【怖い話】実話怪談|短編「酔っ払い動画」不思議体験談(岡山県)

投稿者:豆ちよ さん(30代/女性/事務職/高知県在住)
体験場所:岡山県岡山市の夜道
【怖い話】実話怪談|短編「酔っ払い動画」不思議体験談(岡山県)

私は以前、岡山県に住んでいたことがあります。

ようやく見つかった就職先が岡山市だったため、高知県の実家から引っ越して、私は兼ねてから念願だった一人暮らしを岡山の街で始めたのです。

しかし、結局そこに住んでいたのは、ごく僅かな間だけでした。

その時の体験を話したいと思います。

その日の私はすごく酔っぱらっていました。

夕方から始まった友人同士の飲み会は、仕事でのストレスを愚痴り合っているうち、気が付くと時刻は日を跨いで深夜の3時~4時になっていました。

流石に遅いので、その場は一旦お開きとなりましたが、私と他2人の友人は翌日の仕事が休みだったので、私の家に泊まっていくことになり、3人で歩いて帰ったんです。

その帰りの道中、酔っぱらって何でも楽しくなっていたんですね。
特に理由もなく、友人が私のスマホを使って動画を撮り始めたんです。

本当に20~30秒くらいの短い動画だったと思います。

それは通常なら、ただ道を歩いている酔っぱらいを撮影しただけの、つまらない動画のはずだったのですが…

家に到着すると、どっと疲れが出たのか、私たちはお風呂にも入らずにそのまま眠ってしまいました。

翌日、私が目を覚ましたのは正午過ぎでした。

友人は2人とも既に起きていたのですが、なんだかすごく騒がしくしています。

寝起きだった私はまだ動く気になれず、その様子をボーっと眺めていると、2人が私のスマホを見ていることに気が付いたんですよね。

勝手にスマホを見られていること自体に特に怒りはなかったのですが、私は寝起きアピールついでに冗談半分で「勝手にスマホ見ないでよ」と言ってみたのです。

振り向いた2人に笑顔はありませんでした。

2人とも、ものすごく青ざめた顔をこちらに向け、私はそれがとても不思議でした。

少しの間、またボーっとして、2人の顔を眺めていると、

「ちょっと、これ見て…」

そう言って、友人の一人が私のスマホを私に差し出しました。

見せられたのは、昨晩撮影した動画でした。

キャーキャーと如何にもうるさい酔っ払いの二人を、キャーキャーとうるさい酔っ払いが撮影している短い映像。

みっともない酔っ払いだな、と思っている内に、直ぐに再生が終わりました。

私には、これを見せる友人らの意図が分からず、「これがどうしたの?」と、不思議に思って聞くと、

「よく見て、豆ちよ(私)の首にさ…」

そう言って、再び映像を再生されました。

(私の、首…?が、何…?)

何がなんだか分からないまま、今度は私の首に注意しながら、もう一度再生された映像を注意深く見てみました。

すると、動画の最初から、私の右側の肩から首にかけて、誰かの手が置かれているのが分かります、

一見、私の左側にいる友人が腕を回して肩を組み、私の右肩に手を置いているのだと思いました。

でもよく見てみると、ちょっとおかしいんです。

その手が伸びてくる先を辿ると、それは友人とは逆方向。
誰もいないはずの私の右側から、にょきっと腕が伸びていたのです。

ゾワッとしましたね。

(…え?これ…誰の、手?)

