【怖い話|実話】長編「ネイルテク」不思議怪談(大阪府)

【怖い話】実話怪談|短編「ネイルテク」不思議体験談(大阪府)
投稿者:あい さん(40代/女性/会社員)
体験場所:大阪府大阪市内のネイル店

これは私が経験した不可解な話です。
どのように確認すればいいのか分からないため皆さんに聞いて頂きたいと思います。

私は大阪市内の食品メーカーに勤める女子社員です。
趣味は美容室巡りで、もちろんネイルケアもこまめにしており、気になるネイルサロンをよくネットでチェックしています。

その頃、いつものネイルサロンにマンネリを感じていた私は、どこか新しいサロンはないかとSNSをチェックしていました。

すると、“みつばち89”さんと言う方の「〇〇サロンのサオリさんのネイルテクは凄い」という呟きを発見しました。

気になって私は直ぐに予約アプリでそのネイルサロンを検索しました。
見つかったサイトには、お洒落で洗練された雰囲気の店内写真が掲載されていて、またリーズナブルな料金にも惹かれ私は早速そのサロンを予約しました。

予約日当日、初めて訪れたその場所には古びた雑居ビルがありました。
目的のネイルサロンはそのビルの10階にあるようです。

劣化したビルの専用エレベーターはとても乗り心地が悪く、ゴォンゴォンと横揺れしながら上っていきます。

「故障して止まったりしないよね…」

正直、そう思ってしまうくらいの老朽具合でした。

なんとか無事10階に辿り着くと、目の前にはビルの外観とは打って変わって綺麗なサロンがありました。
店内に入ると清潔感のあるカウンセリングチェアが目の前に広がっており、古いビルだけどサロンはまともと、その様子にほっとしたのです。

ただ、接客をしてくれた女性スタッフだけが少し気になりました。

マスクをして多少分かりずらいものの、見た感じは22~23歳くらい。ピンクベージュに染めた髪は可愛らしくお団子にまとめていましたが、小さな声でもそもそと喋る様子が少し陰気に感じられたのです。

私が予約していたのは簡単なネイルケアでした。
その若い女性スタッフは予約内容を確認すると、直ぐに席へと案内され、私の指のささくれを取り始めると、そのまま一切顔を上げることもなく黙々と作業だけを行っています。

何も喋らず語らず、こちらが話しかけても「そうですね」としか返ってきません。

他にも数人のネイリストがいましたが、みんな楽しそうにお客さんとお喋りをしていました。

「大人しい子なんだな…」

そう思い、私も黙って彼女のネイルケアを受け続けました。

ただ、彼女の技術は本当に素晴らしく、30分後には私のネイルは美しく整い仕上がっていました。

「わぁーありがとう!」

私は上機嫌でお礼を伝えたのですが、彼女は静かに「いえ」と返すだけ。
少し寂しい気もしましたが、出来栄えが良かったため、その日はそれで良しとしたのです。

1ヶ月後、私はまたあのサロンのネイルケアを受けたくて、ネット予約をして再び店を訪れました。

相変わらず古びたビルには少しのけ反ってしまいますが、10階には美しいサロンが広がっていることを私は知っているので、今度は臆することなくエレベーターに乗り込みました。

ゴォンゴォンと鳴りながら横に揺れるエレベーターの動きは相変わらず。
ですが、なぜか私はこの前とは少し様子が違うように感じました。

「やっぱり、止まったらどうしよう…」

と、前回と同じ不安に駆られながらも、エレベーターは無事10階へと到着。
すると、ゆっくりと開く扉の隙間から見えてきた光景に、私は唖然としてしまいました。

目の前にあるはずの綺麗なサロンは一変し、そこには赤と黒で装飾されたおどろおどろしい姿の店があったのです。

ネットには『一部改装しました』と案内がありましたが、まさかここまで変わっているとは思いませんでした。まるで別の店にしか見えません。

疑心暗鬼のまま恐る恐る店内に入ってみると、そこに広がる光景に私は再び驚愕しました。

そこには、目隠しをされ四つん這いになっている裸の男性と、それを見下ろす女性の姿がありました。

「ひぃぃぃっ!」

っと思わず声を漏らすと、その女性がこちらへ視線を送ってきました。

黒のアイマスクをしたボンテージ姿の女性は、左手に血まみれのペンチを持っていて、足元には無数のネイルチップが散らばっています。それがネイルチップなどではなく、本物の人間の生爪だということに気付くまで一瞬でした。

