【怖い話|実話】短編「旅の思い出」人間が一番怖いと思う話(和歌山県)

投稿者:こけし さん(30代/女性/主婦)
体験場所:和歌山県白浜町 三段壁

私が今の夫の前に付き合っていた元彼と、一緒に体験した話です。

彼とは同じ会社に勤めていたのですが、その年は一緒に夏休みが取れなかったため大好きな海外旅行に行けず、それならお互いに有給を使って海外に行こうと約束をしていました。

ですが、当時私たちが勤めていた会社ではリコールやクレームが多発しており、さらに同時期に同じ部署の女の子が結婚退職するということで仕事が立て込み、結局、やっとの思いでお互いに休みが取れたのは、10月も末に差し掛かった頃でした。

平日に有休を入れまくり、1週間まるまる休みをもらえることになったのですが、残念なことに彼のパスポートが失効していたため海外には行けず、それならむしろ『近場で楽しもう!』と、リーズナブルな旅行計画を立てました。

宿も、キャンプや民宿、もしくはラブホテルに泊まって予算を抑え、近場の奈良県、三重県、和歌山県辺りを巡ってみようという計画でした。

奈良県で1泊、三重県で3泊、和歌山で2泊という事だけを決めた雑なプランでしたが、実際に行ってみると、それは予想以上に楽しい旅となりました。

因みに私たちには旅の目的が観光以外にもう一つありました。
当時の私たちは心霊番組や呪いのビデオを見ては「うわー怖いねー!機会があれば行ってみようね(笑)」と、若いカップル特有の好奇心を持ち合わせていたので、その旅行を格好の心霊スポット巡りの機会にもしたかったのです。

しかし、怖いものに興味はあれど、根がビビりだった私たちは、本格的な心霊スポットとなると怖気付いてしまい、せめて観光地で人がたくさんいるようなソフトな心霊スポットをメインに訪ねようと決めました。

とは言いつつも、結局、奈良県や三重県では、トンネル、廃屋、ダムなど、寂しくひっそりと佇む心霊スポットにも立ち寄ったのですが、雰囲気があるだけで特に何も起こることはなく、心霊スポット巡りとしては満足できないまま、ご当地の名物を楽しんだりして観光を満喫していました。

旅も終盤に差し掛かった頃、和歌山県白浜にある有名観光地であり、心霊スポットでもある三段壁に向かいました。

三段壁
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到着したのは夕方の4時を少し過ぎた頃でしたが、平日という事もあってか周囲にはシニアの観光客がチラホラいる程度で人も少なく、私たちはゆっくりと絶景を満喫していました。

その日も適当にラブホテルを探して宿泊する予定だったので、時間には余裕があり、二人でゆっくりと三段壁の長い道を散歩したりして楽しんでいました。

すると、薄暗くなってきたし、そろそろ車に戻ろうかという時でした。
日本酒のカップ酒を持った一人の老人(おじいさん)に急に話し掛けられたんです。

カップ酒を持った老人
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「おねえちゃんら旅行か?」

と聞かれたので、

「そうです。きれいなところですね。」

と、少しだけのつもりで返事をしました。

すると、

「ここはな、知ってるかと思うけど、自殺の名所やねんで。きれいなところやけどな、ぎょうさん死んだはるんや。」

唐突にそんなこと言われ私たちは、

「そうですか…」

と、言葉を濁すしかありませんでした。

すると続けておじいさんは、

「おっちゃんな、ここに死ににきたねん。おっちゃんガンやねん。しんどいねんもう」

ボソボソとそんなことを言い出したんです。

私たちは返答に窮し、

「…おじさんが死んでしまうと悲しむ人がいますよ。死なないでくださいよ」

と、知りもしないおじいさんに対して、綺麗事を言うしかなかったのですが、

「おらんおらん、嘘や、今のは冗談や。忘れて!ほなな!」

と、おじいさんは独りごちたまま、私たちが何か返答する間もなく歩き去って行きました。

「後味悪いな…」

私たちはそう思いながら振り返って歩き去ろうとすると、

「何や、お前ら死なんのかい!背中押したろおもたのに。」

背中押したろ思たのに
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と、背後から聞こえて来たおじいさんの大声が、本当に怖かった旅の思い出です。

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