
体験場所:茨城県Y市の某踏切
これは私自身の体験談になります。
私は栃木県と茨城県の県境に住んでおります。勤務地も近隣にあり、労働から衣・食・住と、何から何まで近場で済ませる生活をしております。
そんな私が住む地域に、昔から噂される、ある曰くつきの場所があります。
栃木県から茨城県境を走るJR〇〇線、その路線上の私の近所にある踏切では、悲しくも電車事故により数名の方が命を絶っておられるんです。自殺や事故などその原因は様々ですが、数年に一度程度の割合で、死者が発生している踏切なのです。
決して視界が悪いわけでも周囲が薄暗いわけでもないですし、もちろん田舎だからといって遮断機の不整備などがあるわけでもありません。ですので、毎回このような悲惨な事故の話を耳にする度、「…なんでだろう?」と不思議に思ってしまう場所なのです。
そんな曰く付きの踏切で、今から約20年くらい前に体験した話です。
その日、私が勤める会社に新しく入社した新人歓迎会のため、問題の踏切の近くにある居酒屋を利用しました。普段から客入りが良い、いわゆるフランチャイズの居酒屋です。
そこで1次会を終えたあと、私たちは新人を連れて数名で、二次会のために近くのスナックへと徒歩で向かうことにしました。
曰く付きの踏切を渡り、向こう正面のスナックに向かおうとした時、私たちは『それ』を見たのです。
その踏切から距離にして50mくらいのところでしょうか、線路のレール中央に人が1人立っていたんです。
まず先に述べておきたいのは、これが『霊』だとかといったような類のものとは、その時点では微塵も思っていませんでした。
単なる人にしか見えず、ソワソワ動いているのは分かるのですが、こちらに近付いて来ているのか、離れて行っているのか、どこに向かっているのかは分かりかねました。
ただ、実際にそれを見たのは私だけではなく、一緒にいた全員が目視で確認しています。
(あんなところにいたら危ないな…)
そう思っていると、そのうち連れの1人が言いました。
「何か、背負ってないか?」
実際、目を細めて見ると、籠のようなものを背負っているように見えます。
(線路の両脇には普通の歩道(一般道)があるのに…)
なぜあの人影が、暗いレールの上を一人でソワソワ動いているのか、私たちはよくよく考えましたが答えは出ず、「まーいいや」と、それ以上は関わることなく、そのまま2次会のスナックに向かうことにしました。
ですが、そこから30秒ほど歩いた辺りで、
「やはり気になる」
と連れの1人が言い出したのを切欠に、私たちは直ぐに先ほどの踏切まで戻ったんです。
そこで私たちは驚きました。
先ほどまで確かにそこに居たはずの人影が見当たらないのです。
冷静に考えても不思議でしかありません。
そこは辺りが開けており、決して見通しの悪い場所ではありません。
それに線路の脇にはレールに沿うようにして侵入防止の高いフェンスが建っているのですから、あの短い時間で私たちの目の届かない場所まで移動するなんて考えられません。
私たちは慌てて辺りを見渡しましたが、人影はやはりどこにも見当たりません。踏切から線路に侵入して少し奥まで歩いてみましたが、やはりどこにも人影は見当たらず、私たちは電車が来てしまうのを恐れて引き返しました。
狐につままれたような心持でしたが、これ以上さがしても仕方がないので、私たちは怪訝な気持ちのまま2次会に向かったのです。
後になって、あそこが曰く付きの踏切であることを思い出したのですが、それでもあの人影が幽霊だったとはとても思えません。全員が目撃しているわけですし、あのそわそわ動くシルエットはどう見ても人間のそれだったと思うのです。
でもその人影が、ほんの僅かの間に消えてしまったことも事実です。
一体あれは何だったのか、私たちは不思議で仕方ありません。
答えを探せないまま、ただ不思議な出来事として、今も私たちの心と頭の中にハッキリと残っている体験です。
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