【怖い話|実話】短編「部室荒らし」不思議怪談(長野県)

【怖い話|実話】短編「部室荒らし」不思議怪談(長野県)
投稿者:アタックマン さん(30代/男性/会社員)
体験場所:長野県 某私立高校

サッカーの日韓ワールドカップ一色だった2002年。当時、高校3年生だった私が所属していたサッカー部は、練習用の服装は自由だったこともあって、部員の誰もが憧れの国のユニフォームを着て練習に参加していました。

それは周辺高校でも同じだったようで、世界中のチームのユニフォームを着て練習するというのが近隣のサッカー部で流行っていたようでした。

しかし、そんな流行があったせいか、それと同時期に巷の全ての高校サッカー部ではユニフォームが盗まれる事件が頻発し、通称「部室荒らし」と呼ばれていました。

実行犯は部員なのか他の生徒なのか、はたまた外部の人間の犯行なのか、ほとんどの事件でそれが分かる事はありませんでした。

ただ、実際にユニフォームを盗まれた生徒にとってはたまったものではなく、その被害者が損害を取り戻すように他校で部室荒らしをする、という負の連鎖も実際に繰り返されていました。

そんな状況下で私は、自分の持ち物をちゃんと管理できていない側にも落ち度があると思っていて、毎日ユニフォームを持ち帰っている自分は大丈夫だと過信していました。

ただ、その日1日だけ、私がユニフォームを部室に忘れてしまったその日に限って、ドンピシャで部室荒らしが発生し、結局私もその被害に遭ってしまったのです。

最初はユニフォームを忘れた自分に腹が立ちましたが、徐々に日を追うごとに「なんで俺のユニフォームを盗るんだ!」と悔しい気持ちが高まり、それはやがて「俺はもっと価値の高いユニフォームを手に入れてやる!」という欲望に代わり、結局、いつの間にか自分も部室荒らしを決行するという決意が湧いていました。

そこで同じく部室荒らしの被害に遭った友人に声を掛け、二人で一緒に他校の部室荒らしをしてやろうという事になりました。

標的は古くからの伝統あるサッカー強豪校、A高校に決めました。

事前に部室の場所や鍵の隠し場所などを下調べし、一週間後の夜に決行することにしました。

決行当日、時刻は夜の10時を回っており、もちろん校内には誰もいないし、真っ暗で音一つありません。

これは楽勝だなと、いとも簡単に部室前に到着し、さて物色しようと鍵の隠し場所を探りましたが、鍵がありません。

おや?と思い、周辺も探してみましたがどこにも鍵が見当たりませんでした。

仕方ないので窓から侵入しようと窓に手を掛けると、驚きました。

窓には鍵が掛かっておらず、スーッと簡単に開いたのです。

きっと鍵を締め忘れたのだろうシメシメと、運にまで味方されていると強気になりながら、室内をライトで照らしました。

明かりの先には、キレイに整理された各国のユニフォームが大量にありました。

その光景を見て友人と歓喜、「俺はアルゼンチンがいいな」「じゃあ俺はイングランドだな」などとユニフォームを選んでいると突然、

ガラガラガラ…ピシャン!

勢いよく窓が閉まる音が聞こえました。

「・・・えっ?風も無いのになんで?」

「ひと気も全くなかったよね?」

と、友人と暫く呆然としていましたが、ふと我に返ると急に恐ろしくなり、急いで部室のドアを開け走って学校を出ようとしました。

しかし、それを皮切りに周囲の空気がガラリと変わり、辺りで不可思議な現象が起こり始めました。

遠くの駐輪場の方から自転車のベルがリンリンと聞こえ、風もないのに向こうの方から誰も乗っていないスケートボードがゆっくりこちらに向かってきたり。

友人とヤバイヤバイと焦りながら、とにかく全力で走り、やっとの思いで乗ってきた自転車に辿り着き、直ぐにそのままA高校を後にしました。

更に十分ほどがむしゃらに自転車をこいだ先でコンビニに辿り着き、ようやくそこで一息つくことが出来ました。

ハアハアと息を切らせ、疲れ果てていた私と友人は、先程の出来事について話す前に、とにかくまずは汗でベトベトになった体を拭こうとリュックからタオルを取り出そうとした時、気が付いたんです。

二人とも、両方の手の平が真っ黒なのです。

しかもその黒いのから、今まで嗅いだこと無いような酷い臭いがしました。

もうその時点で考えることをやめ、私たちはコンビニで手を洗ってそのまま無言で帰りました。

その後、色々と調べたのですが、A校から何か怪しい曰くなどは見つからず、結局、今思い返してもあの時の現象が何だったのか、見当も付かないままです。

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