【怖い話|実話】短編「ハイヒール旅館」心霊怪談(北海道)

【怖い話|実話】短編「ハイヒール旅館」心霊怪談(北海道)
投稿者:ネカネ さん(20代/女性/フリーランス)
体験場所:北海道札幌市

これは私が北海道に住み始めて数年が経った頃の話です。

東京に住んでいる友人が北海道を旅行したいと言うので、私たちは札幌市まで2泊3日の温泉旅行に行きました。

札幌市には有名な温泉地が数多くありますが、二人とも人が多い場所は苦手なので、私たちは人里から少し離れた古びた温泉旅館へ行くことにしました。

そこは料金も安く、料理も大変美味しかったですし、何より温泉に入りながらの雪景色も楽しめたので、私も友人も大変満足して旅行を満喫していました。

初日の夜は11時頃に就寝しました。
ですが床に就いて直ぐ、私は不安そうな表情をした友人に起こされました。

「どうしたの?」と聞くと、「変な音が聞こえる」と友人が言うので、耳を澄ましてみると、確かにこの旅館には相応しくない足音が、部屋の外の廊下に響いているようでした。

その旅館では、女将さんをはじめ、旅館の方々、それにお客さんも含め、館内ではみんな足袋を履いていたのですが、今廊下から聞こえるのは、「カッ..カッ..カッ..カッ..」と、まるでハイヒールのような尖った足音。

【怖い話|実話】短編「ハイヒール旅館」心霊怪談(北海道)-1
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不思議に思いながら耳を傾けていると、ハイヒールの音がだんだんと近付いて来るのが分かります。
その音が「カッ..カッ..カッ..カッ」と、私達の部屋の前まで来たかと思うと、カッ..っと、そこで最後のヒール音を鳴らし、どうやら止まったようでした。

私は興味本位で玄関につながる襖を開けようとしたのですが、今にも泣きそうな顔をした友人から「本当に止めて…」と小声で、なのに力強く言われました。

すると、カッと足音がまた動き出し「カッ..カッ..カッ….」と部屋から遠ざかって行ったようでした。

翌朝、朝食を運んで来てくれた女将さんに昨夜のハイヒールの足音のことを話すと、「そういえば、他のお客さんも昨夜変な音を聞いたって言ってましたわ…」と怪訝そうな顔して言うので、私たちはお互いに驚いた顔を見合わせました。

女将さんにこの旅館の事で何か思い当たることはないか聞いてみると、しばらく考えた後で女将さんが教えてくれたのですが、この旅館が建てられるよりずっと前の話、この場所で自死した女性がいて、なんでもその女性はハイヒールを履いていた、って噂とか…そんな事を言うんです。

【怖い話|実話】短編「ハイヒール旅館」心霊怪談(北海道)-2
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震え上がった友人はすぐにでも帰りたがっていたのですが、この手の話に目がない私は、友人に無理を言ってその旅館にもう一泊してみることにしたんです。

その日は昼間お土産を買って、昨日と同じように温泉に浸かり、美味しい料理に舌鼓を打ち、楽しみながら夜を待ちました。友人も同じように楽しめていたのかは分かりませんが…

そしていよいよ就寝という時、私は絶対に映像に残そうとスマホを手に、部屋を暗くして寝たふりをしました。

すると、それから数分後のことでした。

「カッ..カッ..カッ..カッ..」

昨日と同じ、ハイヒールのような足音が聞こえてきました。

私はすぐにスマホの録画ボタンを押して、まずは足音を録音していると、やっぱり昨日と同じように足音が最後にカッっと鳴り止んだのは、どうやら私達の部屋の前。

真っ暗な部屋の中、ドキドキ破裂しそうな心臓を押さえながら、いよいよ廊下にいる誰かを確認してやろうと立ち上がった時でした。

スーっと、ゆっくり襖が開く音が確かに聞こえたんです。

開けたのは私ではありませんし、もちろん怖がりな友人のはずもありません。

えっ!と驚くと同時に、私はすぐに襖の方にスマホを向けて撮影したのですが、辺りが真っ暗で全く様子が分かりません。
思いきって私は暗闇の中、電気のスイッチへ向かって走り、部屋の灯りを付けました。

すぐに襖の方を振り返ったのですが、そこには誰もいません。

ただ、寝る前には確かに閉めたはずの襖だけが、中途半端に開かれていました。

【怖い話|実話】短編「ハイヒール旅館」心霊怪談(北海道)-3
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布団からは友人が怯えた顔で私を見ています。

すぐに私は録画した動画を確認しましたが、確かに聞こえたはずのハイヒールの音は録音されていなし、襖を開けた誰かの姿も暗すぎるせいなのか、それともやっぱり誰もいないだけなのか、全く確認できませんでした。

結局、この不思議な体験は全て謎のままです。

翌朝、旅館を後にして、友人に「また今度来ようね」と言うと、顔を歪ませて「絶対来ない」と言われてしまいました。

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