸せそうな団らん風景でした。

そこまで話し終え母の顔を見ると、その顔色というか表情が強張っていて、「直ぐにおばあちゃんの家に行こう」と言い出したのです。

「え?なんで?」

突然のことに驚いて私がそう聞くと、

「おばあちゃんにも、その夢の話をしてあげて」

そう言われても、全く要領を得ない顔の私に、母は続けて、

「多分、その夢の中の6人家族は、幼少の頃のおばあちゃんの家族だと思うの」

なぜ母がそう思ったのか分からないまま、私は祖母の家に連れて行かれ、改めて夢の話を祖母にしました。

すると、うんうんと、静かに噛みしめるように私の話を聞いていた祖母が、話しを終える頃には大粒の涙を流していました。

祖母はそのまま、おもむろに立ち上がったかと思うと、タンスの奥から1枚の写真を取り出してきたんです。

その写真に映っていたのは、私が夢で見た6人家族の記憶そのものでした。

6人の顔も、座っている場所も、家の中の家具の配置も、全て夢に見た光景と一致しています。

「え?…これって、どういうこと?」

写真を見て唖然とした私は、戸惑いながら祖母に尋ねました。

すると、少し遠くを見るような目で写真を見つめていた祖母が、少し重そうな口を開いてこう言ったのです。

「姉さんが死んでしまったのは、私のせいなの…」

最初にそう言って、続けて祖母が話してくれたのは、戦時中に亡くなった二人の姉の内の、片方の姉の死因についでした。

そのお姉さんというのは、生まれつき体が弱かったらしく、年端もいかない頃から長期入院を繰り返すようになっていたらしいのです。

遊びにも行けないし、お菓子も食べられない姉を、不憫に思った5歳の祖母は、ある日、こっそり自分のお菓子を持って姉の病室にお見舞いに行ったそうなのです。

お菓子と言っても、今みたいに豊富な種類があるわけではなく、祖母が持って行ったお菓子とは、甘く炊いた芋だったそうです。

祖母から芋を受け取った姉は、嬉しそうにそれを食べました。

しかし、既に食べる力も衰えていた姉は、芋を喉に詰まらせ、体も大分衰弱していたこともあって、結局それが最終的な原因となり、その日の夜に亡くなってしまったそうなのです。

「私がお菓子なんて持って行かなければ…」

そう言葉にした祖母は、再び悲しそうな顔をして俯きました。

『自分のせいで姉が亡くなった』、幼い頃から祖母は、そう思い悩みながらこれまで生きてきたそうなのです。

(多分、姉さんは今でも私を恨んでいるだろう…)

お墓参りに行く度にそう思い、申し訳ない気持ちしかなかったと祖母は言っていました。

でも、私が見た夢の話を聞いて、祖母はようやく救われたような気がすると言いました。

「さおチャイ(私)の喉が痛くなったのは、きっと姉さんが来てくれたからだと思う。楽しかった家族団らんの夢をさおチャイにみせて、恨んでないよ、って、私に伝えにきてくれたのだと思うの。」

祖母は泣きながらそう言って、「さおチャイ、喉痛くして悪かったね~。ありがとね~」と、私の頭を撫でてくれました。

お姉さんが亡くなったのは、その当時の私と同じ歳だったそうです。
きっと、同い年の私になら伝えられると思って、お姉さんは来てくれたのかもしれません。

その日、私たちは沢山のお菓子を持って、再びお墓参りに行きました。

「さおチャイのお陰で、もう一度、姉さんに会えた気がするよ」

祖母はそう言って、どこかスッキリとした表情でお墓を見つめていました。

私にとっても本当に不思議な体験でしたが、

「もう自分を責めなくていいんだよ」

と、祖母の優しいお姉さんが伝えに来てくれたのだと思うと、心が穏やかになったことを今でも思い出します。

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