体験場所:山形県〇〇市の廃小学校
これは私の知人男性Yさんの体験した話になります。
Yさんは定年退職後、警備の仕事に再就職し、閉館後の施設や学校を巡回、施錠確認を行うお仕事をされています。
最初は先輩警備員と一緒に巡回していましたが、人手不足もあって早々に単独での勤務を命じられました。
通常の業務であれば、まず巡回を終えて異常のないことを確認すると、緊急発報等がない限りは乗ってきた車で時間まで待機、勤務時間終了後に帰宅という流れです。
夜間警備の性質上、施設の電気設備は使わず、手持ちライト、又はヘッドライトを装着して巡回します。
もし不審者等に出くわした場合に備え、ベストを着用して警棒を携帯するため、巡回時は誰もいない音もない空間に、自分の足音と装備品がぶつかり合う音だけが響き渡るそうです。
基本的には施錠確認さえしっかりしていれば変わった事などそう起こることもなく、Yさんは年相応に楽な仕事だと満足しているようでした。
そんなある日、先輩警備員の退職に伴いYさんの巡回経路が変更され、取り壊し予定の廃小学校を担当することになりました。
予算の都合で工期が決まらず、最後の卒業生を送り出して廃校になってから4年ほど経過している廃小学校でした。
市街地からは車で30分、深い山間の峠道を抜けた先にその廃小学校はありました。
道中には街灯もなく、車のライトだけを頼りに向かうことになります。
廃小学校の防犯設備はやはり古いままで、もちろん送電もされていないため侵入者があっても自動発報することはなく、Yさんの巡回による確認だけが異常を察知する唯一の手段でした。
そんなセキュリティの施設ですので、巡回の度に野生動物が侵入した形跡や、若者が肝試しにでも訪れたのか、タバコや飲み物のゴミが散乱していることも度々あり、外部から誰かしら出入りしているのは間違いなさそう。
それらが確認された際は、先輩警備員からの引継ぎ資料にあった通り、どの部屋に何があったかを写真で記録し、報告書と共に会社に提出することになります。
施設がどこかしら破損していた場合は、取り壊しが決まっている建物ですので補修を行う必要はなかったそうですが、何か変化が確認された時の報告だけは逐一必要でした。
ただ一点だけ、報告の必要なしとされている事項が引継ぎ資料に記載されていました。
「言葉で説明できない現象を除く」
Yさんは淡々と語ってくれました。
Yさんが車で廃校に到着すると、電気の点いている教室が外から見えるそうなのです。前述したように、既に送電は止まっています。
校内を巡回していると、Yさんの足音に重なるように、別な足音が聞こえるそうです。
教室内に入った時は、まるでYさんを歓迎するように机や椅子を引きずる音がするそうですが、目の前にあるそれらは整然と並んだまま全く動いていないそうです。
最上階を巡回している時は、さらに上階から走り回るような音が聞こえたり。
廊下の向こうに電気が点いている教室が見えたので、確認のためにYさんが近付くと、煌々と点灯していた電気が何度か点滅した後に消灯するとか。
これら全ての現象が、巡回の度に必ず発生していたそうです。
報告のために記録しようと電気の点いた教室を撮影しても、写真には暗い教室が写るだけで、それは何度撮影しても一緒なのだとか。
音を録音しようとしても同じで、何度繰り返してもやっぱり録れないそうなのです。
証拠が残せないそれらの事象は「説明出来ない現象」に該当するため、報告が出来ないことをYさんは悔しく思っているのだとか。
そんな体験のあとYさんは、その廃小学校の前の担当者で、現在は退職してしまっている先輩警備員に連絡を取ろうとしましたが、今も連絡はとれないままなのだそうです。
ただ、その先輩警備員がYさんを自分の後任にと指名したのだそうです。
Yさんが適任だと。
確かに分かるような気がします。
私の目の前で、一般的には、にわかには信じ難い現象を当然のように語り、その証拠が掴めずに会社に報告できないことを、歯がゆそうにして心から悔しがっているYさん。
もしかしたら、一番怖いのはYさんのような、最近私はそんな気もしてるのです。
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