と思うと同時に背筋を悪寒が走り、思わずスマホを落としそうになりました。

動画の初めから、終始、私の右肩に置かれていたその手は、動画が終わる寸前、酔っぱらって笑う私の首をガッと掴むように動いて、映像が止まりました。

動画を見終えた私の顔は、友人らと同じように青白くなっていたと思います。

私は直ぐに洗面所に向かい、鏡で自分の首周りを確認しましたが、絞められたような跡はどこにもありませんでした。

「なんだろうね…これ…」

そう言って、友人は気の毒そうに私を見つめます。

私は、もう一度映像を確認する気にもなれず、あまりに気味が悪いので、直ぐにその動画を消去しました。

友人らも同じ気持ちだったのでしょう、2人とも、その日は浮かない表情のまま、夕暮れ前には帰っていきました。

その後、動画のことは気にしないように過ごしていたのですが、一週間くらい経った頃でしょうか。

残業で遅くなり終電を逃してしまった私は、一人で夜道を歩いて家に向かっていました。

タクシーを呼ぶことも考えたのですが、歩いて帰れなこともない距離ですし、ちょうど金欠だったこともあり、私は歩いて帰宅することにしたのです。

その道のりは、この前友人らと酔っぱらって歩いたのと同じ道です。

薄っすらとあの夜のことを思い出しながら、例の動画の撮影地点に差し掛かった時、私はあの映像を思い出して少し怖くなりました。

早く帰ろうと、足早にその場を通り過ぎようとした時でした。

「ねえ、ちょっと…」

と、突然後ろから、誰かに声を掛けられたのです。

思わず振り向くと、そこにいたのは身長160cmくらいの小柄な男性でした。パーカーを着てフードを被っています。

夜道だったこともあり、フードの奥の顔がイマイチ判然としませんでした。

「何してるの?」

男は馴れ馴れしくそう言って、左手を振りながら私に近付いてきました。

ナンパかと思いました。

しかし、男が私に向かって振っている手、その手に私は見覚えがあったんです。

骨ばった手、細い指。
正にあの動画で見た、私の肩に乗っていた手と同じでした。

男はその手を振りながら近付いて来たかと思うと、不意にそれを私の右肩に乗せたのです。

信じられない行為ですが、それでも、いつもの私だったら警戒はしても取り乱すことはなかったと思います。

ですが、私の右肩に置かれたその手は、あの不気味な動画に映っていた手と全く同じもの。
映像の最後には私の首をガッと乱暴に掴み上げた手なのです。

その手が私の右肩に置かれた瞬間、

「きゃぁぁぁーーー!!!」

と、私は人目も気にせず思いっきり叫びました。

半狂乱で必至に叫ぶ私の姿に、男はすごく慌てていました。

私の口を塞ごうと、男は一度、手で覆ってきましたが、私はその手に思いっきり噛みつきました。

「いっっつ!?くっそ、ふざけんなよクソ女!!」

なおも叫び続ける私に、男はそう辛辣な言葉を吐き捨て逃げて行きました。

その後、私の悲鳴を聞いた何人かの人が駆け付けてくれて、一人で震えている私を気遣ってくれました。

結局、あの男の目的が何だったのかは分かりません。

もしかしたら、乱暴するつもりなどなく、彼はナンパくらいのつもりで声をかけただけの人だったのかもしれません。

ただ、あの気味の悪い動画を見てしまった以上、私はああする他になかったと今でも思っています。

もしもあの時、悲鳴を上げていなければ、私はもっと危険な目に遭っていたのかもしれません。

だって、映像で、あの手は私の首を荒っぽく掴み上げ、その行為には殺意すら感じたのだから。

最後に憎らしそうに私をなじる男の声は、今思い出しても竦んでしまいます。

そんな体験をして以来、私は人一倍臆病になってしまい、一人暮らしすらも怖くて仕方なくなり、結局仕事もやめて高知の実家に戻ることにしたのです。

でも、あの動画に映っていた手って、本当にあの男のものだったのでしょうか?

だとしたらあの映像は、私に危険が迫っていることを教えてくれるものだったのか…

それとも、何か別の意味があったのか…

直ぐに動画は消してしまいましたし、その真意は知りようもありませんが、今は安全な場所で暮らせていることを思うと、やっぱりあの動画は私にとって、ありがたいものだったのかもしれません。

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