【怖い話】心霊実話|短編「原因」秋田県の恐怖怪談

投稿者:かな さん(30代/女性/主婦/宮城県在住)
体験場所:秋田県秋田市にある実家
【怖い話】心霊実話|短編「原因」秋田県の恐怖怪談

これは秋田県秋田市の実家で体験した話です。

私の実家は住宅街にあるごくごく普通の一軒家で、もともとは広い野原が広がる場所だったと聞いています。

何の変哲もない家でしたが、姉や私の成長に伴い2階の部屋を増築したことがありました。

これはその頃のお話です。

当時、増築したばかりの2階の部屋が私の部屋としてあてがわれました。
階段を登ってすぐ正面の部屋です。
部屋のドアは換気のために常に開いた状態にしていました。

部屋に入って正面の壁には鏡台を置いていたのですが、この鏡台が少し訳ありの代物でした。

我家の増築が済んだ頃、母の勤める会社の社長夫人が亡くなられたんです。

その遺品整理の際、小さな会社だったので従業員とも仲が良かった奥様の鏡台を、母が形見分けに頂いて来たのですが、それから妙なことが起こるようになったんです。

その頃は私も少し背伸びしたがる年頃だったので、その鏡台を部屋で使うことを母が許してくれた時は、とても嬉しかったことを覚えています。

ある日のことです。

いつものように学校に行く前にその鏡台に座って朝の支度をしていると、鏡に私以外の誰かが映ったような気がしました。

慌てて後ろを振り返ったものの、目の前には開け放たれた部屋のドアと、その先には1階に降りる階段があるだけで、誰の姿もありません。

気のせいかと思い再び支度に取り掛かると、今度は『ダダダダーッ』と物凄い勢いで階段を駆け上がる音が聞こえたのです。

「えっ!?」

と思って直ぐにまた後ろを振り返ったのですが、やっぱり誰の姿もありませんでした。

音は、とてつもない速さで階段を駆け上がるような音で、人間が走って出るような音には思えませんでした。大勢で駆け上がって来るような、本当に凄まじい音だったんです。

鏡台の椅子から振り返り、そこにポツンと静かに佇む階段を見ていると、じっとりと額に汗が浮かんできて、私は急いで朝の支度を済ませ、そのまま学校へと向かいました。

その夜のことです。
部活でクタクタに疲れて帰宅した私は、今朝の出来事もすっかり忘れ、ご飯も食べずにすぐに部屋のベットで倒れるように眠り込んでしまいました。

その日、生まれて初めての金縛りに遭いました。

深夜であることは間違いないと思うのですが、正確な時間は分かりません。

気が付いた時には目も明けられず、身体の一切が動かせず、意識だけが朦朧とありました。

そして微かに耳に入ってくる音がありました。

それは、知らない女性の苦しそうな呻き声でした。

一晩中その声を聞いていた気もするのですが、ハッと気が付いた時には声は止んでおり、窓から日差しが差し込んでいました。

夢でも見ていたのかと思ったのですが、朝ごはんの際にこの話を家族にすると、姉が驚いた顔をしてこう言ったんです。

「私も…聞いた…」

話を聞くと、どうやら姉もその夜、私と同じ体験をしていたようなのです。

「夢かと思ってたんだけど…」

そう言って、気味悪そうに眉間に皺を寄せる姉も、一晩中金縛りのまま、知らない女の悶え苦しむような声を聞いていたそうなのです。

心霊現象?

二人同時に同じ体験をしたことで、私たちの中で一気にその信憑性が高まりました。

原因は分かりませんが、それが余計に怖くて、その日、霊感が強いという姉の友人Aさんに来てもらうことになったんです。

「おじゃましまーす。」

と言って、目を細めながら恐る恐る我家に入るAさんは、玄関の正面にある2階への階段を登ったところで、更に目を細めてこう言いました。

「この家ってさ、玄関入って正面の階段を上がって、その正面にドアが開け放たれた妹さんの部屋があるじゃない。それで、更に部屋のドアから正面突き当りにあの鏡台があるでしょ…」

そう言って、Aさんは階段を上って直ぐのところから、私の部屋の鏡台を真っ直ぐ指差しました。

「つまり玄関からあの鏡台まで一直線に結ばれていて、そこをすごい数の霊たちが通り道にしてるみたいだよ。私も詳しくは分からないけど、多分あの鏡台の鏡が霊界との出入口みたいな役割を果たしているんだと思う。」

そう言いながら、不快そうな目で鏡台を見つめるAさんの言葉を聞いて、私はハッとしたんです。

先日聞いた『ダダダダーッ』と物凄い勢いで何かが階段を駆け上がってきた音、あれは大勢の霊がこの道を通る音だったのだと…

つまり母親がもらって来た鏡台の配置が、増築した家の構造と偶然にも一致して、心霊現象を生み出す道を作ってしまっていたのです、

とにかく色々と合点が行った私たちは、直ぐに鏡台の場所を移し、玄関と向き合わないように工夫して配置しました。そして鏡を使わない時は、常に鏡台に布を掛けておくことにしたんです。

「これで一安心ね。」

そう言ってAさんは帰って行きました。

でも、その後も夜になると、階段を駆け上がる音は聞こえ続けたんです。
『ダダダダダーッ』という物凄い音。

Aさんの助言は全く効果がありませんでした。

それどころか、加えて他にも妙なことが起こり始めたんです。

鍵のかからない部屋のドアがなぜか開かなくなったり、誰もいない家の中で突然後ろから押されたり、私たち姉妹だけではなく、両親までもそんな体験をするようになったんです。

私たちは鏡台を処分するように両親に言いました。
原因は分かりませんが、この鏡台がうちに来てから妙なことが起こり始めたのは間違いありませんでした。

少なからず、自分たちも奇妙な体験をしていた両親は、まだ少し半信半疑なようでしたが、私たちの要求に根負けしたのか、仕方なく社長の奥様の遺品である鏡台を手放すことに決めました。

それからというもの、今までのことが嘘のように、階段を駆け上がる音は聞こえなくなり、金縛りに遭うこともありませんでした。

それから月日が流れ、姉も私も実家を出ました。

でも、あれから15年以上たった今になり、本当にたまにですが、実家に帰ると聞こえてくるんです。

階段を「ダダダダーッ」と駆け上がる音が…

結局、何が原因なのか分かりません。

もしかしたらあの鏡台は関係なく、私の実家をずっと彷徨っている何かがいるのでしょうか?

それは私の実家が建つ以前からのことなのか、結局何も分からないままなのです。

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