体験場所:山梨県N市の某コンビニ
これは私が、地元の山梨県N市のコンビニで体験した不思議な話です。
その日、私は母と兄と3人で、兄の運転する車に乗り込み買い物に出掛けていました。
その日は大分帰りが遅くなったのですが、我家では買い物帰りにいつも立ち寄るコンビニがあり、その日もやっぱり習慣のようにそのコンビニに立ち寄りました。
時間は既に夜中の1時頃だったので、他にお客さんはいないみたいで、駐車場には車が1台もありませんでした。
店の入り口のすぐそばに車を止めた兄は「俺は別に買うものないから車で待ってる」と言うので、私と母だけ車を降りて店に入りました。
店内にもやっぱりお客さんは一人もいませんでした。
入店してすぐ、母が「ちょっと先にトイレに行ってくるわ」と言って、店の奥のトイレに小走りで向かって行きました。
店内の商品を見ながら母の用が終わるのを待っていると、そのうち私もトイレに行きたくなってきました。
母が出てくるのと交代で「ちょっと、私も。」と言ってトイレへ向かうと、背後から「じゃあ飲み物見てるね」と母の声が聞えました。
その店のトイレには大きな鏡が設置されていて、私はいつも用を足した後、その鏡を見ながら髪や服を整えるのが習慣でした。
その日も当然そうしていたのですが、ふと、鏡に映る自分の顔を見た時、『顔が…変…』と感じました。
顔色とかメイクがどうというわけではなく、見慣れているはずの自分の顔が、なぜか自分の顔のように思えなかったのです。
(この人は誰だろう…)
そんな感覚でした。
なんだか自分自身に違和感を感じながらも、まあ気のせいだろうと思いトイレを出ました。
飲み物を見ていると言っていた母を探し、トイレを出てすぐ右にある飲み物コーナーを覗いてみましたが、そこに母の姿はありませんでした。
いつもより少しトイレが長くなってしまったので、別のコーナーを見に行ったのだろうと思い、私は母を探して店内を歩きました。
飲み物コーナーの隣には日用品の通路、その隣はお菓子の通路、更に隣はカップラーメンの通路、パンの通路、デザートや弁当の通路と、6通路に分かれている大きな店内を順番に見て回りましたが、母の姿はどこにもありませんでした。
「あ?レジ前の方かな?」
そう思って、まだ見ていなかったレジ前の通路も覗いたのですが、やっぱり母の姿はありませんでした。
もしかしたらお互いに移動していて、たまたま出会えないだけかもしれないと思い、私はもう一度店内をぐるぐるぐるぐる歩き回ってみましたが、やっぱりどこにも母がいないんです。
(ここにもいない…ここにもいない…。)と、随分と長い時間、店内を歩き回ったところで私はようやく気が付きました。
「母は特に買うものが無かったので、先に車に戻ったのではないだろうか?」
そう思って、私は店内のガラス窓から車の方に目を向けました。
「あれ?車が…ない…?」
おかしいのです。入り口のすぐ前に止めてあったはずの兄の車が見当たらないのです。
「え?…どうして?…車は?…お母さんは?…私だけ置いて行かれたの?」
そう思って、すぐに店を飛び出し外に出た瞬間、
「・・・あれ?」
やっぱり、店の直ぐ前に車は止まっていました。
助手席に母の姿はありませんでしたが、運転席には不思議そうな顔でこちらを見ている兄がいました。
車に近付くと、兄は窓を開けて言いました。
「お前、何やってんの?」
「お母さん、知らない?」
「え?あそこにいるじゃん」
そう言って、兄は不思議そうな顔をしたまま、店内のお弁当コーナーを指差しました。
「あれぇ…?」
さっき何度も見たはずのお弁当コーナーに、買い物かごをぶら下げた母の姿がありました。
私は急いで母の所へ行きました。
「はぁ…。よかった!やっと見つけた!」
もしかしたら二度と会えないかもと思った私は、心から安心してそう言うと、母は、
「あら?随分トイレ早かったのね」
と、少し驚いた顔でそう言ったのです。
(え…?私、あんなにお店の中を歩き回ってたのに…?)
なんだか狐につままれたような気持ちのまま、私は母と買い物を済ませた後、車に戻って母と兄にさっきの状況を聞きました。
すると、母は私とトイレの前で別れた後、そのままお弁当コーナーに向かい、買い物かごを持ってお弁当を見始めたら、直ぐに私が現われたと言います。
1分もせずに私が戻ってきてびっくりしたそうです。
兄も車から店内の様子を見ていたそうなのですが、ものの数十秒でトイレから出てくる私を見て、随分早いなと思ったそうです。
すると、私はそのまま店内の入り口近くまで行って立ち止まり、その場でキョロキョロと店の外を見ていたそうなのです。
その間に何度も兄とも目が合っていたそうなのですが、なぜか気付いていない様子なので、車のライトもカチカチさせてみたそうなのですが、それでも気が付く様子はなかったと。
すると突然、外に飛び出してきた私が驚いた顔で車に乗っている兄を見つめたので、ようやく目が合ったと思ったそうなのです。
あんなに長い時間、私は母を探して店内を歩き回っていたはずなのに、兄が見ていた私の様子によると、そんな行動は一切なかったと言います。
私の記憶とは全く違う二人の証言。
決して二人が口裏合わせて冗談を言っている素振りはないんです。
これって一体なんだったのでしょうか?
なぜ私は母や兄を見つけられなかったのか?
というか、店内を歩きまわっていた私の記憶の私って、本当に実在したのでしょうか?
兄が見た、店内でキョロキョロしていた私って、本当に私だったのでしょうか?
正直、もう何がなんだか分からないです。
トイレの鏡に映る自分の顔への違和感。
あれから時間が全て捻じれてしまったような、異次元へ迷い込んでしまったような、そん気がしてしまいます。
もし、母や兄に再会出来なかったら、一体私はどうなっていたのかって考えると、今でもすごく怖いです。
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