【怖い話|実話】短編「お札の家」不思議怪談(滋賀県)

【怖い話|実話】短編「お札の家」不思議怪談(滋賀県)
投稿者:CAMBA さん(28歳/男性/会社員)
体験場所:滋賀県O市 〇〇の里近辺

私は地元の滋賀県を離れ、愛知県で暮らしている会社員です。
学生時代までを滋賀県で過ごした後、数年前に愛知県へ単身引っ越しました。

この話は、私が学生時代、滋賀県O市の地元で密かに噂になっていた、住宅街の中にポツンと佇む不気味な家を訪れた時の話です。

当時、居酒屋でバイトしていた私は、仕事が終わった深夜から友人達と集まって遊ぶことが多くありました。

その日も、深夜の仕事終わりに友人達と合流したものの「集まったはいいけど、何する?」と、日々の遊びにマンネリを感じていた私たちは時間を持て余していました。

すると、友人の一人が言いました。

「ねぇ。”あそこ”、行ってみない?」」

友人の言う”あそこ”とは、O市の〇〇の里という場所にある、とある家のことでした。
私が幼少の頃から通称『お札の家』と呼ばれ地元で噂されていたその家は、誰もが普段からよく使う生活道路沿いに静かに佇んでおり、近隣に住む人なら必ず目にするような場所にありました。

外見上はそれほど古い家とも思えませんし、中が荒れている様子もないのですが、ただ、人が生活している気配が微塵も感じられず、家の窓には至る所にお札がベタベタと大量に貼られ、その姿は周囲と比べて明らかに異質なものでした。

とは言え、ただ昼間に家の前を通り過ぎる分には「変な家があるな…」という程度の印象しか持たないかもしれません。ですが、深夜にもなると、傍らの並木の葉の隙間から漏れた月明りが、真っ暗い家を照らし出し、チラチラと瞬くように見える窓のお札が何とも薄気味悪く、不気味な雰囲気を醸し出すことは周知のことでした。

暇を持て余していた私たちは、その夜、『お札の家』に向かって車を走らせ始めたのです。
深夜のドライブがてら、車中では他愛もない話をしながら私たちは笑っていました。

目的地の近くまで来ると、その手前に車を停め、そこから『お札の家』まで私たちは歩いて向かいました。
深夜の住宅街を歩きながら、表面上はみんな冗談を言い合って笑ってはいるのですが、『お札の家』が近付くにつれ、正直自分も含め、実は誰もが緊張しながら戦々恐々と一歩一歩を踏み締めていることが分かります。

因みに、実は私、霊感があるとよく言われることがあります。
そこにいる“何か”の存在を感じることもよくあり、そんな時は確かに背中に悪寒が走ったり、また、時にはハッキリとした形で霊と思しき姿を見かけることもあります。

仲間内でも私の霊感は時折話題となり、皆からも私には霊感があると信じられていましたので、その私が『お札の家』を目前に、急に叫び出した時はみんな驚いたと思います。

「これは良くない!何かわからんけど、たぶんヤバい!」

急に背中に悪寒が走り、大量の汗が流れ出した私は、嫌な予感がして大声で皆にそう伝えました。

ですが、言葉とは裏腹に、何故か私は歩みを止めることができず、そのまま『お札の家』に向かって進み続けていました。なぜなのか分かりませんが、自分ではどうすることも出来ず、ただただ自分の『足』に連れて行かれるのです。

「ヤバいのか行くのかどっちなん!?」

友人がそう叫んでくれるまで、私の頭はボーっとしたまま、ただただ足だけが前に進んでいました。
まるで『お札の家』に引き寄せられるような感覚でした。

「…とにかく、離れよう」

そう言って踵を返して車に戻り、私は運転席に乗り込みハンドルを握ると、みんなが乗り込むのを確認して車を急発進させました。

しかし、ホッとしたのも束の間、少し行った先で、私は再び妙な感覚に襲われました。
「ブレーキを踏まなくてはいけない」、意識ではそう思っているのに、なぜか足がアクセルから離れないのです。
「引き返そう」と思うのに足だけはなぜか前に進んでしまっていた、さっきの状態と同じです。

このままでは次の信号で事故を起こしてしまう、そう思うと同時に私は助手席の友人に叫びました。

「足動かんなったから、俺の足、アクセルからどけてくれ!」

「え!?」と驚いた友人は、次の瞬間、私の膝の上に覆いかぶさり、思い切り右足を引き上げた後、サイドブレーキを勢いよく引きました。

急なサイドブレーキで車は横滑りし、道路の真ん中で横向きになったまま停車しました。

以上が私が実際に体験したことです。

あの”頭では分かっているのに体が動かない”という気持ち悪さは、後にも先にも経験することはないと思います。というか、そう願います。
まるで私の体が、私の頭ではなく、『お札の家』からの指示で動いているような…

今回この話をするにあたり、あの日一緒だった友人に、この時のことを聞いてみると、

「地元の誰に聞いても、なぜあの家に誰も住んでいないのか?なぜ窓には大量のお札が貼ってあるのか?それを知っている人が一人もいないんだ。そもそも、あの大量の紙って、本当にお札なのか?それを確認した人も一人もいないんだ…」

友人からそう聞かされて、私は余計にゾッとしてしまいました。
今さらですが、一体私たちが訪ねようとしていたあの『家』は、一体何だったのだろう…

今となっては知る由もないのですが…と言うのも、既にあの『家』は取り壊されてしまっているのです。

ただ、驚くことに、今はそこに新しい家が建っているそうなのです。
『お札の家』の所有者が新たに建てた家なのか、それとも、何も知らずに土地を買った誰かなのか、地元を離れた私としては、今さらそれを確認するつもりもありません。

ただ、綺麗な新居が建ったとはいえ、私はあの場所に二度と近付きたくありません。

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