
体験場所:三重県〇〇線の電車内
私が大学生だった頃の話です。
いつも通り大学の授業を終えて電車で帰宅していました。
その日は花粉症がひどくて、薬も持っていなかったので、一日中くしゃみと鼻水に悩まされ続けて疲れ果てていました。
電車の中でもくしゃみが止まらず、早く最寄り駅に到着してくれることを祈るばかりでした。
すると、電車を乗り換えてようやく最寄り駅まであと一駅という頃でした。
くしゃみで困っている私を見て放っておけなかったのか、一人のおばあさんが近付いてきました。
おばあさんは私の目の前まで来ると「すぐに良くなるよ」と言って、ティッシュを差し出してくれました。
手持ちのティッシュが尽きて困っていた私にとって、その親切は本当にありがたくて、すぐにティッシュを受け取り使わせて頂きました。
私が鼻をかむ間に、おばあさんは私の横に座ったようでした。
お礼より先に思わず鼻をかんでしまったことを申し訳なく思いながら、ズズーっとやってティッシュから鼻を離すと、不思議なことに、今まであんなにひどかったくしゃみがピタリと止まったようでした。
ええ!っと驚くと同時に爽快な鼻通りが嬉しくて、すぐにでもおばあさんに感謝を伝えようと横を向くと、おばあさんがいません。
電車は走行中だったので外に出たわけもないし、鼻をかむ数秒の間に、私の横に座ったおばあさんがもう一度立ち上がって他の車両に移ったとも考えられません。
「もしかして、お化け?」なんて、霊感もないし今までそんな現象に遭ったこともない私が思うわけもありませんが、実際おばあさんがどこに行ってしまったのか、不思議でした。
ただ、その時はくしゃみが止まったことの方が嬉しくて、それ以上おばあさんの行方を追うこともありませんでした。次の最寄り駅に到着して電車を下りる際に、きっとどこかにおばあさんの姿も確認できるだろう。その時に感謝の言葉を伝えればいい。そう考えていました。
でも、最寄り駅に到着した歳に、立ち上がって車内を見回しても、外から窓越しに電車の中を覗いてみても、結局あのおばあさんの姿を見つけることは出来ませんでした。
感謝の気持ちも伝えられずに少しモヤモヤしていた私は、後日、この話を友人にしました。
すると不思議なことに、その友人も同じ電車で知らないおばあさんに助けてもらったことがあると言うのです。
その日、部活帰りに電車に乗っていた友人。部活中に出来た擦り傷を気にてしていると、どこからともなく知らないおばあさんがやって来て、絆創膏を差し出してくれたそうなのです。
その絆創膏を張る数秒の間に、やはりそのおばあさんも姿が見えなくなっていて、不思議に思ったと話してくれました。
私と似た不思議な状況なので、やっぱり同じおばあさんの幽霊なのか?と、そこで初めて少し怖いような気もしました。
ただ、友人もおばあさんに感謝の気持ちを伝え損ねて気になっていたということなので、私たちは二人で同じ電車に乗り込み、おばあさんの捜索を何度か試みましたが、結局会うことは叶わず。
普段から通学で使う電車だったので、その後も乗り続けてはいたのですが、やっぱりあのおばあさんを見かけることはありませんでした。
そんな体験からもう何年も経ち、今では電車を利用する機会も随分と少なくなりました。それでもたまにその電車に乗る機会がある度に、今もあのおばあさんの姿を探しています。
仮にあのおばあさんが幽霊だったとしても、私のイメージする幽霊とはだいぶかけ離れた素敵な人だったので、あのおばあさん霊だったらもう一度会ってみたいなと思っています。
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