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【怖い話|実話】短編「押し入れの奥」心霊怪談(京都府)

【怖い話|実話】短編「押し入れの奥」心霊怪談(京都府)
投稿者:なこなこ さん(35歳/会社員/女性)
体験場所:京都府京都市左京区 古い賃貸アパート

これは、私が以前勤めていた会社の先輩男性である高橋さん(仮名)から、仕事帰りの飲み会の席で聞いた話です。

高橋さんは以前、京都の左京区にある家賃3万ちょっとの格安アパートに住んでいました。木造の古い二階建てアパートで、六畳のワンルーム。お世辞にも綺麗とは言えない物件でしたが、社会人になってすぐの一人暮らしには手頃なものに思えたそうです。

ただ、彼がその部屋に引っ越してから、少し妙なことが続きました。

最初は本当に些細なことに思っていました。
夜、部屋を暗くしてベッドに入ると、部屋のどこからか「みちっ、みちっ」と、木が歪むような、あるいは誰かがゆっくりと体重をかけて床板を踏みしめるような、そんな音が毎夜きこえるんです。
古い木造アパートですから、ただの家鳴りだろうと、最初は高橋さんも気に留めていませんでした。

しかし、そんな夜がしばらく続いた頃、高橋さんは気付いたそうなのです。音が鳴っている場所がいつも同じだと。部屋の北西の角にある押し入れの辺り、どうやら音はそこから聞こえるようなのです。とはいえ、場所が分かったからと言って、特に何をするわけでもありませんでした。

それからしばらくしたある日、部屋の模様替えをしようと思い、押し入れの中の荷物を全て引っ張り出した時のことです。
押し入れの奥の壁に手を突いた瞬間、妙な違和感がありました。
壁の一部が、なんだか不自然にベニヤ板で塞がれているような感触。よく見ると、明らかに後から打ち付けられたような不揃いな釘がいくつか並んでいます。

気になって、高橋さんは隙間に定規を差し込んで、少し強引にベニヤ板を浮かせてみました。すると、どうやらベニヤ板の向こう側に空洞があるようなのです。高橋さんは不審に思い、釘を引っこ抜き、ベニヤ板を剥がしてみました。そして、スマホライトで照らして中を覗き込むと、高橋さんは思わず息を飲みました。

押し入れの奥には、半畳ほどの狭い小部屋のような空間が隠されていました。

小部屋の床には、なぜか激しく色褪せた古い座布団がポツンと敷かれています。壁にはびっしりと何枚もの半紙が貼り付けられていて、更にその半紙に書かれている文字らしきものが異常でした。どうやら墨で書かれた人の名前のようなのですが、それが狂ったように上から何度も何度も重ねて同じ名を書き殴っていて、半紙全体が真っ黒に塗りつぶされたようになっていたと言います。

高橋さんは一気に背筋が寒くなり、慌ててベニヤ板を元通りにはめ込みました。

それ以来、夜中に聞こえる「みちっ、みちっ」という音が、その隠された半畳の空間から響いているようにしか思えなくなったそうです。

それから1週間ほど経ったある夜、決定的なことが起きました。

高橋さんがベッドで寝ていると、耳元で、「開けて」という、掠れた低い声がはっきりと聞こえたそうです。

驚いて飛び起き、部屋の電気をつけましたが、当然部屋には自分の他に誰もいません。

しかし、咄嗟に押し入れの方を見た瞬間、それまで完全に閉まっていたはずの押し入れの引き戸が、指一本分だけスーッと開くのが見えました。

翌日、高橋さんは有給休暇を取ってすぐに不動産屋に駆け込みました。

間取り図を見せながら「押し入れの奥に、間取りにない部屋があるんですけど」と切り出すと、対応した若い担当者の顔から一気に血の気が引いたそうです。

すると、奥から出てきた年配の店長に別室へ通され、高橋さんはこんな話を聞いたそうです。

「実は、かなり前の住人が、精神的に不安定になってしまってね。あの部屋の奥に自分で細工をして、誰にも見つからないように閉じこもっていた時期があるんだよ」

結局、高橋さんは違約金なしでそのアパートを退去させてもらえることになり、すぐに別の物件へ引っ越したそうなのです。

「なんだか気味の悪い話ですね…」と私が言うと、高橋さんは「もうずいぶん前の話だから」と言って笑っていましたが…

それにしても、前の住人が何度も何度も半紙に書き殴っていた名前って、一体誰のものだったのでしょうか。自分自身をその小部屋に縛るための呪いだったのか。それとも強い執着や恨みを抱いた誰かへの呪いだったのか。

押し入れの奥、ベニヤ板の向こう側の半畳の暗闇に、今も誰かが座布団の上にじっと佇み、外へ出る機会を窺っているではないか、そんな想像をすると、今でも背筋がスーッと寒くなります。


恐虫リリー
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