【怖い話|実話】短編「我家の先祖」不思議怪談(大阪府)

【怖い話|実話】短編「我家の先祖」不思議怪談(大阪府)
投稿者:わさび さん(31歳/女性/主婦)
体験場所:大阪府茨木市の実家

これは私の兄が中学1年生の時に実家で体験した不思議な話です。

私の家庭では幼い頃からずっと教えられてきたことがあります。
それは、先祖を敬い、大切にするということです。

どこの家庭でも当然のことかもしれませんが、我が家のそれは、他より少し厳しかったのです。

玄関から一番近い6畳の部屋には祭壇が置いてあり、祖父母をはじめ亡くなられた先祖の写真が置かれています。

朝起きたあと、夜寝る前に、祭壇に手を合わせ挨拶するのはもちろんのこと、食事の時は、先祖の為のお皿を用意し、先に料理をよそってお供えをしてから家族がご飯を食べ始める。そういった習慣が当たり前でした。

出かける前には必ず祭壇に手を合わせて挨拶をし、また家に帰ってきた時は手を洗うよりもまず先に祭壇の前で同じように手を合わせ、挨拶をします。

これがずっと習慣になっており、我が家では当たり前のことだったのですが、兄が中学へ上がり思春期真っ只中の頃、親の言いつけや家の決まり事を守らず、ないがしろにすることが増えてきました。

そんなある日、部活から帰ってきた兄は疲れてヘトヘトでした。

早くゆっくりしたいという気持ちが勝り、祭壇の部屋に入りはしたものの、軽く会釈しただけ。そのまま部屋を出ようとしたその時です。

急に後ろから何かに引っ張られるような感じがして、前に進めなくなりました。
もちろん部屋には兄の他に誰もいません。

とてもイヤな感覚が兄を襲いました。
その力はとても強く、兄がどんなに頑張っても全く前に進めません。

「後ろを向けば、誰かが俺を掴んで引っぱっているんじゃないか?」

そんなことを想像しただけで鳥肌が立ち、前にも後ろにも動けないまま時間だけが流れました。

それはとても長い時間に感じたと兄は言います。
そのまま、兄の感覚で10分ほどが経った頃でした。さすがにこのままじゃラチがあかないと、兄は意を決して勢いよく後ろを振り返りました。

そこに、兄を引っ張る“誰か”は、いませんでした。

ホッと安堵した兄でしたが、同時に疑問が浮かびます。

「じゃあ、一体なにが俺を引っ張ってるんだ?」

そう思ってふと下を向くと、部屋と廊下を仕切るカーテンが、兄のショルダーバックの紐に3、4重になってグルグルと巻き付いていました。

「なんだ、カーテンか…」

そうホッとしたのも束の間、兄はゾッとしました。

だって、どう考えてもそれは、ただ部屋を出るためにくぐっただけのカーテンの絡み方とは、到底思えなかったから。

また動けなくなってしまった兄は、ふと祭壇の方に目を向けました。

そのまま、兄はゆっくりとカーテンと紐の絡みを丁寧にほぐすと、いそいそと祭壇の前へと行き、そっと手を合わせると、「ただいま帰りました。」と一言挨拶をしたそうです。

他家では見られないくらいに強く先祖を敬う我が家の伝統は、おそらく私の親の代だけではなく、もっと以前から代々受け継がれてきた信仰心なのだと思います。

それに背いた兄へ、先祖が少しお灸を据えたのかもしれません。

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