【怖い話|実話】短編「残兵の一撃」心霊怪談(千葉県)

【怖い話】心霊実話|短編「残兵の一撃」千葉県の恐怖怪談
投稿者:爪痕三 さん(30代/男性/広告デザイナー)
体験場所:千葉県M市

それは私が高校生の頃、冬の時期だったと思います。
友人4人でボーリングに行った帰りの出来事です。

夜の11時頃でしょうか。
いつもつるんで遊んでいた私たち4人は、その日もボーリング帰りにバイク2台にタンデムして、前後に並んで走行していました。私は前方を走るバイクの後ろに乗っていました。

目的地の友人宅まであと2キロくらいの辺りで、いつも通り大通りから小道に曲がり、そのまま街灯の少ない田んぼ道に入って行きました。

ひと気のない夜中の田んぼ道はとても静かで、バイクに乗りながらでも、私たちの会話する声がどこまでも響くように感じていました。

そんな時でした。
その先にポツンと光る街灯の下あたりに、道のど真ん中に立つ男性の姿が目に入ったんです。

私は直ぐに運転している友人に「前見て!人がいる!」と知らせました。

友人も気付いていたのでしょう。
少し減速してゆっくりと男性の前を通り過ぎようとしました。

すると突然、その男性は持っていた1mくらいの棒のようなものを振り上げたかと思うと、そのまま私たちに向けて振り下ろしてきたのです。

「え!?ちょちょちょ!!!」

とっさに友人はハンドルを切り男性を避けるようにかわしました。

その時、私はハッキリと男性の姿を見ました。

旧日本軍のような帽子を被り、緑色の軍服を着た男。
その振りかざした棒らしき物をよく見ると、狩猟で使うような長い銃で、その取手部分の方を先にして振り落としていたのです。

先頭を走行していた私たちは、その一撃をかわした後、すぐに後方の友人バイクに目をやりました。

そこに軍服姿の男は居ませんでした。

「え!?」っと驚いたまま、私たちは後方から走ってくる友人達のバイクを見ていました。

すると、その友人たちのバイクも、何かを避けるようにして慌ててハンドルを切ったのが分かりました。

「あそこ…何かいるのか…?」

通り過ぎた後には男の姿は見えませんでしたが、後方を走る友人バイクも私たちと同じ場所で何かをかわしたのは確かです。

とにかく私たちはアクセルをふかし、急いでその場を離れたんです。

友人の家に到着した後も、先程の体験が信じられず、私たちはすっかり震え上がっていました。

後方を走っていた友人たちも、やはり男性に襲いかかられたと言っていました。
しかもそれが、軍服を着た男だったことを二人ともしっかりと見たと言います。

一体あれは何だったのか?
考えて分かるような類のものではないことは、私たち全員が理解していました。

すると、一人の友人がこんなことを言い出したのです。

「さっき走っていた田んぼってさ、脇の方に戦時中に使われていた防空壕が幾つかあるの、知ってる?そのほとんどが今では農器具とかの保管場所になってるんだけど…一つだけ、なんにも使われていない防空壕があってさ。なんでか分からないんだけど、そこには今も常にお供え物とかが置かれててさ…その防空壕があるのが、さっき俺たちが襲われた場所、丁度あの辺りなんだ…」

私たちは息が止まったみたいに暫く黙り込んでしまいました。

私たちが見たものは、その防空壕にまつわる旧日本軍の亡霊だったのでしょうか?

だとしても、なぜ私たちが…

その日はもう帰宅など誰も出来ず、友人宅にそのまま泊っていきました。

その翌朝のことでした。
別の友人から私の携帯に連絡がありました。

「昨日の夜中、事故死があったの知ってる?」

どうやら昨夜、見通しのいい田んぼ道で、道沿いの電柱に一台の車が突っ込んだのだそうなのです。

興奮しながらそう話す友人に、何だか嫌な予感がしたのですが、詳しい話を聞くと案の定、事故があったのはやはり、私たちが昨夜、軍服姿の男に襲われた場所でした。その車が突っ込んだ電柱というのが、どうやらあの男を照らしていた街灯の付いた電柱らしいのです。

車が突っ込んだ後の地面には、何かを避けようとしたようなブレーキ痕があったそうです。

警察では、深夜のことだから居眠り運転ということで処理されたようなのですが…
私たちは、絶対にそうではないと確信しています。

もしも私たちもあの時、男の振り落とした一撃をかわせていなかったら、そしてもし死んでしまっていたら、高校生の行き過ぎた悪ふざけとでも処理されてしまったのでしょうか…

思い出す度にゾッとする体験です。

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