
体験場所:埼玉県S市の実家
これは埼玉県S市の実家で実際に体験した不思議な出来事です。
私の祖母は、私が大学に入学した1年目の秋に亡くなりました。
急に足が悪くなってしまった祖母は、自分で歩けなくなってから程なくして亡くなってしまいました。
ですが、その頃は私も大学に入りたての忙しい時期で、父も母も私の学費を稼ごうと必死に仕事をしてくれていましたので、祖母が亡くなってしまったことはとても悲しく寂しかったのですが、中々ゆっくりと祖母との思い出を振り返ることも出来ずにいました。
祖母が亡くなってから半年が経った頃のことです。
その日、祖母の仏壇に目を向けると、いつも燭台に立っているはずの白いロウソクが、その欠片すらも見当たりません。
普段から仏壇のロウソクは短くなったら必ず新しいのに交換していたので、我家の仏壇にはいつも白いロウソクが立っているはずでした。
(あれ?どこに行ったんだろう・・・)
周りを見回しても落ちているわけでもなさそうなので、もしかしたら誰かが燃え尽きた後に交換を忘れたか、もしくは母が掃除するために片付けたのかなと思いました。判然とはしませんでしたが、とりあえず私は新しいロウソクを出して燭台に立てました。
それで次の日、ふと仏壇に目を向けると、またしてもロウソクが丸ごと消えていたのです。
(あれ?昨日出したはずの新しいロウソクは…?)
流石におかしいと思い、父や母に確認しましたが、二人とも口を揃えて「知らない」と言います。
我家ではペットも飼っていなかったので、何かが悪戯したということもあり得ません。
「もしかしたら誰かが火を点けたまま消し忘れて、そのまま燃え尽きてしまったのかもしれないよ」
父はそう言いましたが、仏壇はリビングにありましたので、例え誰かが消し忘れたとしても他の誰かが気付くはずです。
「それでも一応…」
と、父は新しいロウソクを取り出して火を点けると、どのくらいの時間ロウソクの火が燃え続けるのか検証を始めました。
ロウソクの火は数十分経っても赤々と燃えていました。
これだけの長い時間灯っているロウソクの火を、家族全員が見過ごすとはやはり思えません。
(一体どうなってるんだろう…)
とうとうと燃えるロウソクの火を見ながら考えていると、私はある種の催眠状態に陥ってしまったのか、なぜか急に仏壇の裏側を見てみたくなったのです。
一度そう思うと気になってしょうがなく、父と母に協力してもらって仏壇を動かし、その裏側を覗いてみたのです。
すると、家族全員が唖然としました。
そこには、びっしりと埃にまみれた複数の配線コードが乱雑に絡み合い、壁のコンセントに繋がっていたのです。それは今にも埃に引火して火事になってもおかしくない有様でした。
一気に血の気が引いた私たちは、直ぐに掃除をして埃を全て取り除きました。
「危なかった…」
仏壇に隠れたそこは普段意識することもない場所でした。
その惨状を目の当たりにして私たちは心底肝を冷やしたのです。
もしもあの時、仏壇の裏を覗き込んでいなかったら、そう思うと今でもゾッとします。
関係あるのかどうか知りようもないのですが、やはり祖母がロウソクで私たちの注意を引いてくれたのだと思わずにはいられません。
その証拠に、といいますか、実際にあの日以来、ロウソクが突然消える現象はパッタリと止みました。
家族がみんな忙しさにかまけて、家の掃除もおざなりになり、ましてや仏壇の裏の配線やコンセントなど気にしてもいなかったので、それに気が付かせてくれた祖母に私たちは心から感謝しました。
死者からのメッセージはどんな形で届くものなのか分かりません。
もしかしたら気付いていないだけで、あなたの身の回りでも何か不思議なサインが出ているかもしれませんよ。

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