【怖い話|実話】長編「キャンプの醍醐味」人間が一番怖いと思う話(山梨県)

【怖い話|実話】長編「キャンプの醍醐味」人間が一番怖いと思う話(山梨県)
投稿者:タカシ さん(40代/男性/会社員)
体験場所:山梨県K市 某キャンプ場

これは数年前、一人でキャンプに行った時の話です。

私は幼少の頃からインドア派で、外に出て何かするというのが苦手でした。海や山もあまり好きではなく、学校の行事でピクニックに行く時などは「休みたい」と親に懇願したくらいです。

ですがそんな私を変えてくれたのは、キャンプが題材のとあるアニメとの出会いでした。可愛らしい女の子がキャンプ場でカップラーメンを食べている姿を見て、「これ、自分もやってみたい!」という衝動に駆られたのです。

とはいえ、今までキャンプどころか外活動と無縁だった私が、キャンプ道具など持っているはずありません。ただ、実家に多少のキャンプ用品があったことを思い出し、わざわざ取りに帰りました。

そして次の休日を利用して、私は遂にソロキャンプを実行に移しました。
当日はレンタカーを借りました。その荷台にキャンプ用品を積み終えると、いよいよ私は山梨県K市にあるキャンプ場を目指して出発したのです。完全インドア派だった私が、ここまで行動的になれるなんて、自分でも正直驚いていました。

私の自宅は神奈川だったので、「山梨のキャンプ場なら移動にそこまで時間もかからないだろう」と鷹を括っていたのですが、休日で道路が混んでいたせいで、体感で3時間くらい、思ったより時間が掛かってしまいました。

キャンプ場に着くと、やはり休日ということもあってか、沢山の人がテントを広げてキャンプを楽しんでいました。

私はソロだったので(できるだけ人がいない場所がいいな)と辺りを散策していると、静かな良い場所を発見しました。賑やかな場所から少し離れていて、それに木々や自然も多く、隠れスポットのような最高に居心地のいい空間でした。

よし、ここにテントを張ろうと荷物を下ろした時でした。

近くの茂みに一人の男性がいることに気が付いたんです。

年齢は20代半ばといったところでしょうか。春先でまだ少し肌寒い時期だというのに、男性は半袖Tシャツ姿。そこにテントを張るわけでもなく、持ち物も何も持っていない様子です。そんな男性がすぐそこの茂みにボーっと突っ立っていたんです。

「あれ?この人、ちょっとおかしいかな…」

正直、男性を見た瞬間、私はそう思いました。

ただ私は自分のことで精一杯で、今はテント張りに夢中だったので、とりあえずその男性のことは見て見ぬふりをしました。

大体30分くらい掛かってテントを組み終え、今度は持ってきた小型の椅子を用意しました。その際にふと茂みの方に目をやると、先ほどの男性の姿がありませんでした。どこかへ行ってくれたのだとホッとしました

気を取り直し、「よし、次は焚火をしよう」と意気込み、椅子の前に焚火台を取り出した時でした。

いつの間に現れたのか、先ほどの男性が目の前に立っていて、今度は私に話しかけてきたのです。

「ここ、よく来るんですか?」

とフランクに話しかけてくる男性。

「…そうですね、たまに」

私は適当に返事をしました。
内心キャンプ自体初めてなのですが、早くどっかに行って欲しくて、あえておざなりな言葉を使って雑な返答をしたつもりでした。

すると男性は、

「僕、2回目なんですよ」

そう言うと、スッと立ち上がって又どこかに行ってしまいました。

(なんだこの会話は!2回目?だから何なんだよ!?気色悪い)

この尻切れトンボな会話もあって、私はいよいよ男性に不信感を抱きました。
ですが、結局気にしていても仕方のないことなので、私は気を取り直して再び一人の時間を楽しむことにしました。

パチパチと、ようやく焚き火が安定して燃え始めた頃、ふとお腹が減っていることに気が付きました。
私は家から持ってきた缶詰を取り出すと、さっそく目の前の焚き火を利用して、温めてから食べてみました。

