【怖い話|実話】短編「幼馴染の誘い」不思議怪談

【怖い話|実話】短編「幼馴染の誘い」不思議怪談
投稿者:スギヨ さん(30代/女性/会社員)
体験場所:不明(※身内の話なので詳細は控えます)

母方の祖母は私が子供の頃に亡くなったため、祖母との思い出は限られたものではありますが、私は穏やかで優しい祖母のことが大好きでした。

その祖母が突然亡くなったと聞かされた時、ショックで泣き崩れたものでしたが、時間が経つに連れようやく祖母の死を受け入れ始め、きっと私達のことを遠くから見守ってくれているだろうと、そんな風に思える様になった頃の事です。

確か、祖母の七回忌を終えた時だったと思います。

祖母を懐かしんで思い出話をしていた母が、そういえば、と話し始めたんです。
 
母が幼い頃から祖母は織物工場に勤めていました。

工場の巨大な機織り機から出る音は凄まじく、耳元で大声を出さないと会話がままならない程でした。

私も幼い頃に祖母に手を引かれて工場へ遊びに行った事がありましたが、大人の身の丈よりも大きな機械が隙もなく動き続ける迫力に気押されて、職場の同僚と話し込む祖母の服の裾を引っ張っては、早く帰ろうよと急かしていたのを覚えています。

工場の機織り機は当時にしても古いものだったようで、頻繁に人の世話が必要らしく、機械が余計な糸を噛んでしまった際には、その絡んだ糸を除去する等、危険な作業も多かったそうです。

若かりし日の祖母も機械を見回っては糸の調節をしたり、糸が引っかかって止まってしまった機械を点検したりと、忙しく働いていたそうです。

そんな大変な仕事を抱えながら、更に子育ても忙しく、疲れ果てて眠っては夢も見る間もなく朝になる日々。そんな毎日が過ぎていく中で、ある夜、珍しく祖母は夢を見たのだそうです。

それは懐かしい、子供の頃の幼馴染みの女の子が、当時の姿のまま現れ、祖母に「あーそーぼ!」と、お誘いしてくる夢。

夢の中、自分も子供の姿に戻っていた祖母は、そうだ、子供の頃この子とよく遊んだものだった、と、懐かしさで胸がいっぱいになったのだそうです。

しかし、夢の中の祖母は「ヤダ!絶対行かない!帰って!」と、お誘いに来たその子を手酷く追い返したらしいのです。

心の中では懐かしく思っている筈なのに、夢の中の自分が勝手に幼馴染を突っぱねてしまう。
そんな夢が強く印象に残ったからなのか、それ以降も毎日の様に同じ夢を見続け、誘いに来た幼馴染を追い返したところで目が覚める。
そんな日が何日も続くと、さすがに祖母も少し参ってしまったようなのです。

それと同時に、度々そんな夢を見続けるうちに、嫌な予感のようなものが芽生えたそうで、この夢を見るには何か理由があるのではないかと、よくよく思い返してみると、その幼馴染は、実際には夢に出てくる歳の頃に亡くなっており、既にこの世に居ない人だと思い出したのだそうです。

亡くなって随分と経っており、祖母自身も亡くなってしまった事をすっかり忘れていた人が誘いに来る夢だなんて、なんだか嫌だわと思っているうちに、夢の内容に変化が出てきたそうなのです。

最初の頃は取り付く暇もなく断っていた筈なのに、徐々に幼馴染の誘いが魅力的に思えてきたのか、夢の中の幼い祖母に段々と、遊びに行くのを迷う素ぶりが見え始めたそうなのです。

実際に夢を見ている祖母は「ダメだ、行っちゃダメだ!」と思うのですが、とうとう夢の中の祖母と幼馴染は手を取り合って、連れ立って遊びに出掛けてしまいました。

その日、祖母は働いている織物工場の機械に服を巻き込まれ、あわや大事故となる寸前、通りかかった同僚に助けられて命拾いしたそうです。

助けられるのが少しでも遅かったら、機械に頭を挟み込まれて砕かれてしまうところだった、と、祖母は母に話したそうです。

「びっくりしたよ。もうちょっとであの子に連れられてあの世に行ってしまうかと思ったんだからね」

と、あの穏やかな祖母が目を見開いて話していたそうです。

当時そんなことを話していた祖母が、実際に亡くなった原因は交通事故でした。

乗っていた車が横転し、祖母以外の同乗者は軽傷で済んだものの、祖母だけは亡くなってしまったのです。

一瞬の事で苦しまずに亡くなったのか、お棺の中で見た祖母の顔は、少し傷はあったものの、眠っているように穏やかでした。

ただ、顔の上、頭が・・・

横転した車の中から跳ね飛ばされた祖母は、道路と車の間に頭が挟まれ、骨が砕けて潰れていたそうです。

キツく巻かれたガーゼと包帯で、頭を直接見る事はありませんでしたが、治療する事も出来ない程の損失だったのだろう事は分かりました。

そんなこともあって、母から祖母の夢の話を聞いた時に私は思ったのです。

もしかしたら事故の前、祖母は再び幼馴染の夢を見ていたのではないのでしょうか…?

その幼馴染は諦めていなかったんじゃないか…

頭を砕いて確実に向こうに連れて行こうと…

そんな風に思えてならないのです。


恐虫リリー
恐虫リリー

あの世へ誘う幼馴染はなぜ頭部へのダメージに執着しているのか…気味の悪い話ですね…

・・・更に怖い話をもっと私に聞かせて!

恐虫リリー再び
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