【怖い話|実話】短編「安かろう悪かろう」心霊怪談(長崎県)

【怖い話|実話】短編「安かろう悪かろう」心霊怪談(長崎県)
投稿者:マロンステーキ さん(28歳/男性/会社員)
体験場所:長崎県のとあるアパート

私が19歳の時に体験した話になります。

地元の長崎県で就職して1か月が経った頃、私は会社の近くのアパートへと引っ越し一人暮らしをすることになりました。

アパートの間取りは2K。造りは古くとも日当たりは良く、家賃が二万五千円とかなり格安でした。
同じアパートに住む住人は若い方が多いようでしたが、中には五十代の単身男性も複数人住まわれていました。

結局そのアパートには三年ほど住みましたが、その中で少し怖い、とういうか驚いた経験がいくつかありました。

造りの古いアパートでしたので、換気口や窓の隙間から虫が入ってきたり、夜にはヤモリが外窓に張り付いて虫を捕食していたりなんてことは日常的で、そんなことには直ぐに慣れたのですが…

住み始めてから1年半が経過した頃からでした。
部屋の中でラップ音や壁を叩く音、それに外の階段を誰かが登ってくる音などが頻繁に聞えてくるようになりました。

それでも私自身はあまり怖いとは感じなかったのですが、彼女が泊まりに来た際にも同様の現象が起きました。

音を聞いて怖がる彼女に寝ていたところを起こされた私は、

「ああ、また鳴ってんのね」

と、無頓着に返事したところ、余程怖かったのでしょう。私は彼女に激怒されました。

その日は外の階段を登って下りてを繰り返している足音が頻回に聞こえていました。

そのまま電気を点け彼女の説教を受けていると、ピタリと外の足音が治まりました。

ですが、良かったと安心して再び寝ようと布団に入った時、またしても外の階段を上り下りする足音が聞こえてきたのです。

流石に私もイラついてきて、実際に見てみようと思いドアを開け、音のする階段の方に向けて顔を出しました。

しかし、階段には誰もいないどころか、ドアを開ける前まで聞こえていたはずの足音も消えていました。

外に出て少し周辺を見て回りましたが、変わった様子はどこにもありません。

首を傾けたまま部屋に戻ると彼女が言いました。

「ねえ、私の家に行こうよ。ここ、ちょっと怖いよ・・・」

夜中の三時を回っていましたが、私たちは車に乗り込み彼女の家へ向かいました。

その日以降、彼女から説得され、私は彼女の家に連日泊まり込み、そこから仕事に行くようになりました。

彼女曰く、

「あのアパート…何かが起きているっていうか…起きてそうっていうか。変な感じがするの。」

そう言われて私は、

(…何言ってんだこいつは?)

と思いながらも、

「泊めてくれてありがとね」

と、彼女に毎日感謝の気持ちを伝えました。

それから二週間が経った頃、流石に自宅の様子が気になったので、いったん家に戻ることにしました。
すると彼女も一緒に行くと言うので、うっとうしいと思いながらも表には出さず、私は彼女を乗せて車を走らせました。

(不思議な現象が起き始めてから、もう一ヶ月くらい経つんだな~)

そんなことをボーっと思いながら運転し、アパートの近くまで来た時でした。

夜なのに周囲はえらい明るく、アパートの辺りは赤い光で照らされています。

それはパトカーの赤色灯でした。

規制線が張られたアパートの光景は、ドラマでよく見る事件現場そのものでした。

恐る恐る車を降りて、ここの住人だと言って警察官に話を聞くと、一階の一室から中年男性と猫10数匹の腐乱死体が発見され、死後およそ一ヶ月が経過しているということでした。

同じアパートの住人ということで、そのまま私も警察官から事情聴取を一通り受けた後、少しだけアパートの部屋に戻って必要な荷物を取り、そのまま速やかに彼女の元へ撤収しました。

一ヶ月前から私の部屋で起きていた不可解な現象、それが腐乱死体となった男性の死亡推定時期とリンクするという結論を彼女に話すと、彼女は青い顔して驚いていて、私は少しだけ愉快な気がしました。

それから更に一か月後、私は一度アパートに戻り一晩その部屋で過ごしてみましたが、特に不思議な現象は起きなかった事は言うまでもありません。

とは言え、流石に引っ越しを考え物件探しをしている時でした。
今より更に五千円安い家賃二万円の部屋を見つけ、狂喜乱舞してその部屋を確認すると…私は絶句しました。

一ヶ月前に腐乱死体が発見された部屋でした。

一番ゾッとした瞬間でした。

背筋が凍るというか、ようやくそれまで起きていた事をリアルに感じたというか、とりあえず、その日は何も行動する事が出来ないくらい悪寒が止まらない一日でした。

結局、私はそのまま更に一年同じ部屋に住み続けた後、ようやく引っ越しました。

その間、家賃が二万円に落ちたあの部屋には若いカップルが住んでいました。
引っ越すまでの間に何度か彼らと声を交わすことがあったのですが、家賃が安くて助かっているという事、二人で楽しく生活しているとの事で、そんな二人の笑顔を見ていると、事実を伝えることは流石にできませんでした。

「安かろう悪かろう」という言葉がありますが、何事も総合的に考えて物を選ぶこと。また、常に困らないくらいの経済力を持っておくこと。
この体験を通して得たこれらの教訓を胸に、私は今も生きています。

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