【怖い話|実話】短編「夕空の影」不思議怪談(岐阜県)

【怖い話】実話怪談|短編「夕空の影」不思議体験談(岐阜県)
投稿者:Maverick さん(44歳/男性/会社員)
体験場所:岐阜県K郡 勤務先の屋上

これは、私が勤める岐阜県K郡の会社で体験した出来事です。

ちょうどコロナ第一波が明けた2020年の初夏の頃だったと思います。

私が勤めていたのは主に自動車関係の部品製造を行っている会社で、その頃コロナ渦で製造が止まっていた工場ラインが再び一斉稼働し、連日のように全従業員が残業・休日出勤という日々を送っていました。

その日はようやく仕事が一段落ついて、ほとんどの従業員が残業することなく帰宅していましたが、私はまだ持ち場で一人、残務処理に当たっていました。

ひとしきり作業を終えて、休憩がてら屋上に上がり、喫煙所で煙草に火を点けました。ふと空を見上げてみると、とても綺麗なオレンジ色の夕焼けが目に飛び込んできました。

その頃は連日残業続きだったため、帰宅時にはすっかり空も暗くなっている日々を送っていました。なのでその時は久し振りに見る綺麗な夕焼け空をしばらくボーっと眺めていました。

フーッと、何度目かの煙を空に向かって吐いた時でした。
その煙のずっと向こうの遠くの空に、米粒くらいの影が見え、それがこちらの方に向かって飛んで来るのが分かりました。

(鳥かな…)と思いながらも、何か妙な違和感を感じ、私はしばらくその影を見ていたのですが、影がこちらに近付き次第に大きくなるに連れ、その違和感の正体に気が付きました。

飛んでくる影は、全く羽ばたく動作をしていないのです。

とはいえ滑空している鳥ならば、羽を羽ばたかせる必要もないだろうし(やっぱり鳥だよな…)、そう思って、一度視線を落として灰皿で煙草を揉み消し、再び見上げた時でした。

私の目の前の空を、見たことのないシルエットの生き物が悠々と横切ったのです。

いや、むしろ飛んでいるというよりは、『泳いでいる』といった表現の方が正しいかもしれません。

下から見上げるその生き物は、頭頂部がハンマーのようなシルエットをしていて、それは正に海に住むハンマーヘッド・シャークのような魚型のフォルムでした。もちろん羽などありません。

その生き物は、羽ばたくことなく数回ひれを振るだけで旋回し、悠々と私の目の前の空を行ったり来たりしています。

唖然としました。
見間違いではないかと私は何度も瞬きを繰り返しましたが、やはりそれはハンマーヘッド・シャークのような魚形のシルエットで、目の前の空を気持ち良さげに泳いでいます。

美しい夕日を背景に、悠然とした泳ぎを見せるその生物に私の目は釘付けとなり、それはかなり長い時間、私の目の前を優雅に泳いでいました。

私はどうしてもその光景が信じきれず、今度はしばらくのあいだ思い切り目を瞑って、その後ゆっくりと目を開いてみました。

すると、目の前から謎の飛行生物は消えておりました。が、今度は何時の間にそこまで移動したのか、また遠くの空を米粒くらいのサイズになって泳いでいました。

それは遠くへ遠くへ更に小さくなって泳いでいきましたが、やがて肉眼で見えなくなるまで私はただただその飛行生物を見つめていまいした。

暫し呆然としたあと、ハッと我に返った私は、この奇妙な体験に恐怖どころか感動すら覚えていました。

その興奮冷めやらぬ内に、私は帰宅後すぐに先ほど見たものを家族に話したのですが、やはりというべきか、誰にも信じてもらえません。

翌日には会社の同僚にも話してみたのですが、案の定、「俺もUFOなら見たことあるよ」などと早々に冗談を返され、鼻で笑われてしまう始末です。確かに逆の立場なら、私もそんな反応を示したかもしれません。

しかしいくら連日の残業や休日出勤で疲れていたとしても、この目で実際にハッキり認識してしまったものを、どうしても見間違いだと思うことは出来ず、今もモヤモヤとした日々を過ごしています。

一体あの飛行生物はなんだったのでしょう?

あれ以来、再びあの飛行生物を見たことはありません。

ただ、あの日を境に私は空を眺めることが増え、気持ちをリレッシュする時間が持てるようになった気がします。

もしかしたら、あの頃あまりに忙しく時間に追われて生きていた私に、心のゆとりを思い出させるためあのハンマーヘッドシャークは現われたのかもしれない。

あの悠々と夕焼け空を泳ぐハンマーヘッドシャークの姿は、時間という概念から解放された、それは雄大で安寧な光景に思い出され、最近ではそんな風に考えるようにもなりましたが・・・

でも、本当に何だったんだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました