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【怖い話|実話】短編「引っ越しの挨拶」人間が一番怖いと思う話(東京都)

投稿者:かんちゃん さん(30代/男性/会社員)
体験場所:東京都町田市

これは、私が実際に体験した話です。

私は大学受験に失敗し、高校卒業後は予備校に通うことになりました。

実家は郊外にあり、予備校へ通うには少し距離があったため、近くに部屋を借りることにしました。
しかし、安くて手ごろな物件はなかなか見つからず、いくつかの不動産屋を巡った末にようやく見つかった部屋は、駅から徒歩10分の木造アパートの一室でした。家賃も安く、日当たりも良好。これは好物件だと判断した私は、すぐにその部屋を契約しました。

一階と二階、それぞれ5部屋づつ、どこにでもあるような二階建てアパートです。一階の角部屋101号室が私の部屋でした。

引っ越してまず実家から届いた段ボールを整理した後、近所に挨拶もしておこうと、私は隣の102号室と上の階の201号室へ菓子折りを持って行くことにしました。

まずは隣の102号室を訪ねたのですが、扉をノックしても誰も出てきません。

「留守かな?」と思い、次に201号室へ向かうと、中年の愛想の良い女性が出迎えてくれました。

簡単な挨拶のついでに、「102号室は留守みたいですね」と話すと、その女性は、「あそこは半年くらい前から空き部屋ですよ」と教えてくれました。「留守ではなく誰も住んでいなかったのか」と納得し、私はそのまま自室に戻りました。

その夜のことでした。
夕食を買いに近くの弁当屋へ行き、アパートに戻ると、誰も住んでいないはずの102号室の曇り窓から、微かに灯りが漏れているのに気が付きました。

「誰も住んでいないはずなのに…」と不信感が湧きましたが、怖くて確認することは出来ず、私はそのまま音を立てないように自室に戻りました。

それから数日、予備校とバイトに追われ、102号室のことはすっかり忘れていました。

その数ヶ月後のある夜でした。

部屋で勉強をしていると、突然部屋のドアを「コツコツ」と叩く音が聞こえました。

小さな音だったので、「気のせいかな」と思い、無視して勉強を続けていると、再び「コツコツ」と音が鳴りました。

「やっぱり誰か来てるんだ。こんな遅くに誰だろう?」と、ドアスコープから外を覗くと、私の部屋の前に、長い髪が顔にかかった気味の悪い女性が所在なさげに立っていました。

「誰だろうこの人?」と思いながら、私はドアを開けずに「何か御用ですか?」と声を掛けました。

すると女性は「隣に引っ越してきた者です」と答えました。

その瞬間、なぜか私は全身が総毛立ちました。
「このドアを絶対に開けてはいけない」と本能的に感じ、「挨拶でしたら明日にしてもらえますか?」と慌ててドアの向こうに伝えました。

すると女性は、何も言わずにその場を立ち去っていきました。

その夜は妙な不安に襲われたまま勉強も手につかず、私はそのまま布団に入って眠ってしまいました。

翌日、予備校から帰宅すると、再びあの女性が挨拶に来るのかとドキドキして身構えていたのですが、そんな気配もないまま夜も更け、こちらから行くのもおかしいので、そのまま放っておくと、結局その日に女性が訪ねて来ることはありませんでした。

以降も女性が再び挨拶に来ることはなく、アパート内で顔を合わせることも一度もありませんでした。

一年後、私は希望していた大学に無事合格し、大学の近くへ引っ越すことになりました。

今の部屋を解約するために不動産屋を訪れた際、ふと私は102号室のことを思い出し、「あの、102号室の方って、いつから住まれていたんですか?」と何気なく訊ねました。

すると不動産屋の人は不思議そうな顔をして、「102号室はずっと空き部屋ですよ?」と言うのです。

背筋が凍り付きました。

それじゃあ、あの女性は一体誰だったのか?
102号室の窓から見えた灯りはなんだったのか?
今となっては知る由もありませんが…


恐虫リリー
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