【怖い話】心霊実話|短編「VS落ち武者」宮城県の恐怖怪談

投稿者:tamoko さん(41歳/女性/アルバイト/宮城県在住)
体験場所:宮城県仙台市 某所
宮城県:VS落ち武者

これは私が勤務先の男性上司であるAさんから聞いた話です。

Aさんは若い頃、仙台市内の安いアパートに住んでいたそうです。

「その安アパートの部屋でさ、俺、妙な体験をしたんだ…」

と、突然Aさんが神妙な顔で私に話してきたんです。

そのアパートのあった場所というのは、普段から私もよく通るところだったので、気になって詳しい話を聞くことにしたんです。

するとAさんはこんな話をしてくれました。

そのアパートに越して来てからしばらく経ったある夜、Aさんは突然金縛りに遭ったのだそうです。

しかも、その日から金縛りは毎晩続くようになったのだと…

金縛りに掛かると、普段Aさんは横向きの態勢で寝る癖があるそうなのですが、それが強制的に体を仰向けにさせられるのだそうです。

金縛りに掛かっている間は、余りの恐怖にいつも目を堅く瞑っていたそうなのですが、ある夜のこと、その日のAさんは何か違っていたのでしょう、金縛り中にふと目を開けてみたんです。

すると、目の前の宙を、何人もの落ち武者が列を成し、部屋を斜めに横切っていくのが見えたそうです。

血を流しながら、力なく歩く落ち武者の一団。

余りにも奇妙な光景に、Aさんは怖がるより先に、その様子に見入ってしまったのだと…

足を引きずる者や、肩を担がれて歩く者もいて、その一団が行進する様子は極めて困難に見えたそうです。

一団は、部屋の端まで歩き切った者から順に壁の中へ消えて行き、最後尾の落ち武者が壁に吸い込まれたところで、ようやくAさんの金縛りも解けたのだそうです。

落ち武者の一団が消えるまでどのくらい時間が経ったのか、Aさんも定かではないようで、長くも感じるし、短くも感じる、そんなあやふやな感覚だったと…

とは言え金縛りの間は眠れないらしく、それが毎晩続くとなると、さすがにAさんも寝不足で調子が悪くなり、昼間の仕事にも支障が出るようになりました。

そんなある日、睡眠不足のため、毎日昼休みは昼寝ばかりしているAさんの姿を見た会社の先輩が、心配して声を掛けてくれたんです。

「A、大丈夫か?」

「大丈夫です。ちょっと寝不足気味で…」

そう言って、力なく笑うAさんの顔に、先輩は余計に心配したのでしょう、

「ほんとに大丈夫か?A、なにか困っているなら言ってみろ」

そう優しく声を掛けてくれたんです。

その言葉にAさんもほだされて、信じてはもらえないと思いながらも、金縛りや落ち武者の事を全て先輩に話してみたんです。

すると先輩は、眉間に皺を寄せながらこう言いました。

「そうか、それは大変だったな。」

意外にも、荒唐無稽なこんな話をあっさりと信じてくれた先輩でしたが、続けてこんなことを言うんです。

「でも、体を仰向けにされなければ、そもそも落ち武者なんか現れないんじゃないか?それなのに強制的に仰向けにされている時点で、お前は霊に負けてるんだよ!負け続けてたら一生寝不足だぞ!」

そう言って先輩は激励してくれるのですが、

「霊に負けてるって…。負けたくないけど向こうが勝手にしてくるんだから、やりようないっすよ。」

目を見開いてそんなことを言うAさんに、先輩は間髪入れずに、

「闘うんだよ。」

「は?」

「だから、霊と闘うんだよ。」

「ど、どうやってですか?」

先輩の意外なアドバイスに、(何か考えがあるのかも)と、希望を見出したAさんがそう聞くと、先輩は少し考えてから、

「俺は負げねどー!って言うんだよ。」

「はぁぁ?」

もしかしたら呪文やお経とか、何か先輩には秘策があるのかもしれないと、少し期待して聞いていたAさんは、先輩の言葉を聞いて拍子抜けしてしまいました。

それでも、本当に毎晩寝不足で辛かったAさんは、藁にもすがる思いで、先輩の言う通りに実行してみる事にしたんです。

その晩も、いつものように金縛りが始まりました。

いつも通り、横向きに寝ているAさんを、誰かが強い力で仰向けにしようとします。

(ほんとに懲りずに毎晩毎晩…)

毎晩のように繰り返されるこの勝手な仕打ちに、流石にAさんも怒りが込み上げてきて、

「俺は負げねどー!」

と、金縛りの最中で実際に声は出ていないものの、全身で「負げねどー!」と叫びながら、自力で体を横向きに直そうとした瞬間、更に強い力で体を仰向けにされました。

必死に抵抗したのが却って霊を怒らせたようで、更に物凄い力で押さえ付けられたのだそうです。

しかし、Aさんも負けじと更なる心の叫びを上げて抵抗しました。

ですが、霊の力も更にエスカレートしてくるばかり。

攻防は繰り返され、闘いに疲れ果てた頃、いつの間にか霊も帰って行ったのか、気付くと外は明るくなっていました。

やはり霊と闘っても無駄だと知ったAさんは、その日のうちに新しい部屋を探して引越しを決めたのだそうです。

部屋の引渡しの際に、一応大家さんにも金縛りと落ち武者の話をしてみると、

「そ、そうだったんですか…で、でも、そんな、は、話は、始めて聞きますよ。」

と、しどろもどろに言う大家さんの顔は、明らかに引き攣っていたそうです。

(入居時には言われなかったが、おそらく曰く付きの物件だったんだな…)

そう思って、Aさんはアパートを後にしたのだそうです。

真剣な表情でそこまで話してくれたAさんは、

「後から聞いた話だけど、そのアパートが建っていた場所は、昔、罪人の処刑場だったそうだ。」

最後にそう言って、話を終えました。

Aさんからこの話を聞いた後、私は何度かその場所を通り掛かることがありました。

そこにはもうアパートの姿はなく、今では広場のようになっていて、いつも近所の子供達が遊んでいます。

ですが不思議なのは、広場ではたくさんの子供たちが遊んでいるのに、ある一角にだけは全く子供が近付かないんです。

恐らくあそこがAさんの部屋があった場所なのだろうと思うと同時に、私は霊感がないので分かりませんが、敏感な子供達は何かを感じ、あの一角を避けているのだろうなと、ちょっと不思議なその光景を、私はしばらく眺めていました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました