体験場所:神奈川県川崎市
これは自分の中学時代の話です。
中学2年生の頃、自転車で塾へと向かう途中、暗くて人気のない道を通らなければなりませんでした。
週2回、塾のある夜、そんな薄気味悪い辺鄙な道を通る度に、いつも同じ時間、同じ場所ですれ違う謎のおじさんがいました。
「なぜこんな道を?」と最初の頃は思いましたが、もはや毎回の事なので、怖いとかそういう感覚はなく「この近所に住んでいる人なのかな?」くらいの印象で、ほとんど気にも留めていなかったです。
ですがある日、そのおじさんから、
「こんばんは」
と、挨拶されたんです。
自転車に乗っていたのと、ちょっとビックリしたのもあって、その最初の挨拶は無視してしまいました。
ただ、それ以降は毎回すれ違う度に「こんばんは」と挨拶されるので、こちらもペコッと軽く会釈して返すようにしていました。
そんなやりとりが何度も続いていたある日、たまたま友人と二人で一緒に塾へ向かう事がありました。
自転車に乗って友人と二人、例の薄暗い道を走っていると、いつものように謎のおじさんが現れて「こんばんは」と自分達に挨拶をしてきました。
いつも通り自分は軽く会釈をして通り過ぎました。
しかし友人は、そのおじさんの方を全く見向きすることもなく通り過ぎて行きました。
塾に到着して友人に、さっき道ですれ違ったおじさんの挨拶をなぜ無視したのか聞くと、
「そんなおじさんはいなかった」
という返答が返ってきて驚きました。
(あんなにはっきりと挨拶されたのに?きっと見逃したのだろう…)と思うことにして、違和感はありましたが、その日はそれ以上友人に詰め寄ることはしませんでした。
それから数日が経っても、自分の中になんだかモヤモヤした気持ちが湧いていました。
この前の友人の一件で、いつもすれ違う謎のおじさんのことが、どうしても気になったからです。
その日、同じ友人に「もう一度、この前と同じ時間に一緒に塾に行こう」と言って誘いました。
そうして二人で自転車に乗って問題の道に差し掛かった時、やはり謎のおじさんは現れました。
「こんばんは」と挨拶をしてきたおじさんに、自分はまたいつも通り軽く会釈をしたのですが、友人は案の定おじさんのことを完全無視で通り過ぎました。
自分は咄嗟に急ブレーキをかけて、友人を呼び止め言いました。
「今、おじさんとすれ違ったよね?」
すると友人は眉をひそめ「え?誰もいないって」と発言。
それを聞いて一瞬背筋がゾクッとしましたが、急いで友人を連れてさっきおじさんがいた場所に戻りました。
そこにはもう、おじさんの姿はありませんでした。
きっと家に帰ったのだろうと、その日も解消されないモヤモヤを抱えたまま塾へと向かったんです。
次の塾の日、同じ道を通りながら「またあのおじさん居るかな?」と、内心ドキドキして自転車を走らせていたのですが、あんなにいつもすれ違っていたおじさんに、その日初めて出会うことが出来ませんでした。
何だか違和感はありましたけど、「今回はたまたまだな」と判断し、その日はそのまま塾への道を急ぎました
それ以降、謎のおじさんに会えることはありませんでした。
単なる引っ越しとかで居なくなったのか?
それとも自分がおじさんの存在を疑ったことが原因で消えてしまったのか?
結局それ以降、あの謎のおじさんとは会えないままで、なんだか今でもすごく不思議な感覚だけが残っています。
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