【怖い話】不思議実話|短編「見えない音」宮城県の恐怖怪談

投稿者:ネップ さん(32歳/男性/会社員/東京都在住)
体験場所:宮城県仙台市泉区
【怖い話】不思議実話|短編「見えない音」宮城県の恐怖怪談

5年ほど前のことです。
私は転勤で宮城県の仙台市に移り住むことになりました。

地下鉄泉中央駅から1駅行ったところにある単身者用マンション。
転勤者が多いというそのマンションで、私の仙台での暮らしは始まりました。

そこで体験した不思議な出来事です。

休日の昼間のことでした。

玄関を出ると正面から『音』が近付いてきたのです。

「チュンチュン、チュンチュン」

と、鳥の鳴き声のような音でした。
それが速くなったり遅くなったりしながら私に近付いて来るのです。

ですが、音の発生場所ははっきりと分かるのですが、音を発している要因が見当たらないのです。
何が音を鳴らしているのか全く分かりませんでした。

昼間のことだったので、近くで鳥でも鳴いているのだろうと思いました。
特に気に留めることもなくそのまま出発したのですが、姿の見えないその音は私の後を付いてきました。

マンションのエレベータに乗っても、人通りの多い歩道を歩いていても、交差点で信号を待っていても、私のすぐそばのどこかから音が聞こえてくるのです。

姿も確認できないまま、それはとうとう最寄り駅まで私の後を付いて来ました。

おかしいなと思いながらもそのまま電車に乗り込むと、音はようやく止みました。

一体なんだったのだろうと不思議には思いましたが、その時はあまり詮索もせず、電車に揺られて目的地に向かいました。

その日の帰宅は夜になりました。

最寄り駅に帰着すると昼間の音のことを思い出しました。

辺りはとっくに暗くなっていたので、さすがにもう鳥はいないだろうと思いました。

改札をくぐり駅を出ましたが、やはり音は聞こえてきません。

当然だろうと独りごちて自宅に向かって歩き始めました。

すると駅から遠ざかるにつれ、まるで私を発見したかのように遠くの方から「チュンチュン、チュンチュン」と、あの音が近付いて来るのが分かりました。

音だけで目に見えるものは何もありません。

気付いた時には音は私のすぐ横で鳴っていました。

さすがに気味が悪くなり、足早になる帰りの道中でもすぐそばで音は鳴り続けます。

マンションのエレベーターに駆け込み、自宅階のフロアを部屋までダッシュし、玄関に入りドアを閉めたところで、ようやく音は止みました。

「なんだ…あれ?」

姿の見えない音、いわゆるラップ音というやつかと思いました。

しかし、ネットで検索したところ『付いて来るラップ音』というものはありませんでした。

それからというもの、外出する時は昼夜を問わず高確率で音に追いかけられるようになりました。

「チュンチュン、チュンチュン」

何度か音の発生源と思われる辺りを写真に撮ったりもしましたが、何も写ることはありませんでした。

なので、気味は悪いのですがどうすることも出来ず、差し当たって害もないので、結局私はそれを放置していました。

そのまましばらく仙台での生活を続けていると、自分の住んでる地域に関して少し気になる噂を耳にするようになりました。

私の家からそう遠くない場所に江戸時代に使われていた処刑場跡があり、そこはどうやら宮城県でも屈指の心霊スポットと呼ばれていること…

また、かつてその刑場では7000人もの罪人が処刑され、その遺体の多くは近くを流れる川に流され、その水は血で赤く染まったと言われており、罪人たちの怨念渦巻くその川の周辺では今も心霊現象が後を絶たないとか…

因みにその川に関しては、以前、テレビの心霊特番で取材され、その際に除霊が済まされたという話のようですが、未だに妙な噂は絶えないのだそうです。

私が気になったのは処刑場跡の方でした。

と言うのも、私の家から幹線道路を渡った先にその処刑場跡があるのですが、あの音がやってくるのはいつも決まってその方角からだからです。

その日、私は処刑場跡に向かいました。

幹線道路を渡るとバス停と花壇があり、その先の坂のすぐ上に処刑状跡と石碑があります。

ですが、私はその花壇の前で足が止まりました。

綺麗に咲く花々の少し上に、髪の長い人の首のようなものが浮いていたからです。

目の辺りはモザイク掛かったようにぼやけ、性別も分かりません。

「チュンチュン、チュンチュン」

気が付いた時にはあの音も聞こえていました。
それは坂の上にある刑場跡の石碑から聞こえるようでした。

音はまるでそこに私を誘導しているように感じるのですが、花壇の首はむしろそれを拒むかのように浮いており、私は何となくその先に行くことをためらい引き返したのです。

Uターンした私の背後から聞こえる例の『音』は、後を付いてくることはないものの、速く大きくなっていました。

後日、再び処刑場跡に向かうと、花壇の首は消えていました。

私は坂を上がり、処刑場跡の石碑の前で手を合わせました。

石碑からはチュンチュンという音が微かに聞こえていました。

その日以降、音が聞こえて来ることは徐々に減りましたが、私がその地を離れるまで完全になくなることはありませんでした。

一体あの音は何だったのでしょう?
処刑場跡との関係は?
なぜ鳥の鳴き声のような音なのか?

正直、何も分からないまま転勤期間を終えて、私はあの地を離れました。

この体験を通して一つだけ言えることは、引っ越しの際は、自分の住む場所について少し調べてみた方が良いのかもしれない、ということだけです。

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