【怖い話|実話】短編「お洒落好き」心霊怪談(東京都)

【怖い話】実話怪談|短編「お洒落好き」心霊体験談(東京都)
投稿者:もなか さん(30代/女性/会社員)
体験場所:東京都渋谷区原宿駅近辺

これは十年以上前の話になります。

当時、私は原宿の竹下通りによく足を運んでいて、少なくとも週に一度、毎週日曜日には確実に訪れていたと思います。

それは暑い日だろうが寒い日だろうが関係なく、天候にも左右されず、「行きたい」と思った時には絶対に我慢せずに行っていました。

それくらい、流行や最新のファッションに強く惹かれる年頃だったのかもしれません。

その日曜日は、夏も終わりに近づいた少し涼しい日で、季節の変わり目のせいか朝から小雨がシトシトと降っていました。

私は友人との待ち合わせ場所に向かい、原宿駅の表参道口から竹下通りへと向かう下り坂を歩いていました。

すると私の向かう先、目の前の方から、やたらと目立つ女性がこちらに向かって歩いて来るのが目に入りました。

真っ赤なジャケットに真っ赤な膝丈のタイトスカート、それに真っ赤なヒールとハットを被り、全身を全て赤でコーディネートした長身の女性。

その雰囲気を例えて言うならまるでモダンガールといった感じで、当時のファッションにはないレトロ感があったように思います。

原宿という場所柄、他にも個性的なファッションに身を包む人は多くいます。

なので、特別その女性を気に留めることもなかったのですが、すれ違おうとした瞬間のことでした。

その女性は突然私の前で立ち止まったかと思うと、いきなりファッションショーさながらのポーズを取り私に見せ付けてきたのです。

片手を頬に寄せ、もう片方の手を空に向けて差し伸べるようなポーズでした。

(…え?…何?)

突然のことで少々驚きはしましたが、私は慌ててその女性を避け、足早に待ち合わせ場所へと向かいました。

(変わった人もいるものだな…)

と、その時は、そんな風に思うだけでした。

合流した友人に先ほど見た女性の話をすると、「変な人もいるんだねw」と、友人も私と同じ感想だったので可笑しくて二人で笑っていました。

その翌週の日曜日のことでした。

また先週と同じ友人と待ち合わせをし、その日も私は原宿駅で降り、竹下通りへと向かって坂道を下って歩いていました。

ふと前方に目を向けた時、行き交う人々の間に、頭一つ抜けた高身長の女性がこちらに向かって歩いて来るのが見えたんです。

先週と同様、全身を真っ赤な服で着飾ったあの女性でした。

流石にまたおかしな事をされても適わないので、反対側の歩道に渡ろうと思った矢先、待ち合わせている友人から着信がありました。
「今、表参道口に着いたよ」ということだったので、私はまた駅の方に戻り、直ぐ近くの神宮橋で合流することにしました。

友人と会って早々「先週話した女の人がまたいたんだよ」と話すと、どうやら友人は興味を持ったようで「私も見たい!」と色めき立って言いました。

正直、私はあまり関わりたくなかったので少し抵抗はありましたが、鼻息荒く「早く行こう」と捲し立てる友人の気迫に押され、渋々、竹下通りへ向かう先程の下り道へと向かったのです。

向かうに連れ、だんだんと駅舎の影に隠れていた坂道が見えてくると、その先の歩道にあの女性がまたポーズを取って立っているのが見えました。

一体誰に対してポーズをとっているのか、行き交う人々は女性に目を向けることもなく歩き過ぎて行きます。あまり関わりたくないと言う気持ちは私もよく分かります。

「ほら、あそこだよ。」

と言って、私は指を差して友人に女性の居場所を示しました。

「…え?…どこ?」

そう言って、友人は私の指の先を追ってキョロキョロしています。

「だからあそこだよ。ほら、あの、坂の真ん中の辺り」

そう言ってもう一度、指を差して教えたのですが、

「え~?どこ~?分かんないよ~」

と言って、友人はさっきよりも首を大きく回して探しています。

あんなにハッキリと見えているのに、全身真っ赤であんなに目立つ服装なのに、あの女性以外に真っ赤な服装の人なんていないのに、どうして分からないのかと思って腹が立ってきた時、私はちょっと嫌な予感がしたんです。

「ね~、やっぱり…どこにもいないんだけど?」

友人は最初こそ楽しげに「え~どこ~?」「どの人~?」と楽しげに道の先に女性の姿を探していましたが、私の指し示す場所には明らかにいないと、どこかで確信したのだと思います。

徐々に表情が曇ってきた友人は「ねぇ、もしかして…」と言った後に、私の嫌な予感を決定付けたんです。

「もしかして…あなたにしか見えてないんじゃ…?」

サーっと一気に血の気が引いた私は、直ぐに友人の手を引いてその場から離れました。

振り返ると、やっぱりあの赤い服の女性は一人でポーズを取っていました。

道行く人は皆、誰も女性を気に留めることもなく通り過ぎていました。

それからも、私は竹下通りへ遊びには行きましたが、原宿駅を利用するのをやめ、あの坂道には一切近付きませんでした。

あの赤い服の女性は一体誰だったのか…
何が目的でポーズを取り続けるのか…
なぜ私にしか見えなかったのか…

その全ては謎のままです。

ですが、私も年齢を重ねるに連れ原宿を訪れることも減り、全く行かなくなった今になって思うことがあるんです。

オシャレな人が集う原宿という街に現れていたあの女性も、ただ普通にオシャレが好きな女性だったんだろうなと。

ポーズを取ったりするのも、やっぱりオシャレした自分を見て欲しいというだけで、他に他意はなかったと思うんです。

それを怖がってしまったことを、今は少し悪いことをしてしまったなと感じます。

原宿という街で、オシャレを楽しんでいた女性。
もしかしたら彼女は、今でも真っ赤な服を着て、あの坂道をランウェイしているかもしれません。

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