体験場所:石川県金沢市
石川県の金沢市に住んでいた頃のことです。
当時、幼稚園に通っていたうちの子と同じクラスだったM君のママとママ友になりました。
M君ママはM君をずっと保育園に行かせていたのですが、仕事を辞めたのを切欠に幼稚園に入れたそうで、今は派遣で仕事をしているとの事でした。
お互いに一人っ子だったためか、子ども同士が仲良くなったことで私達も急速に仲良くなり、子どもを幼稚園に送った後にランチに行くような仲になりました。
私はあまり自分からぐいぐい行くタイプではなく、地味でおとなしい方なので、美人でいつもメイクをビシッと決めてお洒落なM君ママが、なぜ私とこんなに仲を深めてくるのか内心不思議に思っていました。
ある日、M君ママに誘われカフェでランチをしていると、
「実は私さあ、昔から霊感が強いんだよね。」
とM君ママが言い出しました。
「へー、そうなの?」
と、私は平常心を装いながら、内心では(宗教に誘われるか、壺を買わされるのかも。)と失礼ながら警戒していました。
「Y君ママ(私のこと)さ、丸顔で首にスカーフ巻いてるおばあちゃんいたでしょ?その人いつも後ろで見守ってるよ。それから猫飼ってるでしょ?胸が白くて茶色のシマ模様の。その猫、Y君ママの事をいつも守ろうとしてるね。大事にした方がいいよ。」
私は驚きました。
首にスカーフを巻いたおばあちゃんというのは、私が結婚する前に亡くなってしまった、私を可愛がってくれた祖母だとすぐに分かりました。
祖母はいつも首にスカーフを巻いてお洒落をしていました。
胸の白い茶色の猫は、その当時飼っていた愛猫でした。
猫を飼っていることをM君ママに話したことはありませんし、もちろん祖母の話をしたこともありません。
私はびっくりして「なんで分かるの?見えるの?」と聞くと、M君ママの家系は地元では有名な巫女の家系なのだと言っていました。
その力を少し怖くも感じましたが、やはり疑心暗鬼な気持ちもあり、(おばあちゃんは偶然かもしれない。それに猫はうちの子がM君に話した可能性もあるし…)と、あまり信じないようにしていました。
その頃からM君ママは、「これからは仕事をバリバリしたいから、うちは一人っ子でいいかなって思うんだけど、まだ悩んでるんだよね。」という話をよくするようになりました。
ある日、またランチに誘われた時のこと。
M君ママが疲れたような低い声で「ちょっと聞いてくれる?」と言ってきました。
M君ママが言うには、最近同じ夢ばかり見るのだそうです。
その内容がちょっと気味が悪いんです。
見たこともない薄暗い部屋に一人でいると、隣の部屋から赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるのだそうです。
ふらふらと立ち上がって隣の部屋のドアを開けると、中は真っ暗。
その部屋の隅にベビーベッドがあり、その上で赤ちゃんが泣いているのだそうです。
引き寄せられるようにその赤ちゃんに近寄って、顔を覗き込むと、赤ちゃんの目がカッと見開いて、
「お願い。生まれたいの。何で早く呼んでくれないの?」
と、はっきりと言うのだそうです。
私は少し肌がざわっとする感覚を覚えながら、
「考え過ぎて少し病んでるんじゃない?」
と言うと、M君ママが、
「私もそうだと思って気にしないようにしてたんだけど、それだけじゃないの。今日ね、Mとおもちゃ屋に行ったのね。2人でしゃがんでプラレール見てたの。そしたら全然知らない3歳くらいの女の子が私の肩をトントンと叩いくるから「なあに?」って言ったら、「あのね、生まれたいんだって。赤ちゃんが言ってるよ。」って、それだけ言ってその子どっか行っちゃった。」
と言うのです。
私はやはり心を病んでるんじゃないかと思ったのですが、正直、M君ママからはそんな雰囲気は全く感じられませんでした。
それより怖かったのは、その年の瀬が迫る頃の事でした。
その年、M君ママと私を含め、何組かの親子でクリスマス会を開きました。
パーティーも無事に終わり「楽しかったなあ」と、デジカメで撮った写真を後で何気なく見ていたのですが、数枚の写真をめくったところで、私はゾッとして手を止めました。
M君ママの人差し指の先、そこだけが異常な長さに伸びている写真が何枚も何枚もあったんです。
どしようか迷ったのですが、意を決してM君ママにその写真を見せたら、
「ああ。まただ。」
と、ボソッと言うだけでした。
私は翌年に夫が転勤になり引越したのですが、M君ママから届いた年賀状に、
『下の子が産まれました。』
と書かれていました。
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