【怖い話|実話】短編「ヤバい葬儀会社」心霊怪談(愛媛県)

英姫県:ヤバい葬儀会社
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投稿者:あおい さん(30代/女性/ライター)
体験場所:愛媛県 某葬儀社 

これは、私の母が愛媛県某市のとある葬儀会社で働いている時に体験した話です。

当時、うちの両親は共働きで、母は一般企業の事務員やバイクに乗って郵便配達など、様々な仕事をしていました。

母は運動神経がよく男勝りな性格で、大抵のことにはへこたれない強い女性です。

ですが、そんな母が一番大変だったと語るのは、葬儀会社のスタッフとして礼服を着て働いていた時でした。

小さい頃から霊感があったという母は、周りの人には見えないものが見えてしまい苦労してきたと言います。

祖母は厳格な人で、自分の娘が幽霊を見たと訴えても、「親の気を引きたくて嘘を付いてるだけだろう」と、全く取り合ってくれなかったそうです。

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やがて母は成長するに連れて、自分にしか見えない気味の悪いものの存在に上手く対処する術を身に着けて行きました。

何を見たとしても怖がって大騒ぎせず、この世にはそういうものもいるんだと受け入れること。

そして、その気味の悪いものたちに、自分が“視える人間”だと悟られないようにすること。

これらを守って暮らせば、他人におかしい人だと思われたり、幽霊に寄って来られたりすることはないと、ある程度の確信を持ったのだそうです

そんな母が葬儀会社で働くことを選んだのは、その会社が地元でも有名な大企業で、お給料が他の仕事とは比べ物にならないほど良かったからです。

充実した母の職歴や知人の紹介があったこともあり、母はその葬儀会社の正社員としてフルタイムで働き始めることになったんです。

葬儀スタッフとしての仕事内容は、母にとってそれほど難しくはなかったそうです。

礼儀作法に対する厳しさや、無事に葬儀を成し遂げるための緊張感はありましたが、葬儀の準備や参列の対応などは、常に他のスタッフと一緒に行うため、葬儀場では一人になることもなく、怖い思いをすることは少なかったそうです。

ただ一つ問題だったのは、備品管理のため一人で葬儀用の倉庫に行く時でした。

葬儀場は街から離れた静かな山裾にあったのですが、隣接して火葬場が建てられており、問題の倉庫はその裏手にありました。

火葬場裏の白い螺旋階段を上った二階にある倉庫には、お葬式で使用する備品が仕舞ってあり、花を生ける花瓶や蝋燭といった小物だけでなく、ご遺体を寝かせる布団等、様々なものが収納されていました。

母は一人でそこに行くのがとにかく嫌だったのだそうです。

でも、霊感があることは職場の人たちに話せないし、研修期間も終わっている身でありながら誰かに付いて来てもらうのも気が引けて、母はいつも一人で倉庫作業に向かわざる負えませんでした。

上司に鍵を渡され倉庫での作業を頼まれる度に、心を乱さないよう母はいつも自分に向かって言い聞かせていました。
十中八九、何か気味の悪いものを見てしまうことは間違いないので、動揺しないように母はいつも深呼吸をしてから倉庫に向かったのだそうです。

倉庫へ向かう螺旋階段を見上げると、母の視界に入る光景はいつも同じでした。

階段の手すりの隙間から、幾つもの青白い顔がこちらを見下ろしていて、母が来るのをじっと待っているのだそうです。

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彼らがこの世の者でないことは明らかでした。

なぜなら彼らの顔は、これまでの葬儀で幾つも目にした遺影の人物たちと、同じだったから。間違いなくこの火葬場で燃やされ、荼毘に付した死者たちだったのです。

あまりにも不気味なその光景に、母は何度も引き返したくなったと言っていました。

でも怖がるような素振りを見せて、自分が“視える人間”だと幽霊に気付かれてはいけません。

死者の視線を一身に浴びながら、ゆっくりと階段を上がり、母は何食わぬ顔で倉庫での用事を済ませるようにしていたそうです。

仕事から帰ってくると、母は必ず玄関に塩を捲き、そのまま直ぐにお風呂場に直行して、身体を清めるようにしっかりとシャワーを浴びていました。
仕事で着る服は私たち家族の服とは別にして洗い、仕事場で使っている文房具や資料は絶対に持ち帰らないようにしていました。

今思えば、あれはよくないものが家までついて来ないように、母なりに気を遣っていたのかもしれません。

本当に怖いことがあった時は、母は一切口を開きませんでした。

なので、母が何も語らず険しい表情で窓の外を見ている時は、「幽霊に気付かれてしまったのかな…」と、当時の私は幼いながらに不安に感じていました。

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母は数年間その葬儀会社に勤めた後、体調不良を理由に退職しました。
私はてっきり幽霊のせいで退職したのかと思ったのですが、本当の理由は別にありました。

経費節約のため、ご遺体を寝かせる布団の手入れを省いたり、葬儀の花を無断で使い回したりしている会社に、母の良心が耐えられなかったのだそうです。

それに、「人が死ぬほど会社は儲かる」と喜んでいる社長の姿も嫌だと言っていました。

その葬儀会社は今でも存在しています。

でも、健康だったスタッフが急に亡くなったり、高給にも関わらず入社した人がすぐに辞めてしまったりで、いつも求人を出しているそうです。

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