体験場所:大阪府I市の学生用アパート
これは私が大学生の頃、大阪府I市で体験した話です。
当時、私が住んでいたのは大学から徒歩10分程の所にある、学生の一人暮らし専用アパートでした。
アパートは二棟に分かれており、一棟は男性専用のオートロック無しの建物、もう一棟はオートロック付きの女性専用の建物でした。
住宅街から一区画外れた場所にひっそりと建っていたアパートなので、その出入りの為だけに使う一本道が大通りから通っていました。
ある日、私は遅番のアルバイトを終え、23時頃に帰路に就きました。
だいぶ遅くなったので、家路を急ぎ、ようやくアパートに続く一本道に入った時でした。
見かけない赤い車が止まっていたんです。
何気なく中を覗くと、とても学生とは思えない中年の女性が乗っていました。
女性はどこか憔悴しているように見えました。
私はそのまま車の横を通り過ぎ、アパートまで直ぐというところまで来た時、今度は男性専用の棟の中から、これまた学生には見えない二人の中年男性が慌てて駆け出してきたんです。
一人はスーツ姿のやつれたサラリーマン風、もう一人はラフなTシャツを着た小太りの男性でした。
どちらも、アパートではもちろんのこと近所でも見かけない人達でした。
二人の男性は私とすれ違うと、そのまま先ほどの赤い車に向かって走っていきました。
どうやら中の女性と知り合いのようでした。
学生アパートには似つかわしくない3人組に不信感を抱きつつも、私はそのまま帰宅したんです。
部屋に戻り、軽い食事やお風呂を済ませると、既に時間は深夜2時を回っていました。
いい加減に寝ようと思い、電気を消してベットに入ろうとした時です。
突然部屋のインターホンが鳴りました。
前述しましたが、女性専用棟にはオートロックが付いていて、来客は通常ロックの掛かった共用玄関から訪ね先の部屋番号を押して、住人にロックを解除してもらいます。
ですが今鳴っている音はそれとは違う、各部屋の扉に付いているインターホンが直接鳴らされた音でした。
「え?どうして?」と深夜の出来事にドキドキしながらも、もしかしたら同じ棟に住む他の住人が訪ねて来たのかもしれないと思い、ドアスコープを覗きました。
そこにいたのは、先ほど道ですれ違ったスーツ姿の男性でした。
見ず知らずの男がソワソワした様子で私の部屋の前に立っていたんです。
先ほどの様子と言い、深夜の時間帯と言い、真っ当な用件で訪ねて来たとは到底思えませんでした。
そもそもなぜ共有玄関ではなく、既に私の部屋の前にいるのかも分かりません。
恐怖と不安に駆られた私は、居留守を使うことにしたんです。
すると男性は、何度かインターホンを鳴らし応答がないことが分かると、今度は扉に備え付けのポストをガタガタと触り始めたかと思うと、その瞬間、投函口のフタが開き男性の顔が見えたのです。
全身にブワッと鳥肌が立ち、私はすぐに息を殺し、投函口から死角になる位置に移動し身を潜めました。
それからしばらく投函口が開いたままになっているのが私の位置からも分かりました。
おそらく中を覗いていたのだと思います。
幸い部屋の電気は消していたため、中の様子は分からなかったと思います。
それが幸いしたのか、少しすると、カタンと投函口のフタが閉じ、カッカッカッと男性が歩き去って行くのが聞こえました。
私はホッとしたものの、しばらくその場から動けませんでした。
突然また投函口のフタが開くかもしれないと思うと、怖くて怖くて堪りませんでした。
その日はもう、まともに眠ることは出来ませんでした。
それからも数日の間、私は不安で不安で堪らなかったのですが、結局その後、あの男性が再び私の部屋を訪ねて来ることはありませんでした。
でも、その間に気付いたことがあるんです。
男性棟のある一室が、なぜか立ち入り禁止になっていたのです。
絶対に開けられたくないのか、扉には金属製の柵をかぶせ、それを釘で打ち止めていました
アパートでは何か事件があったという通達もありません。
同じアパートの住人何人かにも話を聞いてみましたが、誰も何も知りませんでした。
やっぱりあの3人組が関係している事なのか、結局、何も分からないままです。
その後、何事もなく月日は流れ、私はあの部屋に住んだまま無事に大学を卒業することが出来ました。
今考えると、あの時、男性棟から慌てて出て来た男性二人を私が見てしまったから、私の部屋を訪ねて来たのかもしれないとも思うのですが…
でも、それにしてもどうして私の部屋が分かったのでしょう…?
それにどうやってオートロックの掛かった共有玄関をかい潜ってきたのか…?
誰かアパートの住民に手引きした人がいたのでしょうか?
全ては謎のままです。
でも、今もドアに備え付けの郵便ポストを見ると、誰かの目が覗いてくる気がして、ブルッと身震いしてしまいます。
もしあの時、ポストから覗く目に見つかっていたら、私は一体どうなっていたのでしょうか。
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