【怖い話|実話】短編「謎のラーメン」不思議怪談(北海道)

【怖い話|実話】短編「謎のラーメン」不思議怪談(北海道)
投稿者:カナタ さん(40代/男性/会社員)
体験場所:北海道〇〇市

これは私が北海道のとあるお食事処に行った時の話です。

私には学生時代から仲の良い友人A君がいます。今まで喧嘩などもしたことなく、お互いの悩みを話し合ったり、同じ感覚を共有できる信頼のおける相手です。

そんな彼と毎年、旅行に行くのが私たちの中で決まり事になっていました。

その年も旅行先をどこにしようか話し合っていると、「今回はグルメ旅にしよう」とA君が言い出したことで、咄嗟に私は「北海道とかいいんじゃない?」と反応。その発言がきっかけで、その年は北海道旅行に行くことになりました。

飛行機のチケットを手配し、当日まであれこれと身支度、そしていよいよA君と北海道へと出発しました。

北海道の空港に到着して、まずはレンタカーを借りたあと、「どこか適当な場所で昼ごはんでも食べない?」とA君を誘うと、「いいね」とA君も答えてくれたので、私が運転席へ、A君が助手席へと乗り込み、北海道の街を無作為に探索し始めました。

とりあえずカーナビは使わず適当な道を走っていると、案の定、〇〇市の辺りで道に迷ってしまい、気が付くと木が生い茂る峠に入り込んでしまったようでした。

私たち以外の車など全く走っていない所謂田舎道。「とりあえず、引き返そうか?」と私が言うと、A君は「このまま進もうよ、何か起きるかも」と見知らぬ土地にワクワクしている様子。私も内心では冒険心がくすぐられていて、A君の発言に乗る形でそのまま車を走らせました。

しばらく何もない道が続いていましたが、ふと気付くと遠くの方に一軒の建物が見えてきました。それは民家のようにも見えましたが、よく見ると『お食事処』の看板が目に入り、私たちは「ようやく昼メシにありつける」と一安心。すぐさま駐車場に車を停めて、その店に入りました。

田舎の、それも辺鄙な立地のためか、店内にはお客はおろか店員さんすらいません。

たまらず「すいませーん」と大きな声で人を呼ぶと、奥の方から50代後半くらいのおばさんが出てきました。

「…何か?」と私たちに不審そうな目を向けるおばさんに、「ここって、ご飯屋さんですよね?」と声を掛けると、「あーお客?」とそのおばさんは言いました。

(普段からほとんどお客が来ないから、私たちのこともお客とは思わなかったのだろう)と察し、私は「二名なんですけど、いいですか?」と聞くと、おばさんは「好きなとこ、座んな」とだけ言って、また店の奥の方に引っ込んでしまいました。

「なんか失礼な店だな」と二人でひそひそ話していると、おばさんがお水とメニューを持って再び私たちの元にやってきました。

とりあえずメニューに書かれていたラーメンを二つ注文すると、おばさんはまた店の奥へと引っ込んでいきました。

それから大体20分くらい経ったでしょうか、頼んだラーメンがなかなか出てきません。痺れを切らしたA君が、厨房の方をこっそり覗きに行くと、先程のおばさんがモウモウと沸く湯気の中、怖い顔で二人分のラーメンを仕上げている最中でした。

その独特な雰囲気に違和感と恐怖を感じたA君は、何も言わず静かに席まで戻ると、小声で「ラーメン食べたら、すぐに出よう」と声をかけてきたのです。

私も最初からこの店の異様な雰囲気は感じていたので、深くは聞かず「そうだね」と言って、ただただラーメンが届くのを待ちました。

しばらくして、ようやくおばさんがラーメンを持ってきました。
不愛想にテーブルに置かれたそのラーメンを、とにかく急いで食べてしまおうと、私たちは熱々のまま啜り上げたのですが、ただ、これがとにかく美味しいのです。

どんな出汁を使っているのか分かりませんでしたが、今まで食べたラーメンの中でも味わったことのない一品でした。

(こんなに美味しいラーメンなのに、どうしてお客がいないんだ?)と不思議に思いましたが、私とA君は何も言わず黙々とラーメンを平らげると、お金を払いすぐさま店を後にしました。

その後、走らせた車の中で、私は興奮冷めやらぬまま、先ほどのラーメンについてA君に言いました。

「あんなに美味いラーメン食べたことないよね」

するとA君は少し間を置いて言いました。

「・・・それ、本気で言ってる?」

私は一瞬意味が分からなくて固まってしまいましたが、すぐさま「本気、本気」と返答。

するとA君は、

「あんな変な味のラーメン食べたことない」

と一蹴。私とは全く別の感想を抱いたようなのです。

詳しく聞くと、A君曰く、スープから化学的な薬っぽい味がしたそうなのです。それは言葉では形容しがたい、これまで出会ったことのない嫌な味だったらしく、そんなA君の話を聞くうちに私も「確かに、今まで食べた事ない味だったのは間違いないよな…」と、謎の不信感が蠢き始めました。

それから半年後、たまたま別の友人と北海道へ行く機会があり、前に行ったあのお食事処がどうしても気になって、再びその場所を訪れてみたのですが、建物ごと店は無くなっていました。

結局のところ、あの店のラーメンが一体なんだったのか、出汁はなにで取られていたのか、全て分からないまま。
あの店で私とA君は一体なにを食べさせられたのか、今もふと思い出してはモヤモヤします。

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