「…えっ?…えぇ?…え?」

何がなんだか分からないまま思考は停止し、私は慌ててエレベーターへと引き返すと、1階ボタンを連打して急いで扉を閉めました。

怖くて体の震えがぶるぶると止まりませんでした。

「入るビルを間違えたんだ…」

そう思ってエレベーターが1階に着くなり私は慌ててビルの外に飛び出しました。

ですが、少し走った先でビルの方を振り返ると、そこにあるのはやっぱりこの前と同じ古びた雑居ビルです。どうやら建物を間違えたわけではなさそうでした。

もう訳が分からず私は直ぐにサロンに電話を掛けると、「○○サロンです」と女性のスタッフの方が対応してくれました。

「あのっ、改装って店舗の移転もしたんですか?」

ぶっきら棒に開口一番そう聞くと、電話口に出た女性の方は、店舗の移転もしていませんし、住所も変わらなければビルも同じだと言いいます。改装と言うのも店内の壁紙をレモンイエローに変えただけだと。

(じゃあ私がさっき10階で見た光景は…)

一体何が起きているのか分からないまま、私は無言で電話を切りました。

目の前のビルを見上げると、それはやっぱり一カ月前に訪れたビルと同じです。

意を決して私は再びビルに入り、もう一度10階へと向けてエレベーターに乗り込みました。
エレベーターはすんなりと動き始め、10階へ向け静かに上って行きます。

チーンとなって開いた扉の先には、以前と同じ綺麗なネイルサロンがありました。

店先には以前に対応してくれた無口な女の子のスタッフが立って私を出迎えてくれています。
私は彼女に促されるまま店内へと入り席に通されました。

そのまま気を取り直して前回と同じネイルケアを受けたのですが、先程の光景が思い出され、やっぱり心臓が落ち着きません。

ふと彼女の顔に目を向けると、私は変な引っ掛かりを覚えました。

彼女の顔が、先ほど見たボンテージ姿の女性と似ているように思いました。

ピンクベージュの髪、ほっそりとした左手。

更に下に視線を移すと、彼女の胸に『さおり』と書かれたネームプレートがぶら下がっていました。

“みつばち89“さんが呟いていた『サオリさん』という人はこの人なのだと悟りました。

でも今から考えてみると、あの“みつばち89“さんの呟きにも違和感を感じます。

普通『ネイルテク』なんて書き方をするでしょうか?

ネイルテクとはどういう意味なのか…

ボンテージ姿の女性が持っていた血まみれのペンチが頭をよぎりました。

もしかしたら、今、目の前にいる『さおり』という女性スタッフとさっきのボンテージ姿の女性は同一人物で…ネイルテクとは…

私は直ぐに空いている方の手でスマホを取り出すと、SNSで“みつばち89“さんの呟きを探しました。

ですが、“みつばち89“さんのアカウントは消えていました。

帰り際、さおりさんがポツリと呟きました。

「…たまにあるんですよね。」

「え…?」

もう一度聞き返そうとしましたが、さおりさんは「ありがとうございました」と言って、直ぐに店の奥へ行ってしまいました。

たまにある・・・?

それが妙に意味深に聞えました。

あのビルで私が見たものって、一体何だったのでしょうか?

今度は私が“みつばち89“を名乗って「〇〇サロンのサオリさんのネイルテクは凄い」と呟き、誰かのメッセージを待ってみたいと思います。

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