【怖い話】実話怪談|短編「林間学校の夜」心霊体験談(埼玉県)

投稿者:おまんじゅう さん(33歳/女性/フリーカメラマン/東京都在住)
体験場所:埼玉県 〇〇少年自然の家
【怖い話】実話怪談|短編「林間学校の夜」心霊体験談(埼玉県)

これは、私が小学5年生の時に行った林間学校での出来事です。

私は埼玉県にある普通の市立小学校に通っていたのですが、5年生になると一泊二日で行く林間学校がありました。

自然豊かな場所での集団生活を通し、集団訓練や生活訓練、また体力の向上や健康増進を目的とした行事で、その開催地として私たちの学校が向かった先は「〇〇少年自然の家」という、いわゆる学校行事や合宿等で使われる施設でした。

昼は飯盒炊爨やオリエンテーリング、夜はキャンプファイヤーなどの野外活動が行われ、とても楽しかったことを覚えています。

初日のイベントが全て終わると、各自部屋に戻ります。

寝泊りする部屋は、ゲストハウスのドミトリーのような作りになっていて、左右の壁にはそれぞれ二段ベッドが設置され、奥は2,3畳ほどの小上がりになっていて、布団を敷いて一人寝られるぐらいのスペースがありました。

部屋割りは、もちろん男女別で、4,5人の班に別れるのですが、私の班は5人グループでしたので、二つの二段ベッドの他、一人はこの小上がりスペースに布団を敷いて寝ることになります。

私以外のみんなは二段ベッドが希望のようだったので、特にこだわりのなかった私が小上がりに布団を敷いて寝ることにしました。

そして、いざ就寝時間を迎えましたが、直ぐに眠る子は一人もいません。

クラスの友達と同じ部屋で過ごす林間学校の夜は、私たちにとっては非日常で、興奮して直ぐになんて眠れるはずもありませんでした。

暗くした部屋で、みんなで普段話さないようなことも色々話したりして、やっぱりこの時間が一番楽しかっですね。

だんだん話が盛り上がって声のトーンが上がってくると、先生が来て注意されて、それがまた楽しかったりするんですよね。

そうこうしている内に夜も更けてきて、一人、また一人と眠り始めた頃、当時一番仲の良かったミホちゃんという子が私に声を掛けてきました。

「ねえ。一人でそっちに寝てるの寂しそうだから、こっちで一緒に寝ない?」

そう言われて私も嬉しくて、そそくさと枕を持って、みほちゃんのいる二段ベッドの一段目に転がり込みました。

それからしばらくの間、二人並んで、うつ伏せのまま肘を立てた姿勢で話をしていたのですが、少しすると、

「なんか隣の部屋の話し声が聞こえる~」

と、向かいの二段ベッドの一段目にいたリクちゃんが、壁に耳を当ててそんなことを言い出したのです。

「誰の声だろうね~」

なんて、私は他愛のない返事を返して、なんとなくリクちゃんの方を眺めていました。

すると、壁に耳を当てているリクちゃんの後ろ、後頭部辺りに、ぼんやりとした人影が見えたんです。

長い髪の上に帽子をかぶった女性の人影、それがリクちゃんの頭に覆い被さるようにして浮かんでいたんです。

「みほちゃん。ねえ、なんかさ、リクちゃんの後ろに人いない?白い帽子かぶった…」

そう言って、みほちゃんに声をけると、

「いるねぇ。看護婦さんかな~?」

なんて、とぼけた答えが返ってきます。

ああ、やっぱり同じものが見えてるんだ~と思った私も、

「町田先生かな~?髪長いし~」

なんて、おかしなことを言います。

町田先生とは私たちの学校の保健室の先生です。

「町田先生がいるわけないでしょ~」

と、みほちゃんからゆるく突っ込まれ、

「ああ~そうだよねぇ~」

なんて、今考えると二人とも、いるはずのない不気味な影を目の前にしているにも関わらず、どうも間の抜けたおかしなやり取りをしていたと思います。

日常とは少し違う、林間学校の夜の空気がそうさせたのか、私たちは特に怖いと感じることもなく、その妙なやり取りを繰り返しながら、何時の間にか眠っていました。

翌日の朝のことです。

「ねぇ、昨日の夜のこと覚えてる?うちら、看護婦さんがいるとかなんとか話してたの…」

起きて早々、隣にいるみほちゃんがそう言って話し掛けてきました。

「うん?何となくね…」

寝起きに話し掛けられた私は、頭を整理する暇もないまま、ぼんやりと答えました。

「よく考えたらさ、私たちおかしなこと話してない?町田先生だとかなんとか…そんなわけないのに…」

「うん?あっ。そう言えば、確かに…」

まるで夢の記憶のように、昨日の夜に見た映像がぼんやりと頭に浮かんできます。

でも、みほちゃんも覚えているのだから、やはり夢だった訳ではなさそう。

そう思いながら、まだ眠っているリクちゃんの方を見ながら、

「でも、だとしたら、あの女の人の影って、誰だったの・・・?」

朝日を浴びて私たちも正気を取り戻したのか、そこでようやく背筋に寒気を感じたんです。

林間学校の夜に見た、まるで夢みたいにふわふわした怪現象の記憶。

後にも先にも、これまでの人生で私が見た幽霊らしきものは唯一これだけです。

それなのに、どうも間の抜けた反応のまま寝落ちしてしまった私たち。

折角ならもっと怖がっておきたかったな、と、今となっては少しもったいない気がしています。

ちなみに、女性の影が頭の上に浮かんでいたリクちゃんですが、少なくとも小学校の間は特に何事もなく無事に卒業していきました。

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