【怖い話|実話】短編「光る石」不思議怪談(高知県)

【怖い話】不思議実話|短編「光る石」高知県の恐怖怪談
投稿者:N橋A子 さん(30代/女性/事務職)
体験場所:高知県高知市の某公園

仕事が休みだったその日、私は友人と一緒にお出かけする約束をしていました。前日からすごく楽しみにしていたのですが、当日になってその友人から、夜勤明けで体調を崩してしまったと、突如ドタキャンの連絡が入ったんです。

急に暇になってしまった私は、誰か空いている人はいないか他の友達にも連絡を取ってみたのですが、みんな忙しいらしく、せっかくの休日を一人で過ごすことになってしまったのです。

仕方なく午前中は家でゴロゴロしていたのですが、さすがに無駄な時間に嫌気がさし、とりあえず近くの公園まで歩いてみることにしました。

お気に入りのコートを着て公園まで行ってみると、休日はうるさいくらい子供たちの声が響いているのですが、その日は平日の昼間だったこともあってか、あいにく人っ子一人いない静かな公園が広がっていました。

来てみたものの一人ではすることもなく、結局暇を持て余した私はベンチに座ってスマホを触りつつ、ボーっと過ごしていました。

そんな時でした。
私がアレを見つけてしまったのは…

それは「光る石」でした。

私が座っていたベンチの下に、真っ黒で光沢のあるその石を見つけたんです。

なぜ「光る石」と呼ぶのかと言うと、足元に落ちていたその飴玉くらいの大きさの丸い石を拾い上げ、太陽にかざしてみると、嘘みたいにキラキラと黒く輝いて、本当に「光る石」のように思えたんです。

普段なら石ころに関心を持つことなんてないのですが、なぜか私はその石を手放すのが惜しくなり、そのままコートのポケットに突っ込んだのです。

結局その日は公園帰りにコンビニに寄っておやつを買って帰るという、大変つまらない一日を過ごしてしまいました。でも、その石を拾ったことで、何となく満足感を得ている自分が不思議でした。

その日からでした。
私の身の周りで不思議と良いことが起こるようになったのは…

ずっと欲しかった手に入りにくいブランドバッグが偶然入手できたり、いつもなら売り切れている時間帯に大好物の総菜屋のコロッケが残っていたり、友達からほぼ新品のヘアアイロンをタダで譲ってもらったり、極めつけは、いつも仕事帰りに寄るスーパーの福引きで二等のゲーム機が当たったのには流石に驚きました。

一つ一つの出来事は大したことないと思うかもしれませんが、そんな小さなラッキーでも、一度にこんなに続くなんて今までなかったので、「最近ついてるな」と自分でも思っていました。

そんな風に小さな幸運に恵まれた毎日を送っていたのですが、一方で、私の顔色は優れませんでした。

それは、毎日うなされて飛び起きる夢のせいでした。
運が良くなり始めてから毎日のように同じ夢を見るんですよね。夢の内容は起きたらすぐに忘れてしまうのですが、『何かに襲われている夢』だということだけは覚えていました。

それからも運気はとても好調なのですが、なんだか毎日そわそわして落ち着かない日が続きました。
夢のせいで寝付きも悪く、職場の人にも「顔色悪いけど大丈夫?」とか「クマ凄いよ」などと心配されていました。

その日、余りに私の顔色が悪いことを上司が心配し、早退するよう促されました。
その頃には流石に自分でも、「何かに憑かれているのではないか?」と、漠然とした不安を感じていました。

その帰り道、何の気なしに私はあの公園に立ち寄りました。

あの夢を見るようになったのは丁度この公園に来た頃だったな、と思い返していると、私はふとコートのポケットに何か入っていることに気が付きました。

ポケットから出て来たのは、光る石でした。

そういえば、この公園でこの黒い石を拾ってポケットに入れたっきり、そのままにしていたことを思い出しました。

石を摘まんでジーッと見ていると、なんだか心が奪われるようです。
この前と同じベンチに座ったまま、時間も忘れて石に見入っている時でした。

突然、私の耳のすぐそばでバサバサッという音が響きました。

思わず「キャッ」と短い悲鳴を上げ、咄嗟に顔を上げて音の正体を確認して驚きました。

それは、カラスでした。
その姿は普通のカラスとは少し違っていて、目が落ちくぼみ、あちこち体をぶつけたのか、その羽はボサボサに乱れ、どこか憐れな印象を与える姿です。

更に驚いたのは、先ほどの衝撃で手から零れ落ちたのか、そのカラスはいつの間にか私の「光る石」を咥えていたんです。

「ちょっ!?」っと私が何か言う前に、カラスは光る石を咥えたまま空へと飛び立って行きました。

一瞬の出来事でした。

カラスに襲われるなんて初めての経験でした。
ましてや最近つきまくっていた私にとっては、本当に信じられない出来事だったんです。

髪の毛を整えて立ち上がり、「一体なんだったんだろう…」と、私は首を捻りそのまま家路につきました。

その日から、怖い夢を見ることがなくなりました。

だんだん体調も顔色も元に戻り、日に日に体が軽くなっていくのが分かりました。

ただ、それに伴って、これまでの幸運が嘘のようになくなり、むしろ次々と私は不幸に見舞われ始めたんです。

落とした財布が見つかったけどお金を抜かれていたり、私に何の否もないことで嫌な上司に怒涛のように怒られたり、自転車に轢かれてバッグがズタボロになったり、終いには近所の犬に噛まれて通院することになったり。

それはまるで、これまでの小さな幸運の代償を支払っているような感覚でした。

振り返ってみると、私に幸運が舞い込み始めたのは、あの「光る石」を拾って所持していた数週間の間だけです。そしてあの石がなくなった時から、逆に不幸に見舞われるようになりました。

「もしかしたら、あの石はそういう石だったのかもしれない…」

今になって、そんな風に思うんです。

持っている間は幸運が続き、手放すとこれまでの幸運の代償を支払わされる・・・

そう考えると、あの石を早めに手放して良かったのではないかと思っています。

それに、あのカラスは一体なんだったのでしょう…
なぜ私を襲って、あの黒く光る石を奪っていったのか…
落ちくぼんだ目にボサボサの羽、なぜあんなみじめな姿だったのか…

もしかしたらあのカラスは、光る石の元の持ち主だったのかもしれない。
それどころか、あの落ちくぼんだ目の中身って…

そんなことを考えると、あの黒くて丸い石を持っていた自分にゾッとしました。

まあ今となっては真相は分からないんですけどね。

ただ、今の私は、あのカラスの無事を祈るばかりです。

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