やはり外で食べると一味違う感じがして、ただの缶詰がめちゃくちゃ美味しかったんです。「これがキャンプの醍醐味か!」と楽しんでいるうち、段々と日が暮れてきたので、持ってきたラジオ付きライトを取り出してスイッチを入れました。

ただ焚き火を眺めているだけで心が洗われる気がして、何だかすごく不思議な気持ちのまま夜が更けていきました。

気付くと時刻は既に22時を回っていました。
時間も時間なので、いよいよ自分が一番したかったことをすることにしました。

焚き火でお湯を沸かし、持ってきたカップラーメンに注ぎます。
3分後、フタをはがして箸を投入。ゴソッと麺をすくい口に運びました。

そのラーメンの美味しさときたら、本当に今まで味わったことがないくらい美味しくて、アウトドア最高!キャンプ最高!と、自分の世界観が変わるのを感じました。

とんでもない多幸感にどうにかなりそうだった時、ふと何気なく辺りを見渡すと、マイテントの物陰に誰かがしゃがんでいるのが見えました。暗がりでいまいち見えづらかったのですが、それが白いTシャツ姿なのは分かりました。
きっとさっきの男性だと思いゲンナリしました。

少し怖かったのですが、勇気を振り絞って「何か用ですか?」とその人影に声をかけました。
すると影はヌッと立ち上がり、その姿がキャンプ場の外灯に照らされました。

案の定、そこにいたのはさっきの男性でした。

すると男性は私に向かって言いました。

「全然気付きませんでしたね、ずっと見てましたよ」

この言葉に私は恐怖を覚えました。

(やっぱりこいつはまともじゃない)

すぐさま彼を拒絶しようとしましたが、ここで嫌悪感を丸出しにしたら逆上した男性が何をするか分からないと咄嗟に思い、精神を整えて出来るだけフラットな対応を心がけました。

何ターンか他愛もない会話をしたあと、男性は再びどこかに消えていきました。
既にカップラーメンの感動もどこかに消えていました。

(本当に何なんだよあいつ…)

もう帰ろうかなとも考えましたが、わざわざ張ったテントも勿体ないし、やっぱり一晩テントで眠ることにしました。

テントの中は思っていたよりも快適でした。
ちゃんと足も伸ばせるし、とてもリラックスできました。

ただ、古いテントのため生地が薄いのか、ファスナーを閉めても外が少し透けて見えてしまいます。もちろん外からも中が透けて見えます。(何だか外の外灯が眩しいな)と思いながら、その晩は運転の疲れなども重なりすぐに眠りに落ちました。

だいたい深夜3時過ぎくらいでしょうか。
トイレに行きたくなって私は目を覚ましました。

起き上がってファスナーに手を伸ばした時、パッとその手を止めました。

外に人影がありました。
そのシルエットから相手がTシャツ姿であることは明白。

(また、あいつか…)

内心、恐怖とともに苛立ちを覚えました。

ですが、(今、外に出ると何されるか分からない)と本能的に感じ、トイレはひとまず我慢して、朝が来るまで横になったまま耐えました。

ようやく外が明るくなった頃、恐る恐るテントのファスナーを開けました。

そこに男性の姿はありませんでした。
清々しい朝のキャンプ場の風景、それと爽快な自然の空気が辺りを満たしていました。

そんな中、ふと改めて昨夜のことを思い返すと、なぜあの男性は私のテントの前にいたのか、別に何かされたわけでもなく、皆目見当がつきませんでした。

とにかく昨晩から我慢し続けた尿意を捨てにトイレへ急ぎました。

その後、健やかな朝の空気を感じながらお湯を沸かし、コーヒーを飲みました。これもキャンプの醍醐味の1つだと思いました。

ある程度のキャンプの醍醐味も感じられたので、私は満足してテントを片付けキャンプ場を後にしました。

帰り際、ふとTシャツ男性のことが気になり辺りを見渡しましたが、男性の姿はどこにもありませんでした。

一体彼は何者だったのでしょう?
そういえば彼が私以外の誰かと話している姿を一度も見かけなかったので、もしかしたら実在しない存在だったのかどうか、それも今となっては分かりません。

こんな出会いも、キャンプの醍醐味の1つなのしょうか?

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