【怖い話|実話】短編「タクシー運転手の懺悔」心霊怪談(高知県)

【怖い話|実話】短編「タクシー運転手の懺悔」心霊怪談(高知県)
投稿者:ムラチ さん(30代/女性/事務職)
体験場所:高知県高知市のタクシー

大阪に住む友人と落ち合って、二泊三日の旅行を楽しんだ帰りのことです。

私の住む高知の最寄駅まで到着した後、私はタクシーを使って自宅まで帰ることにしました。

本当は彼氏に車で駅に迎えに来てもらう予定だったのですが、その日はあいにく彼に急用が出来てしまい、予定外の出費は痛かったのですが、荷物も多かったので仕方なくタクシーを呼ぶことにしたのです。

駅前で待っていると、向こうから見覚えのある名前のタクシーがやって来て、私の目の前でスッと止まると、どうぞと言うように後部座席のドアが開きました。

ちょうど目の前でドアが開いたので、私はそのまま乗り込もうとしました。
でも、思わずそれを躊躇してしまったんです。

と言うのも、後部座席には別の若い女の人が乗っていたからです。

【怖い話|実話】短編「タクシー運転手の懺悔」心霊怪談(高知県)-1
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「え!?…誰か、乗ってますけど?」

他のお客さんを乗せたまま、私も一緒に拾おうとしているタクシーの行動に驚いて、私は前に座っている運転手に咄嗟にそう声を掛けました。

50代前後くらいに見える運転手は顔色が悪く、ちょっとビックリするくらい痩せすぎていました。
その運転手が私の言葉を聞いて後ろを確認したのですが、

「・・・?誰も、いませんけど?」

そう言って、不審そうな顔を私に向けるんです。

そんなわけないと、私ももう一度タクシーの中を覗き込んで後部座席を確認すると、さっきまでそこに座っていたはずの女の人がいなくなっていました。

私は屈んでいた態勢を一度伸ばし、車上から駅前の景色を眺めると、もう一度膝を曲げてタクシーの中を覗き込みましたが、やっぱり誰もいませんでした。

困惑しましたが、私も今回の旅行でよっぽど疲れたのだろうと思い、「すみません。勘違いでした。」と運転手に謝罪の言葉を掛け、そのまま後部座席に乗り込みました。

行き先を告げて車が走り出すと、気が抜けたせいなのか、なんだか車の中がとても肌寒いことに気が付き、思わず自分の両肩に手が伸びました。

「あの~、少し寒いようなんですが…?」

暖房は点いているはずなのですが、冷んやりした空気が車内に充満しているように感じて、耐え切れず私は運転手さんにそう言いました。

すると運転手さんはすぐに暖房の温度を上げてくれましたが、それでもなぜか寒さが消えることはなく、仕方なく私はぶるぶる震えながら自宅に到着するのを待ちました。

途中、運転手さんが私の手荷物を見て、「ご旅行ですか?」なんて話し掛けてくれて、そこから旅行の話とか出来て少しの間は気が紛れました。

でも、目指す自宅がすぐそこまで近付いて、見慣れた近所の産婦人科病院が目に入った時でした。
急に運転手さんが声のトーンを少し絞って話し始めたんです。

【怖い話|実話】短編「タクシー運転手の懺悔」心霊怪談(高知県)-2
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それは雨の日に拾ったお客さんの話でした。

その人はお腹が大きく、子供を身ごもっていたそうです。

その妊婦さんをタクシーに乗せると、ちょうど先ほど通り過ぎた病院に向かって運転手さんは車を走らせたそうです。

ただ、女性が少し苦しそうにしているのを見て運転手さんは慌ってしまい、スピードを出しすぎたのが悪かったのでしょう。そのまま事故を起こしてしまったそうなのです。

「その女性は亡くなってしまった…」と運転手さんは言った後、「…おそらくお腹の子供も一緒に」と、顔に似合った痩せた声で言いました。

【怖い話|実話】短編「タクシー運転手の懺悔」心霊怪談(高知県)-3
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正直、私は気が滅入りました。

なぜ突然、無関係な私にそんなヘビーな話を聞かせるのか。
気分が悪くなりました。

自宅に着くとすぐに支払いを済ませ、さっさとそのタクシーを降りたのです。

ただ、荷物を持ち、自宅に向かって数歩だけ歩いたところで、ふと私は思い出しました。

あのタクシーに乗る前に見た幻、後部座席に座っていた女性のことです。

思い出してみると、その女性は細い体型の割りにお腹だけポッコリ出ていたような気がします。

パッと一瞬見ただけの幻覚ですし、確かな記憶ではありません。

でも、何だか気になってしまって、マンションの階段を登る前にふとタクシーを振り返ったんです。
すると、ちょうど私の横を通過するタクシーの運転手さんに会釈されたのですが、私はその会釈を返すことが出来ませんでした。

別にあんな話をされて怒っていたからではありません。

窓越しに会釈する運転手さんのその首を、締め付けるようにか細い手が掛かっていたんです。
手は、後部座席から身を乗り出した女性のものでした。

【怖い話|実話】短編「タクシー運転手の懺悔」心霊怪談(高知県)-4
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運転手さんはまるで女性の気配に気が付いていないようでしたが、私はその女性と目が合ってしまったんです。

すぐに目を逸らした時に見えた女性のお腹は、ぽっこりと膨らんでいました。

ぞっとして、私はその場から動けずに、そのまま走り去るタクシーの後ろを見送りました。

元々タクシーに乗る習慣のない私でしたが、その体験以来、タクシーを利用することは全くなくなりました。

ですが、町中であの時と同じ会社のタクシーを見かけると、思わず運転手さんを確認してしまう癖が出来てしまいました。あいにくあの運転手さん本人を確認できたことはありませんが…

あの日、運転手さんが話した内容は恐らく本当のことなのだろうと思います。

そうじゃないと、私が見た運転手さんの首に手を掛ける妊婦さんの説明が付きません。

自分と、そしてお腹の子の命を奪ったタクシー運転手のことが許せずに、ずーっとああして運転手の首に手を掛け続けているんだと思うのです。

あの運転手が今後無事でいられるのか、私はそれが心配です。

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