【怖い話|実話】短編「逃げた理由」心霊怪談(高知県)

【怖い話|実話】短編「逃げた理由」心霊怪談(高知県)
投稿者:周々木さん さん(30代/女性/ジム)
体験場所:高知県K市の某ドラッグストア

私が住む高知県K市の町に、よく通っていたドラッグストアがあったのですが、残念なことにそこのトイレは店外に設けられていました。

わざわざ外に出て行くのが面倒で、いつもはトイレに行きたくても買い物が終わるまで我慢することが多いのですが、その日は我慢できずに、買い物途中なのを中断し外のトイレに向かいました。

トイレに入ると、ガランとしていて全く人気がなく、気を遣わずに幾つかある個室トイレの一つに入ることが出来たのですが、しばらくすると、外から騒がしい話し声を立てながら2~3人の人が入ってきたのが分かりました。

その話しぶりから想像するに、その人達はどうやら私と同じく買い物帰りのおばさん達のようでした。
おばさん達はしばらくの間、個室トイレの外でたらたら話していました。

用が済んだので私は個室から出ようとしたのですが、運悪くおばさん達の声がひそひそ声に変わり誰かの悪口大会が始まったようで、このおばさん達の群れを横切っていくのは気まずいような気がしました。ですので、しばらく待って、おばさん達がいなくなるのを見計らってから出ようかなと悩んでいたのです。

そしたら、外で異変が起きました。
ぺちゃくちゃ喋っていたおばさん達が急に黙り込んだのです。
辺りに沈黙が落ち、外の様子が突然変わったことに私は困惑しました。

すると、少し間をおいて一人のおばさんの「ぎゃ~」という金切り声が耳をつんざきました。
それを追うように他のおばさん達の叫び声が響いたかと思うと、バタバタと外に駆け出していく足音が聞こえました。

再び辺りを沈黙が包みました。

外で一体何が起きたのか分からず、私は混乱したまま慌てて個室のドアを開けました。
瞬く間に起きた異変が何だったのか、おばさん達が何に悲鳴を上げたのかを探るように、私はゆっくりと外に出て辺りを伺いました。

でも、どこをどう見回しても何もありません。
いたって普通の女性用トイレです。

私は首をかしげながら手洗い場に行き、蛇口をひねって手を洗いました。
すると、その腕に何かが落ちてきました。

ぽたっと落ちたそれは、確かに「真っ赤な血」のように見えました。

私は反射的に天井を見上げました。
一度治まった心臓の鼓動が再び高まるのを感じながら、見上げた先は、普通の天井でした。
べっとりと血の跡がこびりついているわけでもなければ、ましてや死体が串刺しになっているわけでもない、至って普通の天井です。

ホッとするのと同時に、私は腕に落ちた血のようなものを慌てて洗い流しました。
でもやっぱり気味が悪いので、早く出ようと濡れた手をハンカチも使わずそのままブンブン振りながら、小走りでトイレを出ようとした時でした。

スカートの裾を誰かにぐいっと引っ張られたのです。

「ひゃぁっ…」

と小さな悲鳴を上げ、私は立ち止まりました。

トイレには私以外誰もいなかったはずです。
それなのに今、後ろから、誰かが私のスカートを抓んで引っ張ている。
私の心臓ははち切れんばかりにバクバクバクバク波打ちました。

息を殺したまま、そーっと後ろを振り返ると、スカートを握る小さな手が見えました。

ゾワっと背筋から頭の先に冷たいものが駆け抜けました。

そのまま首だけを捻って、スカートを掴む小さな手の、その腕の方に向かって視線を上げていくと、そこに小さな女の子の姿がありました。

髪を後ろに結って、ボロボロになった無地の白いTシャツに、しわくちゃで同じくボロの半ズボンを履いた女の子。

今までトイレには絶対に誰もいませんでした。
ましてや子供の声なんて一度もしなかったし、個室から出て周囲を見回した時も自分以外に人の気配なんて間違いなくありませんでした。

明らかに違和感しかないその女の子に、私は震える声で「…離して」と言いました。
怖くて、とにかく早く逃げだしたかったのです。

すると、そっとスカートを掴んでいた手が離れて、子供のすすり泣くような声がしました。

その隙を逃さず私はダーッと一目散にトイレから飛び出しました。
とにかく怖かったのです。

直ぐに店内に駆け込むと私は店員さんを呼び止め、トイレにボロボロの服を着た女の子がいると訴えました。
店員さんは直ぐにトイレに向かってくれましたが、案の定、結局その女の子は見つかりませんでした。

何かの事件性も考えられるからと、心配したお店の人が警察に連絡しようとしましたが、私は咄嗟に「私、疲れていて、それで、見間違えたんだと思います…」と言って、警察への連絡は止めてもらいました。

警察が来て大事になることが嫌でしたし、なにより私には、それが事件とかの類ではないことが肌で分かっていました。
青白く、ぼんやりとしていて、あの女の子には現実味が全くありませんでした。

あの日から、そのドラッグストアへは自然と足が向かなくなりました。

今でもあの子がなんだったのか気になって不安になることがあります。

私が個室の中にいた時、悲鳴を上げて逃げ出して行ったおばさん達に、もしも会えることがあるとしたら、一体何を見たのか聞かせて欲しいと思っています。

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